この記事をまとめると
■レースにおける「タイヤを温存」という意味は「タイヤの負担を減らす」ことを指す



■タイヤに負荷をかけない走り方は一般車にも必要とされる



■新品のタイヤは慣らし走行をしてその後は急がつく操作は避けることが大切



タイヤを「温存」ってどういうこと?

レースの中継を観ていると、ピットからドライバーに「タイヤを温存して」との指示が飛ぶことが結構ある。



レースにおけるタイヤの使い方は難しく、速く走るためにはタイヤの性能=グリップ力を最大限引き出す必要があるが、タイヤの性能をフルに使うと、タイヤの温度がオーバーヒート気味になり、性能が低下したり、摩耗が進んで性能劣化が出てきたり、トレッドの表面がささくれてきて、いわゆるグレイニングが発生したりする。



これら、走行によるタイヤのパフォーマンス低下のことを、デグラデーションと呼ぶが、人より速いペースで走りながら、なおかつこのデグラデーションが小さいドライバーが理想なドライバーなわけで、チームとしてはゴールまで、あるいは予定周回数より前に、タイヤの著しい性能劣化が起きないよう、ペースとタイヤの損耗具合に目を光らせていて、「このままではタイヤが予定よりもたない」と判断したとき、無線で「タイヤを温存して」とドライバーに伝えている。



レース無線の「タイヤを温存」のテクは市販車でも有効! 応用す...の画像はこちら >>



こうした指示を受けたドライバーは、フロントタイヤの負担が大きければ、ターンインの際のブレーキングとステアリングのオーバーラップを減らしたり、V字に近いラインどりに変えて旋回時間を短くしたり、反対にトラクションが厳しくなってきたら、旋回時間を長めにとるラインで、縦方向のグリップ力より横方向のグリップをより多く使う走り方に変えたり、前後のブレーキバランスを調整したり、デフの利き具合を変更したりして、タイヤへの負担のかかり方を工夫していく。



ほかにも、アクセルの踏み方を丁寧にしたり、ブレーキの踏み方、戻し方を調整するもの大事だし、空力マシンであれば、前車との空間を作って、できるだけクリーンエアのなかを走るようにするのもポイントになるし、ペースを落とすことも含まれる。



レース無線の「タイヤを温存」のテクは市販車でも有効! 応用すればタイヤの寿命が延びる!!
複数台のF1マシンが走行している様子



要は「タイヤを長もちさせなさい」というオーダーなのだが、こうしたレーシングドライバーが行っているタイヤ温存策のなかで、我々が市販車で公道を走るときにも応用できる方法がいくつかある。



”急”のつく操作は禁物

ひとつ目はタイヤの慣らし。レースでもタイヤに厳しいサーキットでは、アウトラップの2~3周は「ジェントルに入れ」と指示される。



レース用タイヤでも、市販車用のタイヤでも、新品のときに急激に大きな負荷をかけて使用すると異常発熱による損傷を起こしたり、偏摩耗が発生しやすくなってしまう。これがタイヤの寿命を大きく左右するので、市販車用の夏タイヤであれば、80km/h以下の速度で最低100km以上の慣らし運転をすることが重要(スタッドレスタイヤなら、60km/h以下の速度で200km以上の走行距離の慣らし運転が理想)。



レース無線の「タイヤを温存」のテクは市販車でも有効! 応用すればタイヤの寿命が延びる!!
タイヤが回転している様子



慣らし運転をすることで、新品タイヤのツルツルの表面が一皮むけるとともに、タイヤがゆるやかに寸度成長し、リムとなじむことで故障耐久性が向上するからだ。



もちろん、この間、急ブレーキ、急加速、スキール音が出るようなコーナリングはNG。また、日頃の運転でも、駐車場からクルマを出して、走りはじめの15分ぐらいまでは急のつく操作は避けること。



レース無線の「タイヤを温存」のテクは市販車でも有効! 応用すればタイヤの寿命が延びる!!
タイヤから白煙が出ている様子



もうひとつ、タイヤをこじるような操作もタイヤを痛める原因になるので、大舵角のときはアクセルをなるべく入れない。ブレーキを踏みながらハンドルを切り込んでいくオーバーラップの時間はなるべく短くする。

そしていわゆる据え切りも封印しておきたいところ。



レース無線の「タイヤを温存」のテクは市販車でも有効! 応用すればタイヤの寿命が延びる!!
据え切りしている様子



さらに、交差点などでよく見かけるのが、ハンドルを切りだすタイミングが遅く、あとから必要以上に大きくハンドルを切ったうえに、そのハンドルの戻し遅れが生じるケースも最悪。



曲がるときは、手前できちんと減速を終えて、早いタイミングからゆっくりとハンドルを切りはじめ、ヨーが出るのをひと息待って、クルマが出口に向かいはじめたら、早めのタイミングでゆっくりハンドルを戻していく。



Rが一定のコーナーなら、ハンドルは「1回切って、1回戻す」。これを基本にしてほしい。



レース無線の「タイヤを温存」のテクは市販車でも有効! 応用すればタイヤの寿命が延びる!!
右折しようとしてハンドルを操作している様子



最後は空気圧の管理。つねに適正な空気圧を保つのは、タイヤマネージメントの基本中の基本。月に一度、いまの時期のように基本の変化が激しい時期なら、2週間に1度はタイヤの空気圧を点検・調整し、ベストな空気圧をキープすることが肝要だ。

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