この記事をまとめると
■欧州車のホイールが黒く汚れる主な要因はブレーキダスト



■欧州車がやわらかめのブレーキディスクやパッドを採用しているのが原因



■最近のクルマはESCの介入でリヤホイールを汚しているケースが目立つ



欧州車のブレーキダストはどうして出やすい?

伝統的に、輸入車のホイール汚い問題は深刻だ。「洗っても洗っても全然綺麗にならんぞ!」と、 もはや諦めモードに入って洗ってない人すらいるらしい。



とくにドイツ車やフランス車など、欧州系モデルで目立つホイールの黒っぽい汚れの原因は、ご存じのように「ブレーキダスト」だ。

ブレーキのダスト(ごみ)という名前がついているが、ブレーキが摩擦材を消耗品として利用している限り、必然的に発生してしまうものであり、その発生は避けられない。



ボディは汚れてないのにホイールだけ真っ黒になるのはなぜ? ク...の画像はこちら >>



構造的にブレーキシステムが開放しているディスクタイプでは、ブレーキダストが発生したらそのままホイールに付着してしまう。つまり、ホイールが黒く汚れてしまうのはブレーキがしっかり働いている証拠ともいえる。ちなみに、ドラムブレーキでは内部にダストが溜まっていくので定期的な分解清掃が必要だったりする。



しかしながら、ディスクブレーキを採用しているメーカーや車種は特別なわけではない。欧州車でなくとも国産車であっても、少なくとも乗用車についてはディスクブレーキを採用していることはスタンダードといえる。では、なぜ輸入車(欧州車)のホイールはブレーキダストで汚れていると強くイメージされているのだろうか。



ボディは汚れてないのにホイールだけ真っ黒になるのはなぜ? クルマ好きを悩ませる「ブレーキダスト」の正体とは
ディスクブレーキ



ただし、筆者は輸入車のホイールが国産車に比べてどのくらい汚れやすいのかを定量化したような統計は見たことがない。なのでここでは、あくまで市場イメージとして輸入車(欧州車)のブレーキダストが多いであろうと想定して話を進めてみたい。



基本的にブレーキダストは、ブレーキディスクとブレーキパッドの削りカスからなっている。ブレーキダストが多いというのであれば、ディスクとパッドが削れやすい材質で出来ていることが想定できる。そして、鉛筆の減りやすさで想像すればわかりやすいが、やわらかい材質ほど削れやすい傾向にあるといえる。



これまた仮説の範囲ではあるが、欧州車のブレーキダストが多いのであれば、削れやすい、やわらかめのブレーキディスクやパッドを使っていると想定できる。



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新品のブレーキローターとパッド



巷間では、「やわらかいブレーキディスクやパッド≒利きがいいブレーキ」と認識されている面もあるが、それは必ずしも正しいとはいえない面もある。



ブレーキダストの多い欧州車オーナーのなかには、アフターパーツとして販売されている低ダストタイプのブレーキパッドに変えて対策することもある。そして、低ダストのブレーキパッドだから利きが悪いわけではない。車種によっては純正のブレーキパッドよりダストが少なくなり、なおかつ利きがよくなるケースもある。



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ブレーキパッドを交換している様子



つまり、ブレーキとしての絶対性能に優れているからダストが多いのも仕方がない……といい切れないということだ。利きがよくてダストの少ないブレーキパッドを開発するという企業努力が足りないという見方もできるだろう。



もっとも、ブレーキディスクやパッドをやわらかめにすることでブレーキフィールがよくなる面もある。具体的には、踏み込んだときに「奥でのコントロール性」が向上する。その意味では、フィーリング重視でダストの多さは甘んじて受け入れているというのが欧州車の自動車作りにおけるアプローチといえるのかもしれない。



リヤブレーキのダストは横滑り防止装置のせい?

ところで、ブレーキダストを減らすためにドライバーができることは、「不要なブレーキを踏まないこと」といえる。こう書くと「ブレーキを使わないと危ないだろう」、と誤解されるかもしれないが、そういう話ではない。

無駄に加減速をせず、先読みした速度コントロールをすることでブレーキを使って減速するシチュエーションを減らすことは、ドライバーの腕で可能だ。そうして無駄なブレーキを踏まないようにすれば、ブレーキダストの発生を抑えることができるだろう。



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ブレーキペダルを踏んでいる様子



ただし、最近のクルマにはブレーキを使って車両の姿勢を制御するESC(横滑り防止装置)の装備が義務化されている。ESCの姿勢コントロールでは、ドライバーがブレーキを使っていなくともブレーキを作動させている。結果として、意図しないブレーキダストが発生しているのだ。



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横滑り防止装置のオフボタン



ESCのヨーコントロールではリヤブレーキを使うことが多い。ドライバーが、アクセルオフで速度を合わせてコーナリングしているつもりでも、車両側のリヤブレーキが作動して、消耗(ダストを発生)していることは珍しくない。



そういう前提で最近のクルマを見るようにすると、FF車でリヤ荷重が少ないクルマであっても、リヤホイールがブレーキダストで汚れているケースがあることに気付くだろう。



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ルノー・メガーヌR.S. ウルティムの走行写真



そうしたダストのすべてがESC由来であるとはいわないが、ESCが普及して以降はリヤブレーキの負担が大きいというのはメーカーのエンジニアも認めている事実だったりする。ブレーキダストを減らす運転の要件として「ESCを作動させないこと」も含まれるかもしれない。

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