この記事をまとめると
■フェラーリのスペチアーレに最新作「F80」が登場した■F80はフェラーリ80周年の年である2027年までに799台を限定生産する
■価格はイタリア本国で360万ユーロ(約5億7000万円)以上
フェラーリ史上最強のスペチアーレが誕生
フェラーリのロードカーにおける頂点を極め、限定生産を前提として、フェラーリ自身が選択するといわれる特別なカスタマーのみに販売されるスペチアーレ。その始まりである1984年デビューのGTO(288GTO)や、第二次スーパーカーブームの主役となった、1987年に誕生したF40は結局、最初に想定していたよりもはるかに多くの台数が生産されたが、その後のモデルは、かつてエンツォ・フェラーリが強く指示していたとおり、市場で望まれるよりも1台少ない数を限定生産するという策を、かたくなに守り続けることになった。
ちなみにF40は、その名前からも想像できるようにフェラーリの創業40周年を記念して開発された、フェラーリの原点、すなわちコンペティツィオーネ(レースカー)とストラダーレ(ロードカー)の両方の性格を兼ね備えるモデルであり、エンツォ・フェラーリとチーフエンジニアであったニコラ・マテラッツィの間では、400台程度(先に紹介した策から考えるのならば399台と考えるべきか)の限定生産車となる計画だった。
だが、生産半ばでエンツォ・フェラーリは死去。エンツォが直接開発を指示したモデルということで人気はさらに急上昇し、最終的には諸説あるものの、1311台ほどに至るまでその生産は継続された。

F40以降のスペチアーレは、希望される台数マイナス1という限定生産数の法則を守っている。1997年のフェラーリ50周年の年に最後の一台をラインオフする計画で1995年から生産が始まったF50は349台。2002年発表のエンツォ・フェラーリは399台。2013年にデビューしたラ フェラーリは499台という数字だったが、実際にはプラス1どころか、その2倍以上の購入希望者が存在したとも噂されている。なぜならそれらは、紛れもなくフェラーリの最新技術が搭載された、究極のスーパースポーツにほかならないのだから。
そして先日、新たなスペチアーレとして、フェラーリは創業80周年を記念するF80を発表した。F50と同様に、これから約3年間の時間を投じて、80周年の年である2027年までに799台を限定生産するというF80。

すでにそのすべてにオーナーが決まっているのも、これまでのスペチアーレと変わらない事情である。
3リッターV6ハイブリッドの最高出力は1200馬力
F80のエクステリアデザインは、完全に機能、すなわちエアロダイナミクスを優先したものだ。もちろんそのディテールには過去のフェラーリの作からモチーフを得たパートを見つけることも可能だが、機能を追求するとどうしてもエレガントな印象というものからは遠ざかってしまう。

全長×全幅×全高で4840×2060×1138mmというボディに包み隠される基本構造体は、もちろん新設計のカーボンモノコックのセンターセクションとアルミニウム製のサブフレームからなるベアシャシーだ。
サブフレーム上に搭載されるパワーユニットは、新開発の3リッター120度V型6気筒ツインターボ。さらにリヤに搭載されるモーターによるハイブリッド化、そして電動ターボ機構を採用することで、低速域でのターボラグを完全に解消している。

さらにフロントアクスルには2個のモーターが搭載され、システム全体の最高出力は1200馬力という驚異的な数字を得ることに成功している。ちなみにこのF80の車重は1525kgであるから、パワーウエイトレシオは1.27kg/馬力となる。
F80に搭載されたモーターは、いずれもフェラーリの社内で開発、そして製作されたものだ。そのコンパクトで軽量な設計は、さすがにフェラーリの作と感じさせてくれるもの。異なる機能を1個のコンポーネントに統合し、新たなメカニカルレイアウトを採用したことで、重量は従来のものからさらに14kgも軽量化されたという。
アクティブサスペンションシステムも、F80のメカニズムを紹介するには欠かせないパートだ。デザインとしてはダブルウイッシュボーンとなるF80のサスペンションは、もちろん完全な独立式で、4個の48バルブモーターで作動。インボード式のアクティブダンパーが備えられる。

0-100km/h加速を2.15秒でこなし、最高速はリミッター作動で350km/hとされるF80。フェラーリの歴史は、このF80によって、またひとつ大きな転機を迎えたような印象が強い。価格はイタリア本国で360万ユーロ(約5億7000万円)以上。それに相応する価値をもつ新たなドリームカーの誕生だ。