この記事をまとめると
■2027年からはWRCでは新規定「WRC27」が採用されパワートレインが自由化される■WRC27では車体としてセダンやクーペなども採用できる方向に調整予定
■ボディサイズを含めて自由度の高いレギュレーションになることを期待したい
ハイブリッドシステムが廃止となる2025年のWRC
2025年のWRCは既報のとおり、ハイブリッドシステムを廃したラリー1を主力モデルとして採用。これにあわせて、トヨタGAZOOレーシングWRTは「GRヤリス・ラリー1」、ヒュンデ・シェル・モビスWRTは「i20ラリー1」、Mスポーツ・フォードWRTは「プーマ・ラリー1」と新規定にあわせた最新スペックを投入する。
この車両規定は2026年まで継続される予定となっていることから、WRCの最高峰クラスでは、ハイブリッドなしのラリー1によるバトルがしばらく続くことになるだろう。
2027年にはテクニカルレギュレーションが一新される予定で、その新規定「WRC27」の特徴となるのが、パワートレインの自由化である。サスティナブル燃料を使用する内燃エンジン、ハイブリッド、フル電動のいずれかを選択可能。イコールコンディション化が図られる見込みで、パワートレインに合わせて性能調整が行われることになるだろう。
気になる車体は現行のスペースフレームシャシーが引き続き採用される見込みで、量産車のボディワークをセーフティセルに取り付けることによって、現在の主流となっているハッチバックのほか、セダンやクーペなどもWRC27として採用できる方向に調整していくようだが、果たして、その規定変更でハッチバック以外のマシンを投入するメーカーがあるだろうか?
プロトタイプ化かつスケーリングを認めたラリー1規定の採用により、Mスポーツ・フォードWRTは小型SUVのプーマをベースにラリー1を開発したが、いまだ最高峰クラスではセダンやクーペのラリー1が登場していない。
その理由としては、車両規定の全長および室内寸法(ルーフラインの形状)が影響しているようで、トヨタGAZOOレーシングWRTのエンジニアは、「サイズ的にBセグメントのハッチバックのほうが開発しやすい」と語る。それはラリー1だけでなくラリー2でも同様になっているようで、そのために現在、WRCで活躍するマシンは、Bセグメントのハッチバック車両が主流になっているのである。
さまざまなボディスタイルで争われるWRCをまた見たい
思い返せば、1987年よりWRCの主役となったグループA規定では、ランチア・デルタを筆頭とするハッチバックに加えて、スバル・インプレッサ、三菱ランサーなどのセダン、トヨタ・セリカなどのクーペが最前線で活躍していた。
1997年に幕を開けたWRカー規定でも、トヨタ・カローラ、フォード・フォーカスなどのハッチバックに加えて、スバル・インプレッサや三菱ランサーといったセダン、さらにプジョー307などのクーペカブリオレが参戦するなど、じつに車種バリエーションが多彩だった。

当時、一般的には前後のオーバーハングとホイールベースの短いハッチバックは「振りまわせてコントロール性が高い」といわれており、逆にセダンは「空力性能が高く、高速コースで強い」といわれるなど、ラリー車両のスタイリングによって個性があり、コースサイドで見ていても楽しいものだった。
しかし、近年のWRCはBセグメントのハッチバックばかり。ラリー1だけでなく、ラリー2で争われるWRC2を含めて、車種ラインアップという面ではかなり寂しい状況といえるだろう。
逆に下位クラスやナショナルシリーズへ目を向けていくと、2024年のラリー・ジャパンでも注目を集めていたが、アルピーヌA110R-GTなどのスポーツカーの走りは魅力的で、全日本ラリー選手権に新井敏弘選手が投入するスバルWRX S4といったセダンも迫力満点である。

「メーカーとして売りたい新型モデルと、そのタイミングでレギュレーションが合致するのなら、世界選手権に参戦することは不可能ではないと思う」。
そう語るのは某国産の自動車メーカーの関係者だが、おそらく国内外を問わず、多くの自動車メーカーがそう思っているに違いない。
そういった意味でも、2027年に導入されるといわれる「WRC27」も、セダンやクーペ、スポーツカーが参戦できるように、ボディサイズを含めて自由度の高いレギュレーションになることを期待したい。