この記事をまとめると
■カーシェアサービスがいま大人気だ



■1999年あたりがカーシェア元年とも呼ばれている



■新車販売の現場でも「新車を買うきっかけ」になると注目されている



カーシェアが空前の大人気コンテンツに

2024年は「日本版ライドシェア」というものが注目を浴びた1年ともいえよう。諸外国ではプラットフォーマーと呼ばれる、インターネット上で大規模なサービスを提供する企業が、自家用車を使い第三者を目的地まで運びたいという人と、そのような車両で移動したいという人をマッチングさせるサービスといえる。



一方で、わざわざ「日本型」としている日本型ライドシェアは、そのサービス提供主体が既存のタクシー事業者となることで大きな違いを見せる。

実際、タクシーの繁忙時間帯に限ってライドシェアサービスを実施するなど、タクシーの補完的な位置づけにしているところが特徴だ。



これにより、タクシー事業者がドライバーや車両を管理することで安心・安全な旅客輸送を担保しているのだが、「タクシーの2軍」的な存在にも見えてしまう。また、サービスを請け負うタクシー事業者としては、ライドシェアドライバーのなかで、「この人だ!」という逸材がいたら、正規タクシー運転士としてスカウトすることなども想定しているのではないかという側面も見え隠れしている。



いまや会員数500万人超え! 「カーシェア」の普及が「新車購...の画像はこちら >>



クルマが関係するシェアリングとしては「先輩」といえるのが「カーシェアリングサービス」といえるだろう。街なかのコインパーキングの一画にカーシェアリング車両が置いてある光景はすっかり「街の風景」として溶け込んで久しい。



そもそもカーシェアリングサービスは1940年代のスイスが発祥といわれる。同一地域内の知人同士でクルマを購入して共同所有を始めたのがカーシェアリングサービスのはじまりとされている。



日本では1999年あたりが「カーシェアリング元年」。日本でもスイス同様に隣近所でクルマを共有し、共同使用したいとの流れが、カーシェアの発端とも聞いている。しかし日本では、それまでなかったサービスなどを新たに展開するときに、既存のサービスで限りなく近いものへあてはめるパターンが多く、それがクルマが介在するもの以外でも多く存在する。



実際カーシェアリングでも、運行管理や車両管理という面を考えて、「新しいレンタカーサービス」と位置づけ、つけられるナンバープレートを「わナンバー(一般的なレンタカーのナンバープレート)」としてレンタカー事業者(または同条件を有する業者)が中心となってサービスが展開されていくようになり、現在に至っている。



いまや会員数500万人超え! 「カーシェア」の普及が「新車購入」の動機になる意外な理由
カーシェアのイメージ



公益財団法人・交通エコロジー・モビリティ財団の調べによると、2015年3月の貸渡車両数(カーシェアリング車両数)は1万6418台で、会員数は68万1147人であった。

これが2024年3月になると、6万7199台で、会員数は469万5761人にまで増えている。



カーシェアが新車を買うきっかけになる可能性

街なかのカーシェアリングステーションを見てもらえばわかるとおり、カーシェアリングで使用される車両はコンパクトハッチバックがメインとなるが、クロスオーバーSUVやミニバンなどその車種は多彩となり、しかも頻繁に入れ替えが行われ現行型(新車として販売されている車種)がメインのように筆者の目には映る。



いまや会員数500万人超え! 「カーシェア」の普及が「新車購入」の動機になる意外な理由
カーシェアのイメージ



新型コロナウイルスの感染拡大が起こるまで世間では、「シェアリング」というものがクルマ以外でも注目されていた。カーシェアリングもそのなか、「自分でクルマをもつほど利用はしない」といった人が注目した。駅前などのレンタカーの営業所に行くよりは、近所のコインパーキングへ行けば利用できるといった手軽さも好評として会員が増えていった。



このようななかで、「新車を買わないでクルマをシェアリングするサービスの普及は、新車販売に悪影響を与える」といった話もよく聞いた。



しかし、筆者が聞いた限りでは、「新たな新車の販売促進方法」として、メーカーや新車販売ディーラーが見ている側面があるようだ。最初は「それほどクルマの使用頻度が多いわけではない」としてカーシェアリングの会員となりサービス利用をはじめたとしても、若いカップルで結婚後子どもができたりするとクルマの利用頻度が増していくし、チャイルドシートなど常備する用品も多くなる。また、あくまでシェアリングするので、必ずしも利用した時間にクルマが空いているとも限らないという心配も残る(サービス車両の台数などでもちろん事業者も調整している)。



いまや会員数500万人超え! 「カーシェア」の普及が「新車購入」の動機になる意外な理由
カーシェアのイメージ



つまり、もともとクルマを所有するつもりがなかった人がカーシェアリングを利用することになり、さらに利用頻度が増えて「クルマを買うか」という購買行動が期待できるのである。また、現行型車が多いと前述したが新車購入を前提として乗り比べたりする人もいるなど、そのサービス利用も会員数の増加とともに多岐に渡ってきているものと考えている。



少子高齢化だけではなく、若年層では運転免許をもっていても(そもそももっていない人も多いようだが)、とくに都市部では「コスパ」のよくないクルマの所有を積極的に考える人は少ない。

そのなか、昭和臭さも強いいまの新車ディーラーは、とくに若い世代にとってはいろいろな意味で敷居が高い存在でもある。なので、新たな販売促進のチャンネルとしてカーシェアリングを捉えているのである。



いまや会員数500万人超え! 「カーシェア」の普及が「新車購入」の動機になる意外な理由
カーシェアのイメージ



自動車大国のアメリカでは、とにかく運転免許をもちマイカーをもたないと、日常生活での移動制限がかなり大きくなる(路線バスはあったとしても時刻表もないのでいつくるかわからないし車内は危険)。しかし、そんなアメリカでもとくにクルマ社会といわれる南カリフォルニアでも、カーシェアリングサービスが登場しクルマをもたないという人も出てきた。



そしてその後、ライドシェアサービスの登場でマイカーがなくとも移動に不自由することが減り、若い世代では運転免許すらもたない世代が出てきている。日本でもクルマが日常生活で欠かせない移動手段となっている地方部でも、すでに若い世代で運転免許をもっていないという人も目立ちはじめている。運転免許をもちクルマをもっている友人や知人を、表現はあまりよくないが、ライドシェアのようにうまく使っているようなのである。



いまや会員数500万人超え! 「カーシェア」の普及が「新車購入」の動機になる意外な理由
ライドシェアのイメージ



かつてのように「18歳になるのを待って運転免許を取り、社会人になったら自分のクルマを買うのが当たり前」という時代ではなくなっている。運転免許取得率が若い世代ほど落ち込んでいる現状だが、運転免許を取得したとしても、保険や税金、さらにはガソリン代や月極駐車場代などクルマの維持管理コストはかなり高い。



「まずはクルマを日々の生活で利用してもらう」ことからはじめ、「コストはかかるけどあったほうがいいな」と思わせる、そんな販売促進ツールとしてカーシェアリングサービスを考えれば、使われる車両も積極的に新車(しかもメーカーも多種多彩なことが多い)が使われているのも納得してしまう。

編集部おすすめ