この記事をまとめると
■「デリーオートエキスポ2025」ではMGブランドブースで中国車が展示されていた■インドではMG車を多く見ることができる
■中国車のなかでMGは先兵的な存在として海外市場に展開されていた
中国資本になったMGのいま
「第2回バーラト(ヒンディー語でインドの意味)・モビリティ・グローバル・エキスポ2025」の関連イベントのひとつである、「オートエキスポ2025(通称:デリーオートエキスポ2025)」が1月17日から22日の会期で開催された。
その会場内の中庭を歩いていると、遠目に試乗コーナーのようなものが確認でき、そこにタイやインドネシアでは中国ウーリン(上海通用五菱汽車)ブランドとしてラインアップされている、マイクロBEV(バッテリー電気自動車)「エアEV」が置いてあるように見えた。
しかし、会場内にあるMG(上海汽車系ブランド)ブースへ行くと、同車が「MGコメットEV」として展示されていた。
上海汽車は、本国となる中国でさまざまなブランドを有しており、タイでもその多くをMGブランド車として取り扱っているのだが、ウーリンブランドまでMG扱いとなっているのは珍しく感じた。
MGとは、いわずと知れた英国の名門「モーリス・ガレージ」のこと。英国の名門ブランドであるMGだが、2005年に当時ブランドを有していたローバーが破綻し、中国南京汽車に買収され、その南京汽車も2007年に上海汽車に買収され、いまは上海汽車系ブランドとなっている。
中国国内だけではなく海外ショーでも、MGブースには「SINCE 1924(商標が広告に記載された年らしい)」と掲げられているが、「中国系となったのは2005年だから違うだろ……」と憤る自動車ファンも少なくない様子。

インドではMGが大人気!
インドはいまでこそ超大国であるが、長きにわたりイギリス統治下だった時代がある。そのためか、チャイ(ミルクティー)や、お酒ではウイスキーを嗜好するなど、英国統治下の面影をいまだに感じることができる。
そのせいもあるのか、諸外国で中国車といえばBYDオート(比亜迪汽車)の存在が際立って目立つのだが、インドではBYDがBEV(バッテリー電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)のみをラインアップするのに対し、他社ではICE(内燃機関)車のラインアップが充実している。そんななかでも圧倒的にMG車が多いのだ。
コンパクトクロスオーバーSUVタイプの「ヘクター」や、大型クロスオーバーSUVとなる「グロスター」などは、インドの首都デリー市内でもよく見かけることができる。この様子を見て筆者は、「イギリスに対して潜在的なシンパシーを感じているのかなあ……?」などとも感じてしまう。

筆者は、中国車のなかでMGは先兵的な存在として海外市場に打って出ているように感じている。
インドにおけるMGブランド車の販売状況が好調なのは、いち早く市場参入したことは否定できない事実と考えている(ICE車もラインアップしていたことも大きい)。
日本市場は、BYDオートが中国系ブランドとして先行して市場参入しているので、その点が諸外国とは大きく異なっている。高効率で低燃費なエンジン搭載車や、優秀なHEV(ハイブリッド車)をラインアップし、軽自動車という存在もあることで、日本では日本車の販売シェアが圧倒的に多い。「ICE車も投入してラインアップを拡充」という参入パターンが通用しないことが、BYDが電気自動車のみで参入した背景のように見える。

「BEV=中国車」というイメージが強いが、世界的にBEVの普及スピードにブレーキがかかってきている。そのなかで中国系は、PHEVやHEVで活路を見出そうとしているが(純粋なICE車も意外なほど中国以外の市場でもラインアップしている)、HEVでは日本車が日本市場以外でも大きく立ち塞がっている。
そのなかでもインドを見る限り、かつての英国の名門であったMG車が中国系ブランドとなっても、インドの人たちには「特別な存在」となっているのかもしれない。