2015年のディーゼル不正がきっかけ
ズバリ、黒幕は独フォルクスワーゲングループ(VW)だ。もうすっかり忘れてしまった方も多いと思うが、今から4年前の2015年、VWはディーゼル車の排気ガスを抑制するソフトウエアに不正が見つかり、アメリカや欧州の当局による本格的な捜査が進んだ。
その影響でVWブランドは致命的な打撃を受け、世界市場で販売数が急減した。
中期経営計画テュギャザーで、VWグループ全体として一気にEV化を進めることを公言したのだ。しかも、数兆円規模でモーター、リチウムイオン二次電池、インバーターなどの制御装置の購買をかけ、VWグループ自らがEV市場を切り開く姿勢を世界に示した。
こうした電動部品の大量発注によって、ダイムラーとBMWもEVシフトの速度が少し速まったといえる。そこに、世界の自動車部品市場をリードするボッシュとコンチネンタルが連携し、結果的にジャーマン勢によるEV主導という図式となった。
逆に言えば昨今のEVブームは、電池技術などで革新的なブレイクスルーがあったから起こったワケではない。そのため、欧州の電池業界関係者らは「あくまでもVWグループのマーケティング戦略であり、彼らが描いている絵はあまりにも大きく、それが実現しないリスクも十分に考えるべきだ」と語る。
中国とVWグループの密接な関係も大きい
別の視点で見ると、世界で電動化を推し進めている黒幕は中国政府だといえる。中国が2019年から施行している、NEV(新エネルギー車)に対する販売台数規制だ。これは、CAFE(カフェ:企業別平均燃費)とセットでの規制であり、通称ダブルクレジットと呼ばれる。
自動車メーカーにとって電動化を進める大きな要因は、国や地域によるさまざまな規制をクリアすることにある。
このほか、英国やフランスなどで電動化に関する目標を立てている国はあるが、中国のNEVのように足もとで実施される全国規模の法律はない。日本でも今のところ、「2050年までに新車全車を電動化」という目標は立てているものの、法的な拘束力はない。そのため、トヨタが公開している電動化のロードマップでもEVの伸びはかなり緩い。ホンダ幹部も「日本では当面、EVの販売台数が一気に伸びることはない」と言い切る。
2018年、世界で販売されたEV台数は121万台。そのうちの約6割が中国なのだ。その中国は、VWグループにとって最重要な国。他メーカーが中国の政治的なカントリーリスクを怖がって進出しなかった80年代から、VWグループは中国での現地生産を積極的に進めてきた。当然、NEVについてもVWグループと中国政府とのつながりは強い。
だが、昨今は米中の貿易摩擦の影響などから、中国市場がマイナス成長に入った。なかでもVWブランドのマイナス成長の度合いが大きい。VWグループと中国が実質的な黒幕である、昨今の電動化の流れ。はたして今後、どのように動くのか?

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