改造車ではおなじみだがじつは純正でもハの字になっている!
シャコタン+ハの字といえば、ドレスアップの定番のひとつ。ハの字というのは、クルマを正面から見たときに、タイヤが地面に対して内側に傾いている状態。この地面に対するタイヤの角度をキャンバーといい、上端が閉じて、ハの字に見える状態をネガティブキャンバー、略してネガキャンという。
カスタムカーや、ハコ車のレーシングカーではおなじみの、このネガキャン。じつは新車の市販車でも微妙についている場合が多い。世の中の地面が真っ平らで、クルマも直進しかしないのなら、キャンバーは垂直=ゼロが一番いいのかもしれないが、一般道でも高速道路でも、路面には多少の凸凹はあるし、曲がっている道もたくさんある。
そうしたさまざまな環境のなかで、タイヤを上手に接地させ、操縦安定性をよくするために、キャンバーを含めアライメントを最適化する必要があり、その結果、ノーマル状態で少しだけネガキャンにしているクルマが多いというのが実情だ。では、そのメリットとは何なのか。
タイヤの接地性向上やレスポンスをよくする効果がある
ネガキャンというのは、バイクでいえば車体を倒してコーナリングしているのと同じ状態。つまり右のタイヤが内側に傾いているとは、車体を左に曲げようとする力が生じ、左のタイヤが内側に傾いていると、車体を右に曲げようとする力が働く。その力がちょうど中心でぶつかり、打ち消し合うことによって、まっすぐ進もうとする力=直進性を高くする。この直進性がネガキャンのメリットの1つ目だ。

2つ目は、ネガキャンがつくことで、左右のタイヤがそれぞれ曲がろうとしていて、直進時でもスリップアングルがついているので、ハンドルを切ったときにコーナリングフォースの立ち上がりが早くなる(キャンバースラスト)。つまりハンドル操作に対する反応がよくなるということ。

3つ目はコーナリングがはじまって、車体がロールしたときに、荷重のかかる外側のタイヤが沈み、さらにタイヤ自体が変形して、タイヤのトレッド面の外側だけが接地することになり、タイヤの接地面が減ってしまう。

パラリンピックの車いすマラソンや車いすバスケットなどの車いすは、どれもレーシングカー顔負けのかなり角度のついたネガキャンになっているが、あれも直進性と旋回性、そして転倒しにくくなるという安定性と、漕ぎ手が人やモノに接触しづらくなるという安全性のために、あえてネガキャンになるよう設計されている。もちろんネガキャンにはデメリットもあってやり過ぎは厳禁。
具体的にはタイヤの偏摩耗や、回転する抵抗が増えてハンドルも重くなる。さらに直進時の接地面は狭くなるので、トラクションやブレーキ性能が落ちる。また車体から大きくタイヤがはみ出せば、保安基準違反にもなる。

いずれにせよ、ホイールアライメントはクルマの走行性能にダイレクトに影響するので、メーカーもかなりシビアに考えて設計しているため、その適正値に収めていくことが重要だ。