使用する燃料の種類別で試算してみると……

マツダ3に搭載された世界初のガソリンエンジンによる圧縮着火エンジン、SKYACTIV-Xの性能や運転感覚については、すでに情報がある。では、消費者にとってどのような損得となるのか。

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単純に、燃費性能と燃料代をカタログ値から試算してみると、プレミアムガソリンを使うSKYACTIV-Xは、1km走行するのに8.83円の燃料代が掛かる。

これに対し、SKYACTIV-Gの2リッターガソリンエンジン車はレギュラーガソリンを使えるが、燃費性能の差で1km走行するのに9.03円掛かる。ガソリン価格については、12月半ばの全国平均値である、レギュラー141円/L、プレミアム152円/Lを参考とした。プレミアムガソリンを使っても、SKYACTIV-Xは、マツダの主張どおり燃料代においては同等以下であることがわかる。



だがマツダ3の試乗では、1.5リッターガソリンエンジン車の性能も侮りがたく、山間の屈曲路を走っても不満は少なかった。その燃料代はというと、レギュラーガソリンで8.49円/kmとなる。また、マツダは2012年の新世代商品群として第1弾のCX-5発売以来、ディーゼルターボエンジンの性能と環境性能、そして燃料代の安さを謳っている。マツダ3でもSKYACTIV-Dの1.8リッターエンジン搭載車があり、その燃料代は6.11円/kmとなる。これは、全国平均の軽油価格である121円/Lを参考とした。

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同じ排気量の2リッターガソリンエンジン同士での燃料代は、1km走行するのに20銭安い勘定だが、1.5リッターガソリンエンジンとでは34銭高く、1.8リッターディーゼルターボエンジンより2.72円高くつくことになる。



現時点では価格差などを回収するのはほとんど不可能

そのうえで、車両価格を同じPROACTIVEグレードのハッチバック車(2WD)で比較すると、SKYACTIV-Xが314万円、G(ガソリン)の2リッターが247万円、D(ディーゼル)の1.8リッターターボが274万円である。差額は、それぞれ67万円(G)、40万円(D)である。



年間に1万km走行するとして、ガソリン車との燃料代差額2100円を埋め合わせるのに319年、ディーゼル車との差額の埋め合わせは、車両価格と燃料代ともにディーゼル車のほうが安いので、埋め合わせられないことになる。

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環境性能の比較では、同じガソリンエンジン同士で、二酸化炭素(CO2)排出量はSKYACTIV-Xでは減っており、ディーゼルターボに近い。だが、汚染物質の非メタン炭化水素(NMHC)と窒素酸化物(NOx)の排出量は、ガソリンエンジン車より増えている。もちろん排ガス規制は達成しているものの、SKYACTIV-XはCO2でディーゼル並みでも、大気汚染物質は通常のガソリンエンジンより増加するのである。



ちなみに、電気自動車(EV)の例として日産リーフは、1km走るのに掛かる電気代が、東京電力の従量電灯Bと呼ばれる一般家庭の標準的な契約、かつもっとも電気を使った際の電気料金で試算すると、4.73(標準車)~4.92(e+)円だ。SKYACTIV-Xと比べて、半分近い53~55%の燃料代で済む。なおかつ、CO2も有害ガスの発生もゼロだ。もっとも安いグレードであれば324.3万円ほどで購入できる。

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マツダは、ウェール・トゥ・ホイールで燃料製造から使用までのCO2排出量を比較すると、最高の効率を実現したエンジンは、EVとCO2排出量が変わらないと主張する。しかし、SKYACTIV-Xはその最高効率に達しているのか。また、10年後の電力事情が、今のまま火力発電依存が続くと考えるのか。COP(国連気候変動枠組み条約締約国会議)25での論議はあいまいに終わったが、スウェーデンのグレタ女史が指摘するように、気候変動を実感する今日、火力依存の電力が永続する可能性は低く、なおかつEVであれば大気汚染物質は出さないのである。



経済性という直接的な価値とともに、大気汚染防止と将来へ向けた気候変動抑制に、SKYACTIV-Xがどれほど役に立つのか明確には見えてこない。

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