数は少なくても顧客の要望がある以上販売現場は売りたい
トヨタのカムリ、ホンダのアコード。両車はアメリカで年販30万台レベルのロングセラーとして、アメリカ人の生活に馴染んできた。この分野が、Dセグメントセダンだ。
日本の自動車メーカーにとって、このC/Dセグメントが世界標準車であり、日本でも当然販売されてきた。だが、日本は世界市場のなかでもっとも早く『セダン離れ』が進み、Cセグメントではシビックセダンが消え、またカローラは日本の道路環境に合わせて北米市場と比べて大幅な変更が施された。
一方のDセグメントでは、カムリとアコードは導入されてはいるが『セダン=おやじクルマ』といった風潮をメディアが煽ることもあり、販売数は限定的だ。日産では、中国市場を最重要視したDセグメントのティアナも、あえなく姿を消している。
そもそも、自動車メーカー側としては、こうした事態に陥ることを十分に承知している。だが、全国各地のディーラーからは、既存のDセグメント顧客を維持するために、日本でのモデル継続は必要との声がメーカー本社に数多く届く。メーカーとしては、ブランド全体の販売数維持のため、ある程度はディーラーの要望を受け入れざるを得ない。
その結果、日本では(それほど多くの数が)売れないことはわかっているのに……、海外市場メインのクルマを日本でも販売することになる。
近い将来「売れなくても並べる」は通用しなくなる
高級車市場でも、日本では売れないことは分かっているのに……、というクルマは多い。ホンダのレジェントや、日産のスカイラインである。
アキュラもインフィニティも、アメリカ生まれの日系ブランドであり、日本でのブランド展開についてホンダと日産それぞれの社内でこれまで何度も協議されたが、日本市場の特性を考慮して実現していない。この2モデルについても、ディーラーから既存ユーザーの乗り換え需要として継続の要望が強く、北米向けに開発されたにも関わらず、日本市場での販売となっている。
こうしたディーラー要望重視の販売計画だが、近いうちに大きく変わる可能性がある。トヨタが2020年5月に実施する全店舗全車種併売をきっかけとするディーラー再編。その影響は他メーカーにも及ぶことが確実。そうなると、日本では売れないことはわかっているのに……、という文脈は通用しなくなる可能性がある。

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