全国各地で統括的な交通規制が実施される
東京オリンピック・パラリンピック協議会(東京2020大会)の開催まで、本稿執筆時点(2020年1月)からあと半年に迫った。東京2020大会には、東京オリンピックで、大会関係者7万人、大会スタッフ17万人、観客780万人、また東京パラリンピックではそれぞれ、2万人、10万人、230万人という大勢の人々が短い開催期間中に移動すると予想されている。
大会会場は、東京都心部のほか、東京都下、神奈川県、埼玉県、千葉県、福島県、宮城県、さらに関係者間の意思疎通がないまま最終決定となったマラソンが行われる北海道札幌市など全国各地にある。
具体的には、2019年6月19日に公開された、輸送運営計画V2に詳しい。これは2017年に作成された初案(V1)を基本としつつも、事実上の最終案としたものだ。これによると、大会実施中の交通の流れは、ひとつの競技に対して、本番会場、練習会場、宿泊地を結ぶルートにおいて、想定ルートと、渋滞対応ルートなどが示されている。
課題となる渋滞について、とくに規制が必要とされるのが都心中央部だ。たとえば首都高速道路では、仮になにも対応策を行わないとすると、一般交通に東京2020大会関係者の交通が加わることで、渋滞状況は平日の2倍以上になると試算されている。

対応策としては、▽大会期間中に高速料金を値上げすることで一般の利用者数を引き下げる。▽ナンバープレートの末尾数等での交通制限。▽HOVレーンと呼ぶ大会関係者専用レーンの設置が考慮されている。こうした交通緩和策を検証するため、大会組織委員会と東京都は2019年の7月と8月、道路事業者や警視庁・各県警本部などと連携して実際の道路でテストを行っている。

不利益を被らないために事前の準備が必要
2019年夏の交通規制テストでは、企業との連携も行った。時差出勤としてのフレックス制、自宅で作業するテレワークなどによって、クルマを使わない仕事のやり方を検証している。
こうしたなか、もっとも大きな影響が及ぶのが物流である。とくに影響が大きいのがコンビニだ。小売業のなかでも拠点数が多く、取り扱う商品の多くが食べ物や飲み物で、日本では賞味時間が厳しく設定されている。

こうした状況は、これまで行われてきた海外でのオリンピック・パラリンピックでも同様なのだが、日本はコンビニ物流に限らず、鉄道やバスの運行でもパンクチュアリティ(提示遵守)の企業文化があるが、海外ではそうした考え方がそもそも甘い。そのため、大幅な交通規制がかかり、仮に交通・物流に支障が出ても、国民側の心に余裕がある。
一方、日本では何事もしっかり準備し、実施中もきちんと運用することが求められるため、交通規制に対して被害を受ける人が少ないはずだ。換言すれば、仮に被害が及んだ場合、大きな社会問題化することになるだろう。