日本では自分が取り扱っているクルマに乗るのが当たり前

日本の新車ディーラー、とくに日系ブランドでは、セールスマンの個人所有車は自分の店で取り扱っている車種に乗るのが当たり前になっている。ディーラーによって異なるが、“社員購入割引制度”などと呼ばれるものを利用しての割安購入や、任意保険料の一部負担など、ディーラーが購入補助や維持費の一部負担をしているケースがほとんどだ。



このような“特典”の手厚いディーラーのセールスマンに話を聞くと、「購入時や維持費の負担が軽くなるのは魅力的ですが、車両への改造はおろか私物の搭載も制限されています。

必要に応じてお客様にサンプルとしてお見せする機会もあるため、会社はいろいろ負担しているのです」と話してくれた。



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過去には、月末になりどうしても販売ノルマが足りないときなどには、セールスマンの車両を有無も言わさず新車へ代替えさせたという話も聞いたことがある。ただ、実際は自分の取り扱う新車に乗るセールスマンは少なく、自分が売ったクルマに数年乗っている客の愛車のなかで、程度の良いものを新車へ代替えさせて下取り車として入れさせ、自分で買い取って乗るといったセールスマンが多かった。その当時はまだまだ新車販売の世界も“職人気質”のようなものが強く「新車を見せなきゃ売れないようでは半人前(セールスマンの人柄で売れという意味らしい)」などとも言われていたそうだ。



年式の新しい、古いはあるものの、過去には自分の会社が扱っているクルマに乗り、客の家へ商談に出かけて契約を取ってくるスタイルが主流であった。そのときに客は乗ってきたクルマを見る機会があるだろうし、いまでも「ところでセールスさんの乗っているクルマはなんですか」などと商談中に聞かれることもあるようだ。そこで、たとえばトヨタディーラーのセールスマンが「ホンダに乗っています」では、少々間の悪い話になってしまうだろう。日本では消費者の間でも「自分の売っているクルマに乗るのは当然のこと」という認識が根強く残っているといってよいだろう。



ドライなアメリカ人と浪花節の日本人? お国柄クッキリの新車ディーラーマンの「愛車」事情



“自分の好きな新車を割安で購入できる”こともメリットとして新車販売の世界に足を踏み入れるひとも多く、日本では新車セールスマンは「自分が売っているクルマに乗る」というのが半ば当たり前となっているが、海の向こうのアメリカでは少々話が異なる。



アメリカでは仕事とプライベートは別と割り切る!

南カリフォルニアのある高級ブランドディーラーへ取材に行ったときに、そこの責任者であるゼネラルマネージャーが敷地内を案内してくれた。屋上駐車場にきたときに「見てくれ」とゼネラルマネージャーがピカピカのBMW7シリーズ(ライバル車)を指さした。「ライバル車から代替えさせたのかな」と思っていたら、「最近購入した私のクルマだよ」と自慢げに話してくれたので驚いた。



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あとで同じ店のセールスマンに話を聞くと「ウチの店ではメーカーと弊社からそれぞれ購入補助が出ており、比較的サイズの小さいモデル(それでも結構高い)ならば、月々のリース料金はそれで相殺できます。つまり、維持費などは別ですがタダで乗ることができるぐらい社員購入制度は充実しています。しかし、セールスマンのなかで自分が売っているクルマに乗っているひとはいません。売るクルマはあくまで商品であって、愛車は自分の好きなクルマに乗りますよ」と語ってくれた。ちなみにそのセールスマンは当時ホンダに乗っていた。



取材を終えディーラーを去ろうと前出のセールスマンと駐車場に行くと、受付をしていたお姉様がそのディーラーで扱う車種のなかでは比較的小さいDセグメントサイズのクーペを颯爽と操り帰路についていた。セールスマンいわく「彼女は会社負担で乗っています」とのことであった。



日本では、取り扱い車種に乗るのが大原則である。ただ、これは通勤や営業活動などで使うクルマに限った話ともいえる。通勤や営業活動で使わず、完全に私用で乗るならば、それについてディーラーはなんら干渉しない(できない)。そのため、セールスマンのなかには扱い車種のなかで手ごろな車種を通勤用に所有し、オフの時の専用車として、取り扱い車種にはとらわれずに自分の好きなクルマを所有するセールスマンもいると聞くが、そこまでヒソヒソとしないと好きなクルマに乗ることはできないのが現状。



“仕事とプライベートは別”というのがあるが、そこを割り切れるアメリカとなかなか割り切れない日本の社会との違いを垣間見た瞬間であった。

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