5リッターV8エンジン搭載という縛りがあった
レクサスのラインアップにおいて“F”というアルファベットは特別な意味を持っている。もともとは2007年にIS Fという特別なモデルの登場時に使われたもので、当時は「富士スピードウェイ」や「東富士研究所」といったトヨタのモータースポーツと先進技術を象徴するアルファベットであると説明があった。
その後、GS F、RC Fと同じく“F”のついたモデルが登場した。
現行のRC Fに搭載される「2UR-GSE」のスペックは、最高出力354kW(481馬力)/7100rpm、最大トルク535N・m(54.6kg-m)/4800rpm。排気量からすると、かなりの高回転エンジンといえる。コンビネーションを組むトランスミッションがダイレクト感のある「8-Speed SPDS」というのもIS Fからの伝統だ。
しかし、すでにGSシリーズの生産終了が発表されている今、2UR-GSEを積むモデルは間もなくRC Fだけになってしまうのは時間の問題となっている。果たして、Fモデルはこのまま減ってしまうのだろうか。
今後は「F」の定義を変える必要がある
IS F、GS F、RC Fの各モデルが歴史を紡いできたように、仮に「2UR-GSE」が“F”モデルの絶対条件だとすると、Fを名乗るにはエンジンが縦置きの必要がある。現在、レクサスのラインナップではSUVがメインとなっていることもあり、そのほとんどはエンジンが横置きだ。エンジン縦置きなのは、LS、LC、IS、LXの4モデルしかない。
そのうち、LCはスタンダードで5リッターV8エンジンの「2UR-GSE」を、LXは5.7リッターV8エンジンを積んでいるため、Fの出番はなさそうだ。可能性があるとすればLSだが、こちらもガソリンエンジン仕様が積んでいる3.5リッターV6ツインターボのスペックは310kW、600N・m。

このままではRC Fが唯一のFモデルであり、最後のFになり兼ねない状況だ。そのためレクサスに“F”の称号を守るには、その定義を変える必要があるだろう。
思えば、メルセデスAMGにしても、かつては専用のマルチシリンダーエンジンを載せていることが名乗る条件だった時代もあるが、いまや4気筒のAMGも存在しているほど。ダウンサイジング時代には、スポーティでプレミアムなブランドも柔軟に変身している。
レクサスのFモデルにおいても、いまのV8エンジンを積んで13年。そろそろ根本的に新しいFの提案があってしかるべきタイミングといえるだろう。

まずはV8エンジンであることにこだわらず、新世代のFにふさわしいハイスペックなエンジンを生み出すことが求められる。
そもそもLSのエンジンをベースにしたというルーツにしたという点からすると、現行LSのV6ツインターボをチューンしたエンジンを生み出すのは、どうだろうか。

またトヨタのプレミアムブランドのレクサスという立ち位置からすれば電動も考慮したハイスペックを提案するというのもブランドとの相性はよさそうだ。
いずれにしても、縦置き・横置きの両プラットフォームに対応可能となるFにふさわしいパワートレインの登場が期待される。