かつては憧れだったドイツ車に手が届く時代!
AMGは「アー・マー・ゲー」、BMWは「べンべ」。
そんな呼び方が一般的だった、70年代~80年代。ドイツ車の正規輸入車の数は、まだまだ少なかった。
それから30~40年以上たったいま(2020年)。ドイツのモデルラインアップはエントリーモデルからプレミアムモデルまで幅広く、価格も同じクラスの日本車よりやや高いといったところで落ち着いてきた。市場に出まわる新車が増えたことで、年式が新しく程度が良いドイツ中古車の価格もかなりこなれてきた印象がある。
それゆえ、庶民にとってドイツ車がショッピングリストに入る、現実的なクルマに思えるようになった。となると、改めて、ドイツ車と日本車との違いを真剣に考えるようになる。果たして、どちらが優れているのか?
むろん、メーカー別、モデル別で比較方向は多岐に渡り、単純に優越をつけるのは難しいのは当然のこと。そこで、目線を日本車の作り手に置いて、ドイツ車との比較をしてみたい。
筆者はこれまで数十年間に渡り、ドイツ全土でドイツ車関連の取材を行い、また世界各地で様々な日本車開発の現場を体験してきた。その上で、あくまでも一般論として、これから先の話を進めたい。
欧州でクルマを売る=アウトバーンで「走られてしまう」
ユーザーがもっとも気になるのは、「走りの差」ではないだろうか。
この点について、少なくともいまから10年ちょっと前の2000年代頃までは、日系メーカー各社のエンジニアは「ドイツに限らず、欧州で売るということは、アウトバーンで『走られてしまう』ということだ」と表現してきた。
速度無制限区間があるアウトバーンで、高い次元で安心安全な走行を実現することは、この時点でも日本車にとってかなりハードルが高く、エンジニアたちが比較車両のドイツ車に乗ると「設計思想の違いがあるのは分かっているが、なるほどよく出来ている」と表現をする場合が多かった。

さらに舞台をニュルブルクリンクに移すと、本質的な差はさらに明確になった。日系メーカー各社がニュルでの本格テストに乗り出したのは80年代後半から90年代に入ってからだ。
こうした日本車のドイツ仕込みによって、日本車プラットフォーム(骨格/車体)の質はどんどん上がっていった。とくに2010年半ば以降、日本メーカーの走りの質は一気に上がり、ドイツ車を含めた想定ライバル車とテストコースで実際に乗り比べをすると、その差はかなり小さいと感じるようになった。

一方で、日本メーカー側があえて「ドイツ車っぽくしたくない」という走りの味付けをする場合もある。潜在的な技術の差ではなく、目指す味の差、ということだ。
もう1点は、内装や装備品について。元来ドイツ車は、走りだけではなく、インテリア造形も質実剛健で、日本人感覚では質素とかシンプル過ぎるといった印象を持つ場合があった。一方の日本車は、日本がカーナビ大国であることもあり、2010年代前半頃までは、車内の装備などでは優れていた印象があった。