レーシングドライバーが自ら売り込みをしなければいけない

毎年、年末となるとレーシングドライバーは落ち着かない。翌年の契約が決まってドライブするシートが確保できているのはほんの一握りのドライバーであり、多くの者は企画書を手にスポンサーやチームを巡り、来季のシートを確保するのに躍起になる。



ボクが現役の最前線で走っていたころは、バブル経済の影響もありレーサー需要は引く手数多。

ドライバーが自ら企画書を練ることはなかった。年末になると家の電話(固定)が鳴り、「来年ウチで走りませんか」とか「来年も引き続きお願いします」といった報を受けて気持ちよく年始を迎えられたものだ。



現在、モータースポーツが置かれている環境は非常に厳しく、自動車メーカー直系あるいは直属のチームでなければ安穏とはしていられない。自動車メーカー直系でも独・フォルクスワーゲン社のようにモータースポーツ撤退という方針が示されたら、新たな活動場所は自ら導き出さなくてはならなくなってしまうのだ。



そこで今回はレーシングドライバー目線で、来シーズンのレース活動をサポートしてもらうための企画書を提案してみたい。



どんなカテゴリーで走るのかを決めないと、スポンサーや協力企業の目星を付けられない。一例として「スーパー耐久レースシリーズ(S耐)」への参戦を企画してみる。S耐はいくつかのクラスに分けられていて、ドライバーとして勝てる見込みとコストのベストバランスを見定め魅力ある提案とする必要がある。そこで着目するのが「ST-2(Div2)」カテゴリーだ。かつては2リッター/ターボ4WDの専用クラスとして「三菱ランサー・エボリューション vs スバル・インプレッサWRX」が雌雄を争い盛り上がった。



レーシングドライバーが本気の提案! あえてGRヤリス「じゃな...の画像はこちら >>

近年、ST-2はレギュレーション変更により参戦可能な車種が増え、いま大きな注目を集めている1.6リッターターボ4WDのGRヤリスも参戦可能となっている。恐らくGRヤリスの参戦でS耐ST-2クラスは来シーズン大き盛り上がりを期待できる。
そこで活躍できればモータースポーツファンの注目も高まり、スポンサーや協力企業にとってはサポートするメリットが生まれることになる。



レーシングドライバーが本気の提案! あえてGRヤリス「じゃない」選択でS耐に挑戦したい「クルマ」とは

そこで参戦するための体制も提案する。まずレース車両だが、ここはあえてGRヤリスを選ばない。恐らく多くのチームがGRヤリスを投入することになると予測されるから、あえて別の車両で勝てるベース車を探す。三菱のランエボはすでに生産が中止されていて手に入らない。またスバルはS耐よりGT300のBRZに多くの力を注いでいる。



最強の2Lターボ+4WD車両が存在する!

そこで白羽の矢を立てたのがメルセデス・AMG A45 S。A45シリーズは2リッター直4ターボの4WDでS耐のST-2にカテゴライズされる。最高出力が市販車状態で421馬力もあり、ほかの同一クラス該当車両を圧倒している。車両価格は800万円程度だが、メルセデス・AMG社に車両供給の提案を行うのだ。A 45はじつは南米のブラジル国内でワンメイクレースが開催されていて、すでにレース仕様が存在するという。それらを上手く調達できれば新車からレースカーを仕立てるより遥かにコストを抑えられるはずだ。



レーシングドライバーが本気の提案! あえてGRヤリス「じゃない」選択でS耐に挑戦したい「クルマ」とは

メンテナンスや運営チームは、今や多くの組織やスタッフが揃っていて交渉可能だ。



こうして概算を算出してみると、車両代が約1500万円。メンテナンスチーム契約費が年間で2~3000万円。ドライバーには木下隆之君や桂伸一君など「安く」て実力と安定性のある人材を選び、僕を含めた3人で年間1500万円ほどを確保する。トータル6000万円が必要最低限の提示価格となる。これにクラッシュした場合の保険代、メディア露出経費など含め7~8000万円が初年度の提示価格となる。そしてこれを3年契約とすれば車両価格は年間500万円に抑えられ、補修パーツなどの負担も年々軽減されていくという仕組みだ。



レーシングドライバーが本気の提案! あえてGRヤリス「じゃない」選択でS耐に挑戦したい「クルマ」とは

成績がよければボーナスプライスも期待できるような企画書とし、ドライバー/チーム/スポンサーがウィンウィンの関係で継続できるようになれば理想的だ。



2020年は新型コロナウイルスの影響で多くのレースイベントがキャンセルされ、または延期された。こうした不測の事態も想定し、リスクの見積もりを盛り込むことも重要になってきた。たとえばレースがキャンセルされた場合は活動費の30%を返却し、本来レース参戦で使われるべき費用はプロモーションやイベント開催などにあてるなど工夫する必要がある。



またガソリンエンジン車の販売が世界中で制限されようとしている動きのなかで、ガソリンエンジン搭載車で競うレースへの参戦意義をいかにアピールできるのかもポイントになる。

将来に動向も見据え、来季を身のある活動とするべく多角的に記述していくのだ。



では、この記事をベースに、メルセデスAMG社に実際に企画書を提出してみようか。



来季、S耐のスタートグリッドにAMG車が並んでいたら、企画書が通ったということだ。乞うご期待!



※本文はあくまでフィクションです。

編集部おすすめ