ヤリス&ヤリスクロスは開発チームが同じ
2020年、登録車の新車販売トップとなったのは15万1766台のトヨタ・ヤリス。年間販売では王者ホンダN-BOXに届かなかったものの、月間でいえばN-BOXを超えることも珍しくなく、2021年こそは年間トップの座に輝きそうな勢いだ。
とはいえ、通称名では「ヤリス」とまとめられているが、その実態はヤリス、ヤリスクロス、GRヤリスの合算である。
ヤリスとヤリスクロスはチーフエンジニア(開発責任者)が同一人物。つまり、同じチームで開発されたわけで、当初からバリエーションを考慮してさまざまな都合をつけてきたという背景がある。そうであれば、外観としてはまったく異なるハッチバックとクロスオーバーSUVを、同じヤリス・ファミリーとして展開するのは自然にも思えるが、そうとも限らない。
2020年にグローバルで約99万台を販売したトヨタの最多販売モデルある「RAV4」は、同じ開発チームから生まれたクロスオーバーSUVの兄弟モデルとして「ハイランダー」と「ハリアー」が存在しているのは、よく知られていることだろう。メカニズムや開発のバックボーンが共通であっても、まったく異なるネーミングで展開することもあるのだ。
車種名をブランドとして育て上げている
では、ヤリスが同名のままバリエーションを拡大しているのには、どのような狙いがあるのだろうか。そのヒントは、同じくボディバリエーションの豊富なトヨタの主力モデル「カローラ」が持っている。
カローラにも「カローラクロス」というSUVバージョンが海外では設定されているし、ほかにもセダン、ワゴン、ハッチバックとボディバリエーションは豊富だ。前述したように、トヨタ内での販売トップの座をRAV4に譲ったカローラだが、その年間販売規模は100万台に近いレベルで、累計では4800万台を超えている。これは小規模メーカー一社に相当するスケールだ。
すなわち、トヨタ・カローラにさまざまなバリエーションがあるから不思議に思うのであって、カローラという独立した自動車ブランドがあるのだと考えれば、同じ名のもとにさまざまなボディを用意するのはむしろ自然といえる。おそらくヤリスが、バリエーションを積極的に拡大しているのは、カローラに続く、大きなブランドになろうとしているからだろう。
じつは、同様のブランディング展開は海外メーカーも行っている。その典型といえるのが、BMW MINIだろう。もともとは2ドアハッチバックを軸としたMINIだったが、いまや3ドアハッチ、5ドアハッチ、コンバーチブル、ステーションワゴン(クラブマン)、SUV(クロスオーバー)……とMINIの名のもとに、多彩なバリエーションを展開している。さらにジョンクーパーワークスというスポーツバージョンまで用意しているほどだ。現行ラインアップからは落ちているが、かつてはクーペボディの設定もあった。
このようなBMW MINIのブランド展開を見れば、トヨタが同じような路線で「ヤリス」というブランドを育てようとしていると捉えるのが妥当だ。そして、そう考えればヤリスのラインアップも腑に落ちるのではないだろうか。

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