ふたつの様式にわけて考えることができる
極めて少数派ではあるが、ときどき登場しては消えていく観音開き左右ドアのクルマ。直近の話題は、なんといってもマツダMX-30だ。そんな観音開きには本当にメリットはあるのだろうか。
そもそも観音開きとはどんなドアを示すのかから、おさらいしておこう。観音開きとは、真ん中から左右へ向かって2枚のドアが開く構造の開き戸のこと。仏壇の扉をイメージすればいいだろう。クルマにおける観音開きドアは、ルノー・カングーのようにテールゲートへ採用する例と、MX-30のように側面へ採用する例がある。前者が商用バンやトラックに採用されることが多い理由は、フォークリフトで荷物を積み下ろしする際に開いたドアが邪魔になりにくいからだ。またトヨタ・ランドクルーザーなどのSUVでは、背中に背負ったスペアタイヤを上へ跳ね上げるのが現実的ではないから横開きドアとしている事情もある。
本題となる車両側面の観音開きドアだが、ふたつの様式にわけて考えるとメリットを理解しやすい。ひとつはファントムやカリナンなどロールスロイスの4枚ドアのモデル、トヨタの初代クラウンやそのイメージを蘇られたオリジンなどに使われているタイプだ。
このタイプは後席ドアが大きく、開口部が十分に広く確保されている。だから乗り降りもしやすく、開いたドアが乗降を妨げないなどメリットが多い。それらは乗降のための観音開きなのだ。
ただし、ウィークポイントもある。
余談だが、リンカーン・コンチネンタルの2020年モデルには、リヤドアを通常の前ヒンジタイプから後ろヒンジへ大改造して観音開きとした特別仕様が限定車として用意された。高級サルーンとして、後ろ側へ開くリヤドアは大きな意味があると同時に、現代においては特別感を演出する象徴なのだ。
後席へ荷物を置くためのドアだと考えればとても便利!
いっぽうで、MX-30のような補助的なリヤドアとして考えた場合はどうだろうか。マツダでいえばかつてRX-8があったし、トヨタFJクルーザー、bBオープンデッキ、ホンダ・エレメント、さらには輸入車として日本へ導入されたモデルでもサターンSC2、ミニ・クラブマンの先代モデルなどが採用している。
メリットがあるかどうかの判断は、このドアを「後席乗降のため」と考えるか、それとも「後席に荷物を置くため」と考えるかで180度異なる。
4ドアや5ドアモデルのように、後席に乗り降りするためのドアと思えば“使えないドア”だ。開口部は狭いし、なによりフロントドアを開いた状態でないとリヤドアを開けられないのは非常に都合が悪い。後席に座る人が降りようと思っても、誰かがフロントドアを開けてくれるまで自分の意志だけではリヤドアを開けられないのだ。乗り込む際も然りで、後席へ乗り込んでリヤドアを閉めた後、誰かがフロントドアを閉める必要がある。
しかし、ドライバーが後席に荷物を置くためのドアと考えるとじつに都合がいい(助手席側にリヤドアを備えたサターンを除く)。なぜならフロントドアを開けたときに、サッとリヤドアも開いて後席へアクセスしやすいからだ。一般的な前ヒンジドアよりも気軽にドアを開け、後席へアクセスできる。
というわけで結論。リヤドアを補助的な扱いとする観音開きのドアにメリットがあるかどうかは、その人がどうクルマを使うかによって判断がわかれる。一般的な4ドアや5ドアのような後席乗り降りを期待するなら実用性は低いが、後席へ荷物を置くためのドアだと考えればとても便利だ。
比較対象を4ドアや5ドアとするか、それとも、2ドアや3ドアに比べるかで判断は真逆になる。MX-30の場合は、「5ドア」ではなく「3ドアクーペの派生モデル」として接すればリヤドアはメリットでしかない。

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