この記事をまとめると
■カナ表記は同じでも軽自動車は「KIX」で現行モデルは「KICKS」と英語表記は異なる



■2020年にデビューした現行型キックスは売れてるとも売れてないともいえない微妙な状況



■キックスの存在感の薄さはクルマだけが原因ではなくさまざまな要因が重なっている



日産車の中でも立ち位置が微妙な現行型キックス

日産キックスというモデルはその経歴が少々複雑なものとなっている。日本市場だけを見れば、初代キックスは軽自動車で、三菱パジェロミニのOEM(相手先ブランド名製造)として、2008年にデビューしている。



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2012年に販売終了となり、2代目となる現行モデルが2020年6月に国内デビューしている。



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世界市場では現行モデルが初代となり、2016年にブラジルでデビューしている。その後、2017年に中国及びアメリカ市場でデビュー、2018年にはカナダでもデビューしている。



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その後2019年にインドでもデビューするのだが、このインド仕様はルノー傘下のルーマニアブランド"ダチア"モデルのプラットフォームを採用し、グローバル市場でのキックスとはメカニカルコンポーネントが異なっている。



日本で販売されているキックスはタイ生産モデル(海外生産モデル)となっており、e-POWERユニットについても、初めての海外生産拠点となっている。e-POWER搭載モデルは2020年5月にタイでフェイスリフトモデルに搭載され、その後2020年6月に日本でデビューしている。



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なお、日本で初代となる軽自動車のキックスは「KIX」となるが、2代目現行キックスは「KICKS」となっている。



自販連(日本自動車販売協会連合会)の統計によると、2020年6月から2021年3月までの累計販売台数は3万2863台。一方2021年1月から同年6月までの累計販売台数(2021暦年締め上半期)は2万1193台となっている。



2020年6月のデビューから2021年3月までの平均月販台数は約4694台、2021暦年締め上半期の平均販売台数は約3532台となっているので、月販レベルで2000台ぐらい売れれば合格点とされる日本市場では、キックスの現状の売れ行きは人気モデルといっていいだろう。



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軽自動車、ノート系、セレナぐらいしか量販が期待できるモデルのなかった日産にとって、キックスは力強い援軍となっているように見える。



キックスの地味イメージは国内デビューのタイミングが影響

ただヤリスクロスが納車半年待ちといった情報もあって世の中の注目を浴びているのを見ると、キックスは存在感が薄いように見える、つまり、もう少し売れてもいいのではないかとも考えている。いまいち影が薄いとも思える理由のひとつは、まず国内デビューのタイミングがあるだろう。



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キックスのデビューした2020年6月といえば、新型コロナの感染拡大により、日本全国に発出されていた最初の緊急事態宣言がようやく解除された直後となる。当時はまだまだ未知な部分の多かった新型コロナウイルスに対し、世間が今以上に慎重に感染予防を進めていた時期でもある。新車市場に目を移すと4月、5月と全国的に行動自粛が求められていたこともあり、新車販売が大きく落ち込みを見せていた。



しかし、緊急事態宣言が解除された直後から新車販売は、4月や5月の落ち込みが嘘のように急速な回復を見せた。「それではキックスもその波にのって」といいたいところだが、デビュー直後はタイ工場からの供給遅延もあり、納期がいきなり2021年2月になるなどと店頭では説明を受けることとなった。



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発売直後から深刻な納期遅延では、「良さそうだな」と思っていても、「それではほかへ」となってしまった人も多かったことだろう。納期遅延が深刻なこともあったのか、メディア露出も控え目となり、キックスというクルマ自体をいまもって知らないという人も世の中には多いのである。



キックスがデビューしてからそうこうしていると2020年11月に新型ノートがデビューする。先代モデルとは異なりe-POWER仕様のみとなり、そのe-POWERシステムも先代のブラッシュアップタイプとなっていた。そのため、キックスに搭載されるe-POWERユニットは世代の古いものとなってしまった。このあたりも販売面で影響していないことはないだろう。



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モノグレード(単一グレード)構成となり、プロパイロットも標準装備。

メーカーオプションといえば、インテリジェントルームミラーとバックビューモニターぐらいと、完成車を輸入していることもあるが、メーカーオプションもシンプルで購入検討もしやすい。しかも、多くのメーカーで部品不足による、納期遅延に悩まされている現在でも、日産のウェブサイト上では納期は1カ月程度となっており、大注目されてもおかしくないのだが……。



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FFしかないのも響いているのではないかとの話もあるが、たとえばホンダ・ヴェゼルの先代モデルでは、売れ筋は圧倒的にFFだったとの話も聞いているので、FFのみということは、それほどネガティブに働いていないように見える。



ただ、日産系セールススタッフと昨今の納期遅延問題について話していると、日産系セールススタッフは「納期が早いといってもなかなか日産車にご興味を持っていただけないようで、目立って売れ行きが良いということはありません。少し前にメーカーにおいていろいろゴタゴタ(カルロス ゴーン氏の一件など)がありましたが、お客様の多くはまだ覚えていらっしゃるようで、それもあって積極的にはご検討いただけないようです」とも語っていた。



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オーラも加わったノート系も、もう少し話題になっても良いのではと思うし、キックスの存在感の薄さは、クルマだけに原因があるわけではなく、さまざまな要因が重なっているものと見たほうがいいうだろう。

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