この記事をまとめると
■欧州メーカーのHVやPHVには外部電源供給装備がほとんど備わっていない



■欧州電動車がここ数年の登場に対し、日本の電動車は20年近くの歴史があり、装備も充実



■最近の欧州は大規模自然災害が起こっておらず、外部給電を用意しようという機運が薄い



欧州電動車にはなぜか外部電源供給装備がない

2015年に勃発したフォルクスワーゲンのディーゼルゲート事件と、同年開催されたCOP21のパリ協定あたりをきっかけに始まったヨーロッパの電動化戦略の中で、現地のブランドは次々にPHVを送り出してきた。



電動車最大のメリットなのにナゼ? 輸入EVやPHVが「外部給...の画像はこちら >>



今年のCOP26では開催国イギリスが、2040年に世界の新車販売のゼロエミッション化を提案したものの、多くの自動車生産国やメーカーが反対した。欧州委員会では今年の夏、2035年のゼロエミッションを目指すという発表をしたものの、現実的に安心してロングドライブをするにはある程度エンジンに頼るしかないと、多くの関係者が考えているのだろう。



よって、EVシフトに邁進する欧州も、例によって規制の開始時期を遅らせるなどして、しばらくPHVを存続させていくのではないかと思っている。



ところで欧州のPHVを見て不思議なのは、日本車のHVやPHVには装備されている外部電源供給装備がほとんど備わっていないことだ。なぜか。考えていくと、ふたつの理由に行き着いた。



電動車最大のメリットなのにナゼ? 輸入EVやPHVが「外部給電できない」裏にある意識の違い



早くから電動化した日本車は装備が充実した

ひとつは日本車の電動化が早かったこと。世界初の量産HVは1997年デビューのトヨタ・プリウスで、第2号は2001年に登場したエスティマHVだった。このエスティマに、最大1500Vの電源供給を可能にするAC100Vコンセントが装備されたのだ。



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当時はレジャーユースに役立ちそうぐらいの気持ちで用意したのかもしれない。ところがこれが、2011年3月11日に発生した東日本大震災で注目された。多くの地域で長時間の停電が相次いだ中で、「自家発電」可能な同車が重宝されたのだ。これが2番目の理由だ。



トヨタは翌年、プリウスとプリウスPHVにオプションで100Vコンセントを設定。

同じ年に発表された三菱アウトランダーPHEVも用意した。震災前年にデビューした日産リーフにはコンセントの用意はなく、普通充電ソケットから電気を取るV2Hを実用化したが、商用車のe-NV200はコンセントを装備した。



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つまり、日本車のPHVやHVの外部給電用コンセントは、20年もの歴史を持つことになる。それに比べると欧州車は、PHVが本格的に登場してきたのはここ5年ぐらい。そもそも歴史が浅い。



しかもヨーロッパでは最近、東日本大震災のような大地震は起こってはいない。自然災害全体に話を広げれば、今年の夏にドイツなどを襲った豪雨災害はあるが、そこで災害に備えて外部給電を用意しようという機運が出たとしても、まだ製品化はされないだろう。



おまけに現地の報道を見ると、豪雨災害の原因は地球温暖化にあるという意見がメイン。PHVのバッテリーに蓄えた電気を家電に使うなどというのは、温暖化防止に逆行するという声が出てきそうな雰囲気を受ける。



このあたりは国民性もあるので、どちらがいいとは断定できないけれど、日本の電動車経験の長さと災害経験の多さが、臨機応変に電気を使おうという柔軟な発想につながったことには、同じ国に住むひとりとして賛同したい。



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