この記事をまとめると
■クルマに備わる「凄そう」だったり「速そう」に聞こえる名称の意味を解説■レーシングカーや航空技術からの応用だったりする
■決して大袈裟な名前ではなく、名前の通り凄い技術な場合が多い
「凄そう」な装備や機能は実際に凄いのか?
クルマの装備や用語には、字面だけで速そうだったり凄そうに見えたりするものがいくつかある。そうしたフレーズの中から、編集部が独断で選んだいくつかを解説してみよう。
F1マチック
これは立派に凄いシステム。今では多くのスポーツカーが採用しているDCTの元祖。
もともとは名前の通り、フェラーリのF1マシンに採用されたシステムで、1989年のフェラーリ640にはじめて投入されたセミAT。
フェラーリ640はジョン・バーナードが設計した新しい思想のF1マシンで、F1マチックはその目玉のひとつ。開幕戦でナイジェル・マンセルがドライブして優勝している。市販車では1997年、フェラーリF355に初めて採用。この頃はまだシングルクラッチで、6速MTのクラッチ操作を電動油圧式に変えただけの仕様といっても良かった。

フェラーリのモデルでデュアルクラッチになったのは2008年のカリフォルニアから。なにせフェラーリの新システムなので、当初はポンプやセンサーなどのトラブルがわりと頻繁に起きたそうだが、日産GT-RのDCTも定期的な分解整備が必要なので、フェラーリのF1マチックだけが弱いというわけではない!?

ボルテックスジェネレーター
ボルテックスジェネレーターは、ボディの側面などに突起を設けて乱気流を発生させ、全体的な空気抵抗をよくする「乱流生成装置」「乱流翼」のこと。トヨタのエアロスタビライジングフィンもこうした「乱流翼」の一種で、航空機ではかなりメジャーな技術。

市販車の場合、速くなるかどうかは別として、ボディの振動を減らし、空気抵抗が小さくなり、燃費向上にも効果がある。
「凄そう」じゃなくて実際凄いことばかり!
スカイアクティブ
スカイアクティブテクノロジーはマツダの新世代クリーンディーゼルエンジンSKYACTIV-Dや、新世代高効率直噴ガソリンエンジンSKYACTIV-Gなどのエンジンの技術と思っているかもしれないが、エンジンだけではなく、トランスミッション、ボディ、シャシーなどのスカイアクティブテクノロジーの個々のユニットを統合的に制御し、全体最適の考え方で連携することによって、マツダの提供価値の根幹である「人馬一体」の走行性能をさらに高める新世代車両運動制御技術の総称。

「ゼロからの革新。世界一のクルマをつくる。」というのがスカイアクティブテクノロジーの開発思想で、エンジン、トランスミッション、ボディ、シャシー、車両運動制御技術を同時に刷新して最適化し、走る喜びと高い安全性、環境性能を目指している。
シューティングブレーク
シューティングブレークは装備ではなくボディ形状のこと。クーペとステーションワゴンを融合させた、スポーツクーペ風のステーションワゴンのことだ。

メルセデスベンツのCLAシューティングブレークや、VWアルテオン シューティングブレークなどが代表的だが、「シューティングブレーク」自体は新しい言葉ではなく、もともとは馬車のボディタイプのひとつ。
狩猟用のオープン馬車(キャリッジ)がシューティングブレークで、エステートやステーションワゴンと同じく多目的車両のことを指すが、どちらかというと古い言い方で、それを復活させたカタチになっている。
ドライブ・バイ・ワイヤ
航空機の操舵システムであるフライ・バイ・ワイヤの転用で、リンクやワイヤを使った機械式の制御ではなく、電気信号で制御するシステムのこと。クルマの場合、アクセル・バイ・ワイヤ、シフト・バイ・ワイヤ、ステア・バイ・ワイヤ(スカイラインが採用)、ブレーキ・バイ・ワイヤなどがある。通常は、ドライブ・バイ・ワイヤ(DBW)=電子制御スロットルとか電スロとか呼ばれている。

国産車でのパイオニアはホンダのNSXだったが、NSXはミッドシップでスロットルも運転席の後ろにあり、機械式だとワイヤが長くなり、リンクも増え、ペダルが重くなって操作性が悪くなるために、DBWを採用したと言われている。

TPMS
TPMSはTire Pressure Monitoring System(タイヤ空気圧監視システム)の略。アメリカでは2007年より新車へのTPMSの装着が完全義務化となっている。

日本でもタイヤの空気圧管理が疎かになっている人が多いので、早く義務化するべきなのだが、その取り組みは非常に消極的といわざるを得ない。