この記事をまとめると
■「ヴィジョングランツーリスモ」はグランツーリスモ内でのみ走らせられる



■2013年のメルセデスAMGに始まりいまや32台を生み出している



■最新作「グランツーリスモ7」に用意されたのが「ポルシェ ビジョングランツーリスモ」だ



ゲーム「グランツーリスモ」によって誕生したコンセプトカーたち

そもそも「GT」、「グランツーリスモ」というのは長距離をラクラクと移動できるようなハイパフォーマンスモデルを示す言葉で、国産車で最初に名乗ったのは「いすゞベレットGT」。そのほか「名ばかりのGTは……」というキャッチコピーでトヨタ・セリカが日産スカイラインに対抗したというエピソードも語り継がれている。



とはいえ、いま「GT(グランツーリスモ)」といえば、プレイステーションのソフトを思い出す人が多数派かもしれない。

クルマのゲームではなくドライビングシミュレーターであると認めるプロドライバーも多い「GT」は、もはやプレイステーションの枠を飛び越えて、ひとつのカルチャーを生み出している。



ゲームが自動車メーカーを本気にさせた! グランツーリスモ内「...の画像はこちら >>



その象徴といえるのが、「ビジョングランツーリスモ」だ。



グランツーリスモの15周年を記念してはじまったこの企画は、自動車メーカーがグランツーリスモとコラボレーションして夢のクルマを生み出そうというもの。



それだけであればスケッチレベルのショーモデル、コンセプトカーと呼ばれる内容に過ぎないが、それをグランツーリスモの中で走らせることができるというのがポイント。スタイリングだけでなく、メカニズムについてもシミュレーションできるレベルで作り込んでいる必要がある。



メーカー側からすれば、グランツーリスモというプラットフォームを使ったプロモーションであるわけで、ブランドイメージを高めつつ、近未来の量産スポーツカーを思わせるスタイリングやメカニズムのビジョンを見せてきた。



そんなビジョングランツーリスモは、すでに国内外のメーカーによって32台も生まれている。シリーズ集大成ともいわれる「グランツーリスモ7」発売を機に、そんなビジョングランツーリスモから印象深い4台をピックアップして振り返ってみよう。



2013 メルセデスAMG

記念すべきビジョングランツーリスモ第一弾を生み出したのはメルセデスAMGだった。それは2013年11月のことだった。当時の車名は「メルセデス・ベンツAMG ビジョングランツーリスモ」。



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そのボディはアルミ製スペースフレームとカーボンカウルによって構成され、想定される車重は1385kg。エンジンは5.5リッターV8ツインターボで、最高出力585馬力、最大トルク800Nmを発生。

トランスミッションは当時のAMG最高峰といえるSLS譲りの7速DCTが組み合わされた。



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ネコ科の大型動物をモチーフとしたスタイリングは、まさに筋肉の盛り上がりを感じるものだが、このフロントマスクは翌年発表されるAMG GTを意識していたのは間違いないだろう。ある意味では、量産スポーツカーのティザーとしてビジョングランツーリスモが活用され、マーケットからは好意的に捉えられたと記憶している。



ビジョングランツーリスモ第一弾の成功が、その後の自動車メーカーの参入に弾みをつけたといえるだろう。



最新作の「ビジョングランツーリスモ」はポルシェのEVスポーツ

2017 マクラーレン

2017年9月にマクラーレンカーズから発表された「マクラーレン アルティメット ビジョングランツーリスモ」は、明確に2030年以降の量産スポーツカーを見据えて開発したと宣言されていた。その開発にはグランツーリスモシリーズのプロデューサーである山内一典氏も関わったというが、ドライバーがうつ伏せで乗り込むというコンセプトからして斬新で、ドライビングシミュレーターとリアルのコラボを感じさせた。



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後輪を駆動するのは4リッターV8ツインターボ、前輪はモーター駆動のハイブリッドスポーツカーで、システム最高出力は1150馬力という。しかもボディは軽量高強度なカーボン製で1000kgしかない。はたして、うつ伏せの状態でその加速を味わうとどんな気持ちになるのだろうか……。



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これほどのパワーを御するためにはエアロダイナミクスも無視できない。基本となるダウンフォースはボディ全体で生み出しつつ、コーナリング時にはエアインレットのカバーを開くことで、さらに曲がるためのダウンフォースを稼ぐというアイディアが盛り込まれている。こうした部分が、2030年のリアルにつながると思うと、楽しみになってくる。



2019 ランボルギーニ

ビジョングランツーリスモはデータだけにとどまらない。アウトモビリ・ランボルギーニが2019年11月に発表した「ランボルギーニV12 ビジョン グランツーリスモ」は、グランツーリスモチャンピオンシップ・ワールドファイナルの会場にフルスケールモデルを持ち込み、リアルとバーチャルが密接につながった世界であることを示した。



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いかにもランボルギーニらしい多角形の面を用いたスタイリングをよく見れば、コクピットはキャノピー型のシングルシーター。メーターらしきものはなく、車両情報はバーチャル的に表示されるというのも、未来的だ。



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ちなみに、パワートレインはランボルギーニ・シアンFPK37譲りのスーパーキャパシタ+V12エンジンのハイブリッド。スタイリングにおける次世代スーパースポーツの提案といえそうだ。



2021 ポルシェ

このように過去に登場してきたビジョングランツーリスモの各モデルは、それぞれの時代におけるグランツーリスモシリーズで走らせることができたが、いよいよグランツーリスモ7をターゲットに2021年12月に生まれたのが「ポルシェ ビジョングランツーリスモ」だ。



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ポルシェとしては初めて手掛けたというバーチャルコンセプトカーが生まれるのには、2017年以降グランツーリスモシリーズにポルシェが正式に収録されるようになったことも関係しているのはファンならばご存知のとおりだが、いずれにしてもグランツーリスモという仮想世界に向けて自由な発想で生み出されたのが、このピュアスポーツカーだ。



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ポルシェファンでなくとも、スタイリングに「タイカン」のモチーフを感じるだろうが、まさしく、このビジョングランツーリスモは電気自動車なのである。はたしてポルシェが考える電気スポーツカーが、どんなフィーリングを感じさせてくれ、どんなサウンドを奏でるのか。グランツーリスモで走らせることが楽しみというファンも少なくないはずだ。

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