この記事をまとめると
■適正な車間距離について考える■ACCの普及も加味して解説
■スキルに合わせて確保するべきだ
適正とされる車間距離は長すぎる?
教習所(自動車学校)や免許更新時の講習などで、適正な車間距離についての話を聞いたことがあるというドライバーはどれくらいいるだろうか。
「そんな話、聞いた覚えがない!」という……ことはないだろう。適正な車間距離は安全運転の基本であり、日常的に意識すべき要素だからだ。
そもそも前走車との間に距離を置く必要があるのは追突事故を防ぐためだ。レースやドリフトといったモータースポーツでは、ボディが接触しそうなほどビタビタに車間を詰めることもあるが、それはコース状況が明確にわかっていて、先行するドライバーのスキルを信じているからだ。それでも、ちょっとしたミスで接触してしまうこともある。
まして公道では、先行するドライバーのスキルは千差万別であるし、飛び出しや故障などどんなアクシデントがあるか予想もつかない。そのため先行車両がブレーキをかけて停止した場合にも追突せずに済むように安全マージンを取っておく必要がある。それが適正な車間距離というわけだ。
では、どのくらいの車間距離が適正なのだろうか。
前述した空走距離とは、先行車両のブレーキランプがついてから反応するまでの時間に走ってしまう距離のことで、制動距離というのはフルブレーキができたとして停止するまでに要する距離のことだ。

制動距離は路面状況や天候によっても変わるし、車両ごとの性能差もあるので細かくいえば車種ごとに変わってしまうが、教習所などでは100km/h走行時に100m以上は確保しておきたいと教えているはずだ。そうした車間距離の目安として高速道路には、「0m」「50m」「100m」と車間距離を確認するための標識が用意されている。
とはいえ、筆者の記憶が正しければ、この数字は30年以上前から教習所で使われている。
では、現時点の現実的に安全であろう車間距離とはどのくらいなのだろうか。
スキルに合わせて堂々と確保すべし
たとえば、先行車両に追従するクルーズコントロール(ACC)の制御では、自動車メーカーがクルマの性能を考えた上で、制御可能な車間距離を設定しているはずだ。
一例として、ホンダ・フリードの説明書を見てみると、ACCでは4段階の車間距離設定が行えるが、100km/h走行時の最短・車間距離は約30m、最長で約78mの設定となっている。
参考:ホンダ・フリードACC説明書
(https://www.honda.co.jp/ownersmanual/webom/jpn/freedhybrid/2017/details/13686090-53076.html)

ACCの場合は、一般に人間より反応が速く空走距離が短いことから、この車間距離が可能になっている面もあるだろうが、たしかにリアルワールドでは100km/h時に30mくらいの距離感で走っているクルマが多い印象がある。
そのため100km/hで100mといった車間距離は開けすぎに見え、どんどん割り込まれてしまい、却って運転が難しくなるという側面もあったりするのは否めない。
では、割り込まれることが多いドライバーは車間距離を詰めるべきなのかといえば、答えはノーだ。
冒頭でも記したように車間距離は事故リスクを下げるために必要なスペースといえる。反射神経に優れているなど反応速度に自信があって、なおかつどんな状態からでもABSが作動するくらいのフルブレーキが踏めるスキルがあればACC並みの短い車間距離でも追突事故を回避できるかもしれないが、そのどちらにおいても機械に並ぶだけのスキルがないのであればACCの設定値よりもマージンを見た車間距離を取っておくことが事故を避けるには必要といえるのだ。

割り込まれたら、そのクルマを目安にふたたび自分が信じる車間距離を開ければいい。スキルがないのにまわりに合わせて無理な運転をする必要はない。ドライバーのスキル、クルマのパフォーマンスは個々に異なるものだから、各人が必要と思う車間距離を堂々と確保すればいいのだ。
もっとも、どんなに自信があったとしてもACCが設定する車間距離よりも短くして安全に止まれるというドライバーは超少数派のはずだ。自分のクルマにACCがついているならばACC作動時の車間距離を参考にして、自分の感覚がそれよりも短いようであれば、本当に追突回避をできる車間距離としているのか、自問自答してみてほしい。