18日までの点検で明らかになったのは、当該店舗において消費期限ラベルを遅延貼付したり、一度売り場に陳列した商品の消費期限ラベルを貼り替えたりする不正が行われていたこと。保健所には報告済みで、消費者からの健康被害はない状況だという。
店内調理品はミニストップの大きな魅力のひとつとなっており、今回の不祥事に衝撃を受けた人も少なくないだろう。なぜ、このような不正が行われてしまったのか。
流通アナリスト・コンビニ評論家で、大手コンビニチェーンにおけるスーパーバイザーの経験もある渡辺広明氏が解説する。(本文:渡辺広明)
全店舗での製造・販売中止は必要不可欠
ミニストップは1980年に横浜の大倉山に「コンボストア」という名のイートインスペースを併設した1号店をオープンした。第1号店の開店チラシには〈フレッシュな材料とアメリカから直輸入の調理機材で、すばやくクッキング!!〉(2016年3月24日付『月刊コンビニ』より)との文言があったというから、「イートイン」と同時に「店内調理」にもこだわりを持っていたことがよくわかる。そんな店内調理に歴史あるミニストップだからこそ、今回の消費期限偽装は消費者の食の安全に対する不信感につながり、信頼を大きく損なう許されない結果となっている。
消費期限ラベルの遅延貼付では2、3時間後に貼ったケースがあったほか、一度陳列した商品に新ラベルを貼り直して消費期限を延長する不正も行われていたという。さらには、消費期限を記したラベルをいつ貼るか、明確なルールがマニュアル化されていなかったことも明らかになった。
この状況で、ミニストップが全店舗において手づくりおにぎり、手づくり弁当、店内加工惣菜の販売を中止するという前例のない措置をとったことは、信頼回復のためには必要不可欠であるとも考えられる。
消費期限偽装の発生は「不可解」
今回の問題では、本部の店舗巡回員であるスーパーバイザーの指導が不十分だった疑いがある。コンビニの利益に関わる三大経費は、人件費・光熱費・廃棄となっていて、廃棄増は特にオーナー収入に影響を与える。
ミニストップの場合、他の大手コンビニチェーンと違い「ミニストップパートナーシップ契約」という契約形態がある。
そのため、他の大手コンビニチェーンと比べても、本部のスーパーバイザーの廃棄に対する指導の重要性はより大きかったはずである。スーパーバイザー出身の筆者の経験から考えると、今回の消費期限偽装の発生は不可解と言わざるを得ない。
出来たて商品の提供は差別化のため必須
一方、コンビニでは、健康被害等の問題が絶対に起こらないよう、非常に厳格な消費期限を設定している。偽装は断じて行ってはいけないことだが、フランチャイズオーナーの心の中には「もったいない」との気持ちがあったのかもしれない。さらに、フードロス削減という世の中の潮流もあり、オーナーに心の隙間が生まれ、今回の偽装行為につながってしまった可能性も考えられる。
おにぎりや弁当、惣菜などの店内調理は、コンビニ業界では、1994年にセイコーマートの「HOT CHEF」がいち早く導入され、ミニストップはローソンが約9600店舗で展開する「まちかど厨房」とほぼ同時期の2010年9月にスタートし、2013年4月に全店導入が完了している。
コロナ禍により、外食産業が出来たての料理をテイクアウトやデリバリーで提供することが一般的になった。コンビニ業界も、他業態との“胃袋の争奪戦”が激化したことで、出来たての手づくり商品に対する顧客ニーズが高まり、店内調理の展開が必要不可欠となっている。
セブン‐イレブンやファミリーマートなど、厨房を持たないコンビニチェーンでも、カウンターファストフードに注力するなど、コンビニ業界全体として出来たての商品提供は差別化を図るための重要な施策となっている。
おにぎりや弁当、惣菜といった店内調理品はもちろん、ホットスナックやドーナツといったカウンターファストフードも同様に鮮度管理が難しい。各社はタブレット端末の導入など、さまざまな運用方法を試行錯誤しながら、厳格な品質管理に取り組んでいる。
コンビニにとってこれら出来たて商品の販売が欠かせなくなっている中、今後はより厳格な運用が求められていきそうだ。
■渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
消費経済アナリスト、コンビニジャーナリスト。1967年静岡県浜松市生まれ。ローソンに22年間勤務し店長、スーパーバイザー、バイヤーなど経験。現在は商品開発・営業・マーケティングなどのほか、全国で講演活動を行う。フジテレビ「Live News α」レギュラーコメンテーター、TOKYO FM「馬渕・渡辺の#ビジトピ」パーソナリティ。近著『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)。