相談会の実施を前に全青司は26日、都内で会見を開き、養育費の未払いに関する現状や課題を報告した。
養育費未払いが子どもの貧困の要因に
厚生労働省の「2022年国民生活基礎調査」によると、「子どもの貧困率(※)」は11.5%に上り、子どもの9人に1人が貧困状態にある。※相対的貧困(世帯の所得が等価可処分所得の中央値の半分に満たない)状態にある18歳未満の子どもの割合
一方、こども家庭庁の「2021年度全国ひとり親世帯等調査」では、母子世帯において「養育費の取り決めをしている世帯」は46.7%、「(離婚した父親からの養育費を)現在も受けている世帯」は28.1%にとどまる。
会見に出席した全青司人権擁護委員会の國貞智子委員長は、「養育費の未払いが、子どもの貧困を助長している」と述べ、問題の深刻さを訴えた。
こうした状況を受けて全青司は、2015年から電話による「全国一斉養育費相談会」を開催してきた。同相談会の開催は今年で11回目を迎える。
およそ7割が養育費支払い「なし」
昨年行った相談会(24都府県・27会場にて電話で実施)では、207件の相談が寄せられた。男女比は女性181人、男性16人(回答数197)と、圧倒的に女性が多かった。また、属性は同居親165人、別居親6人、その他16人(同187)と、ほとんどが養育費を受け取る側からの相談だと推測される。
養育費の支払い状況については、およそ7割が「なし(受け取れていない)」と回答した。その他2割が「あり」、1割未満が「その他(支払い遅れ、一部未払い)」と答えた。
自由意見も寄せられ、「給与の差押えなどの強制執行をした後、恨まれて危害を加えられないか怖い」「養育費取り立てに費用がかかり、回収するための労力・金銭的な負担が大きい」といった懸念や、「養育費をマイナンバーとひもづけて、税金のように国が徴収するなど未払いを防ぐ仕組み・制度をつくってほしい」といった要望が聞かれた。
民法改正で「支払い担保」進むか…
2021年5月には、強制執行(財産の差押え)の対象となる債務者の財産を特定できない場合に強制執行の実効性を確保する「財産開示手続」や、「第三者からの情報取得手続」を定めた改正民事執行法が全面施行された。また昨年5月には、「共同親権」の導入などを盛り込んだ「民法等の一部を改正する法律」が成立・公布され、施行まで1年を切っている(公布から2年以内に施行)。
今回の民法改正では、養育費の支払い確保に向けた見直しが行われている。
たとえば、これまでは別居親が養育費の支払いを怠った際に財産を差し押さえるためには、公正証書や調停調書、審判書、判決書などの「債務名義」が必要だった。しかし、施行後は、養育費債権を持つ人に「先取特権」(※)という強力な権利が与えられる。
※債務者の財産について、法律上当然に、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利(民法306条、308条の2等)
これにより、債務名義がなくても、父母間の私的な取り決めに基づいて差押えの手続きを申し立てることができるようになる。
また、離婚のときに養育費の取り決めがない場合でも、一定額の「法定養育費」を請求することができる「法定養育費制度」(同766条3項等)も導入される。
國貞委員長は「こうした改正により、今年の相談会では法律に関する相談需要の増加が予想される」と話す。
「支払い義務者の相談にも乗りたい」
現状、養育費に未払いがあっても罰則等はない。しかし、國貞委員長は「民法877条1項(※)は『扶養義務者』を定めている。親は子を扶養するという(民法上の)義務があり、未払い等はその義務に反している」と指摘する。
※直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
その上で、國貞委員長は「(同居親にとって)養育費の支払いを確保するということは、大きな課題であり、子どもの成長と家計の安定という長期的視点からも大変重要となる」と話す。
一方で、支払いを履行できない事情がある場合も考えられるとして、相談会では、養育費を支払う側の相談も受け付けている。
「養育費を支払う側への継続的なサポートもあるべきだろう。コロナ禍には、収入が減ってどうしても払えないという相談を受けたこともある。持続的に支払ってもらうことがお子さんのためには一番いいことだ」(全青司・岩田豪副会長)
「養育費相談会」は、8月30日の午前10時から午後9時まで、司法書士が全国25か所(25都府県)の会場にて、共通フリーダイヤル(0120-567-301)で受け付ける(相談無料、秘密厳守)。
■榎園哲哉
1965年鹿児島県鹿児島市生まれ。私立大学を中退後、中央大学法学部通信教育課程を6年かけ卒業。東京タイムズ社、鹿児島新報社東京支社などでの勤務を経てフリーランスの編集記者・ライターとして独立。防衛ホーム新聞社(自衛隊専門紙発行)などで執筆、武道経験を生かし士道をテーマにした著書刊行も進めている。