24日夜、会見した同市長は「男女の関係はない」と釈明したが、『市長たじたじ日記』(三五館シンシャ)の著者で千葉県鎌ケ谷市市長を5期19年務めた清水聖士氏は「相手のことがすごく好きだったのでしょう」とキッパリ。
小川市長の行動を「大失態」とし、市長経験者として「脇が甘すぎる」と厳しい言葉を送った。
なぜ相談場所を「ラブホテル」にする必要があるのか
小川市長の醜聞が明らかになったのはNEWSポストセブンの報道だ。部下にあたる市幹部男性(X氏)と、極めて短期間に複数回ラブホテルで密会していたことが詳細に報じられた。小川市長自身は独身とはいえ、相手の幹部男性は既婚者。同市長は、その目的について会見で「公私にわたる相談」や「仕事に関する相談や打合せ」をするためだったと説明したが、説得力に乏しすぎる。
そもそもなぜ、市長という立場にありながら、相談場所をラブホテルにする必要があったのか。役所内のしかるべきスペースでは難しいのか。この点について清水氏は次のように見解を述べた。
「当たり前ですが、市長室に職員のX氏を呼んで相談すればいいだけのことです。
通常、市長室というものは、市長がそこで執務する部屋ですが、その構造としては、外部の人が来た場合、まず秘書課の窓口に行き、そこを通ると次は『市長応接室』というものがあり、さらにその奥に市長室があります。私はいろんな市役所の市長室に行きましたが、全てこういう構造になっています。
通常の来客は市長応接室で対応しますが、市議会議員や自治会長など、重要な客は市長室に招き入れて、そこで対応します。
X氏を呼ぶこと自体を見られたくないという考えなのかもしれませんが、幹部職員が頻繁に市長室に入って内密の相談をすることはなんら疑念を持たれることではありません」
それでも、どこで誰が何をするかわからない不安はあるかもしれない。清水氏自身、現役時に女性とのあらぬ噂を怪文書で流された経験がある。たとえば対立陣営にすれば、どんな手を使ってでも、市長の足を引っ張ってやろうとしてもなんら不思議はない。
そこで清水氏は、先輩市長の助言を受け入れ、異性の来訪者があったときは市長応接室で会い、さらに市長応接室と秘書課の間のドアは常に開放し、いつでも秘書課から見られる状態にしていたという。
私費でホテル代を支払った理由は?
こうした経験もあるからこそ、小川市長の行動には厳しい視線を送る。「小川市長は別の男性B氏ともバーの個室で会っていたといいます。どう考えても脇が甘すぎます。ラブホテルというのはカップルが“愛し合う”という特定の目的のためにある場所です。
小川市長がX氏に好意を持っていないとすると、わざわざ人に見られるリスクのあるラブホテルに行かず、市長室で密談するほうがよほど合理的ですからね」
そのホテル代が全て小川市長の自費で、移動には公用車を使っていた点についても清水氏は冷ややかに指摘した。
「さすがにラブホテル代を市の公費で払ったらまずいでしょうから、それは私費になるのだと思います。
公用車については鎌ケ谷市の場合、運用基準としてプライベートの行事であっても、勤務の後、市役所から行く時は片道だけ公用車を使っていいルールにしてありました。仕事をしに市役所に来ているわけですから、その帰路は公用車で送るという考え方です。
ただ、プライベートの行事といっても、それは常識の範囲内であるべきです。たとえば私の場合は個人的な支援者との会合に出るとか、個人的な趣味の集まりに行くとか、そういう時は片道だけ公用車で送ってもらっていました。
ラブホテルに公用車で行くということや、ラブホテルに行くためにX氏と待ち合わせている場所まで公用車で行くとなると、それは常識を逸脱しているので、批判されるべき行為だと思います」
非常時のラブホテル密会は市長として大きな失態
報道によれば、小川市長は群馬県内に「記録的短時間大雨情報」が発令されていた9月10日にもラブホテルに行っていたという。この点についても、清水氏は厳しい言葉を投げかける。「基本的に記録的短時間大雨情報が出ている時は、私の場合、市役所に待機するか、あるいは市役所から歩いて2分のところにある自宅ですぐ登庁できるように待機していました。
記録的短時間大雨情報が出ているという状況下で連絡のつきにくいラブホテルにいたことは大きな失態だと思います。
もしかすると、災害警戒本部の本部長は危機管理監だから市長は市役所にいなくていいという考え方なのかもしれませんが、災害警戒本部は雨が少し強くなっただけで容易に災害対策本部に格上げされます。その場合の本部長は市長が務めますので、やはりラブホテルに行っていてはまずいと思います」
2024年2月、市長選で自公推薦の現職を破り、前橋市初の女性、しかも県外出身者として、新風を吹かせることが期待された小川市長。今回の騒動では、自らに逆風を吹きつけさせることとなってしまった。
小川市長は今後どうすべきなのか…
もはや辞任もやむなしなのか…。「世論の厳しい批判は避けられないでしょうから、それを乗り越えてまで市長職を続けることは、田久保市長のようなメンタルを持っていない限り、小川市長には難しいかもしれません。
ただ1点、私が常々思っているのは、不倫というのは世間から見て許されないことではありますが、一方で世の中にはさまざまな夫婦のカタチもあります。
あくまでも仮定の話ですが、もしもX氏の夫婦が、たとえばオープンマリッジのような主義をとっているとすれば、小川市長自身は独身ですから、不倫として激しくバッシングされる状況ではないような気もします」
田久保市長の経歴詐称、沖縄県南城市では古謝景春市長のセクハラ問題、大阪府岸和田市でも永野耕平前市長が官製談合防止法違反などの罪で起訴されるなど、この1か月だけでも市長がらみの複数の不祥事が明るみになっている。
「確かに市長の問題行動は多いような気がします。市長が一般人よりエネルギッシュであることは否定できないと思います。それが市長としての活動の原動力になっている側面もあるでしょう。
ただ、欲求を満たすときはその方法は熟慮し、世間の批判を受けないような形をとるのが長としての当然の責務かと思います」(清水氏)
<清水聖士(しみず・きよし)> 1960年、広島県生まれ。麗澤大学客員教授。早稲田大学卒業後、伊藤忠商事、米ウォートンスクールMBAを経て、外務省へ。2002年、前市長逮捕により行われた鎌ケ谷市長選挙に選挙権もないままインドから落下傘候補として出馬。763票差という大激戦を制し、市長に就任。以来、5期19年にわたって同市市長、千葉県市長会会長も務める。2021年、任期途中で市長を辞し、衆院選に出馬するものの…。