11月7日には、国・厚労省が最高裁判決後に立ち上げた有識者で構成する専門委員会の第8回会合が厚労省で開かれた。
厚労省の方針は「市民感情からもかけ離れている」
「生活保護の全額補償見送りで調整」――。第8回専門委員会の開催前日(11月6日)、共同通信が速報を全国に配信した。
内容は、最高裁に「違法」とされた生活保護基準引き下げをめぐり、厚労省が過去分の支給を全額ではなく一部にとどめる方向で調整に入った、というものだった。
これに対し、裁判の原告・支援者らは同委員会の開催に先立ち厚労省前で抗議行動を実施。国の方針・姿勢を非難する声が相次いだ。
支援団体「引き下げアカン!大阪の会」の雨田信幸事務局長は、「(一部にとどめる)方針が本当だとしたら、いつ、どこで、誰と、どんな風に決めたのか。その過程について全て明らかにしていただきたい」と訴えた。
また「先日、大阪で宣伝活動を行ったが、若い人から、『最高裁で判決が出たのに採用されないのはどう考えてもおかしいよね』という声も聞いた。国が進めようとしている方針は市民感情からもかけ離れている。誰も認めない」とも強調した。
「いのちのとりで裁判全国アクション」事務局長を務める小久保哲郎弁護士は、「専門委員会の審議が終わる前に、厚生労働省が方針を決め調整している。専門委員会を隠れ蓑にし、厚生労働省がその主導の下に全てを進めているのではないか」と疑問を投げかけた。
最高裁判決後、独自に立ち上げられた専門委員会
生活保護費引き下げのきっかけは、2012年末の衆院選にさかのぼる。自民党は、当時、生活保護バッシングが沸き起こっていたことを受け、「生活保護費10%削減」を公約に掲げた。
厚労省は、衆院選翌年の2013年から2015年にかけて合わせて3度、生活保護のうちの食費などに該当する「生活扶助費」を平均6.5%引き下げた。
これに対し、受給者約1000人と支援する弁護士は、引き下げが「生存権」を定めた憲法25条に基づく生活保護法3条、同8条2項に違反していることなどを訴え、全国29地裁で提訴した。
10年にわたる裁判の末、最高裁第三小法廷(宇賀克也裁判長)は今年6月、上告されていた愛知と大阪の二つの訴訟について、原告勝訴の判決を言い渡した。
国が基準引き下げの根拠とした「デフレ調整(※)」については、第三小法廷の5人の裁判官が一致して「違法」と“断罪”した。
※厚労省は2008~11年に物価が「4.78%」下落し、その分可処分所得が増えたとして基準を引き下げた。しかし、通常とは異なる計算式が用いられるなど、下落率が大きくなるよう算出されていた。
しかし、最高裁の判決にもかかわらず、厚労省は8月、原告らへの謝罪なしに同省の下に行政法などの有識者でつくる専門委員会(委員長・岩村正彦東大名誉教授以下9人)を独自に立ち上げた。
原告が求めている引き下げ前の基準額に戻しての遡及支給では、対象者が生活保護費の全受給者(約200万人)におよぶため、支給総額は4000億円を超えるとも試算されている。
引き下げの影響は2013年から現在まで、全受給者に及ぶ
8回目の開催となった専門委員会。「いのちのとりで裁判全国アクション」の弁護士らは、事前に「意見書」を提出し、専門委員会開催に先立って厚労省で開いた会見でその趣旨を説明した。
この中で、「厚労省の本音は、『面倒な計算を避けたい』『被害回復額を値切りたい』というものかもしれないが、そのような勝手な理由で被害回復を免れることなど到底許されない」と主張。
「平成25年(2013年)以降の基準引き下げは、現在に至るまで影響を与えている」としたうえで、「確定判決を得た原告とそれ以外の生活保護受給者を区別すべきではない」と被害救済の範囲について言及。
「紛争の1回的解決(※)の要請は原告以外にも及ぶ」とし、受給者全員を遡及支給の対象とするよう改めて求めた。
※紛争をなるべく1回の手続きで解決しようという考え方
高市首相「深く反省し、おわびしたい」
原告・弁護士らによる会見の最中、並行するように同日、国会で開かれていた衆院予算委員会で、高市早苗首相が基準引き下げについて、立憲民主党議員の質問に答えるかたちで「深く反省し、おわびしたい」と述べた。最高裁判決後、行政府の長の初めての謝罪だが、原告・弁護士らは納得していない。専門委員会が遡及支給額の減額を“模索”していると考えられるためだ。
特に、裁判で違法性が認められた「デフレ調整」に代わり、別の消費水準を基に、引き下げの根拠を示そうと議論していることには、「到底容認できない」(小久保弁護士)と憤る。
さらに、専門委員会自体への根強い“不信感”も語られた。
富山弁護団の西山貞義弁護士は、「敗訴当事者(厚労省)が専門委員会をコントロールしているように見える。果たしてそれで公平公正な判断ができるのか。原告の意見を丁寧に聞き合意形成をするという誠意が全く感じられない」と述べた。
原告側と厚労省の見解が平行線をたどる中、国は、年内にも意見の取りまとめを進める見通しだ。
■榎園 哲哉
1965年鹿児島県鹿児島市生まれ。私立大学を中退後、中央大学法学部通信教育課程を6年かけ卒業。

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