「自分を全否定された感覚だった」山本モナ49歳、3度目の挑戦で司法試験合格 深夜の猛勉強・3児の育児を両立…“難関突破”の信念
きらびやかなメディアの世界から、実直な法曹の世界へ。フリーアナウンサーの山本モナさん(49)がこのほど、3度目の挑戦で難関の司法試験に合格した。

法曹を目指したきっかけ、家事と育児を両立させながら取り組んだ受験勉強、目指していく弁護士として取り組みたいテーマ…。
3月からの司法修習を前に、新たな“自分”を切り開いていく山本さんの言葉を伝える。(ライター・榎園哲哉)

「私自身はどう人生を送っていくのか」

フリーアナウンサーの仕事が一段落し、また3人目の子供の出産が終わった後、山本さんには自分の人生を見つめ直す時間があった。
起業家の夫は、会社をどんどん大きくし、キラキラと輝いて仕事をしている。
長女(13)、長男(11)、次女(6)の3人の子供も、子育ての手から独立しつつある。
「私自身はこの先、どういうふうに人生を送っていくのかな」という漠然とした思いが、「何か始めよう」との決意に変わった。
「子供がいるので、もう一度組織に入って何かをする、という選択肢は取りづらく、子供がいながらも自分のペースで仕事ができる、ということを考えました」
そんなとき、弁護士の友人から「(弁護士という職業は)子供がいても割とやりやすい」と聞いた。
親戚に弁護士がいたこともあり、「弁護士という仕事が何となく心に引っかかっていて、(司法試験に)チャレンジをしてみよう、と思いました」という。
一念発起した山本さんがまず考えたのは、「どういう方法で勉強しようか」だ。
そして、法曹に多くの人材を輩出している伊藤塾(本部・東京都渋谷区)で、2020年の年明けからオンライン受講を始めた。
その後、早稲田大学大学院法務研究科(ロースクール、東京都新宿区)を受験し、同科へ進学した。

夫が「何も言わないこと」が最大のサポート

早稲田大学ロースクールには2年間在籍したが、時間を捻出し、授業を受け続けることがとにかく大変だったと山本さんは語る。
出席要件が厳しく、週4日の授業は休むことができない。
1年次から2年次へ進級するためには、必修科目(民法各科目など全13科目)を一つも落とせない。

「予習、復習の時間が十分取れず、最低限の準備しかできない」という中で、勉強を続けた。
日々の家事と3人の子供を育てながらの受験勉強は、たやすくはなかった。
「最初は両立させようと思って頑張っていたけど、全部を完璧にこなすのは難しい、と思い、優先順位を付けるようにしました」
今やらなくてもいいことはやらない、というように決め、掃除などは後回しにすることも。「部屋がちらかりっぱなしになっていました(笑)」
子供が寝静まった夜10時ごろから深夜1時位までの2~3時間を勉強の時間に充てた。
夫からはアドバイスや手伝いはなかったが、それが無言の励ましにもなった。
「一番のサポートは、何も言わないことでした」

不合格で自身が否定されたような挫折感も…

早稲田大学ロースクール在学中の2023年に不合格。さらに、卒業後の2024年も不合格となったときは挫折を感じた。
「いろいろなことを犠牲にし、あれだけ全力でやったのにだめだった。客観的には試験に落ちただけなのですが、私自身の人間を否定されたようにも感じました。一生、受からないのではないか、とも思いました」
しかし、挑戦をやめるという選択肢はなかった。受験回数制限の5回までは、必ず受けると決めていた。「悔しい。やめるのか。
いや、やるしかない」と、山本さんは自らを奮い立たせ、前を見た。
そして、3度目の挑戦となった昨年の司法試験。合格を伝える法務省ホームページで11月12日、自分の受験番号を確認したときは、やり遂げたという達成感よりも「ほっとした。よかったぁ」という思いが強かった。
子供たちは、「よかったねぇ」と口々にねぎらってくれた。
司法研修所(埼玉県和光市)および全国の裁判所・弁護士会・検察庁で行われる司法修習は、3月19日から始まる。山本さんは現在、約1年間にわたる司法修習に向けた準備を進めている。
自身と同じように、3人の子供を持ち、社会人を経て法曹の世界に入った女性弁護士を目標に掲げる。「そういう、しなやかな方になりたい」
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山本さんの司法修習は3月から始まる(東京都内/榎園哲哉)

「信頼と安心感を与えられる弁護士に」

山本さんが弁護士として取り組みたいテーマ・分野は、著作権法であるという。
アナウンサーとしてテレビを中心にメディアで活動してきた実績も踏まえ、特に、社会的な課題ともなっているAI(人工知能)と著作権の問題に取り組んでいくつもりだ。
文化庁の「文化審議会著作分科会」は2024年3月、「AIと著作権についての基本的な考え方」で、「AI生成物(AIが生成したコンテンツ)が『著作物』に当たるか」などについて見解を示している。
著名作家・芸術家の作品と見まがうような作品も作られかねない。

法曹の世界でもAI生成物については「規制した方がいい」という意見と「規制すべきではない」という意見で二分されているようだ。
そうした状況について、「技術はどんどん進歩していく。法律が規制し、足を引っ張るべきではない。うまい権利の保護のあり方を考えていきたい」と山本さんは語る。
AIの可能性は近年、次第に広がりつつある。
「たとえば、AIがニュースを読めばアナウンサーはいらない、賢い法律の基本書が入ったAIがあれば、法律相談はいらない、弁護士はいらない、ということにもなり得ます」
「人として何ができるのか。それは相手の話を聞くことや、この人だったら話をしたい、と思ってもらうこと。人としての泥臭い部分、原点に返った部分がAIに勝てる部分。そこは大事にしたい。人としての信頼、安心感を得てもらえるような弁護士になりたい」
AIと法律、AIと人。難しい課題にも前を見据えて進んでいく。フリーアナウンサーから法曹へ転身する自らの信念が後押ししている。

「やればできる」と、山本さんは意気込みを示した。
■榎園哲哉
1965年鹿児島県鹿児島市生まれ。私立大学を中退後、中央大学法学部通信教育課程を6年かけ卒業。東京タイムズ社、鹿児島新報社東京支社などでの勤務を経てフリーランスの編集記者・ライターとして独立。防衛ホーム新聞社(自衛隊専門紙発行)などで執筆、武道経験を生かし士道をテーマにした著書刊行も進めている。


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