衆院選主要6党が「生活保護」アンケートに回答…“保護基準”引き下げ「違法」の最高裁判決後、“国の対応”への評価は?
昨年6月、最高裁は、政府が2013~2015年に行った生活保護基準の引き下げについて「違法」との判決を行った。しかし、国・厚労省は、判決で取り消された減額分を受給者らに全額補償するのではなく、独自の計算で事実上“再減額”した支給額を算出。
全受給世帯へ一律10万円程度を給付する一方、裁判の原告にのみ別途10万円程度を上乗せする策を打ち出し、2025年度補正予算に計上した。
これに反発する原告・弁護士らは、「第51回衆議院選挙」(1月27日公示、2月8日投開票)に際し主要9党にアンケートを打診。国の対応への考えを問うた。
6党から届いた回答の全文を伝える。(ライター・榎園哲哉)

厚労省独自の「追加給付」に法曹界から反発も

国・厚労省は、2013~2015年の間、3度にわたって生活保護費のうち食費などに該当する「生活扶助費」を平均6.5%引き下げ、これに基づき各自治体が「保護変更決定処分」を行った。それに対し最高裁は昨年6月、国が引き下げの根拠としていた物価変動率の計算方法や手続きについて「厚労相の判断に裁量権の逸脱または濫用があった」として、保護変更決定処分を取り消す判決を下した。
原告らは、引き下げを「違法」とした最高裁判決に則って、引き下げ前の基準に遡及して、全額を全受給世帯に支給(補償)することを国・厚労省に求めた。ところが、厚労省は独自に算出した「追加給付」等の支給を行う構えだ。
これに対して、法曹界などから「法の支配の原理に抵触する」との声明も出されている。

共産、れいわ、社民と自民などで回答割れる

そんな中、原告と支援する弁護士らでつくる「いのちのとりでアクション」は1月23日、自由民主党、中道改革連合、国民民主党、日本維新の会、参政党、日本共産党、れいわ新選組、社会民主党、チームみらいの9党に、国の対応の是非についてアンケートを打診。26日の回答期限までに維新、参政、みらいを除く6党から回答が届いた(自民は28日に追加回答あり)。
質問数は全2問。回答全文は次の通り(記載順は回答の到着順)。
《回答内容概略》
○=いのちのとりでアクションと同意見、×=反対意見、△=その他
衆院選主要6党が「生活保護」アンケートに回答…“保護基準”引...の画像はこちら >>

いのちのとりで裁判全国アクション公式サイトより

国の対応策への各党の評価

《質問1》
私たち(いのちのとりでアクション)は、引き下げ前基準との差額保護費全額の補償を求めてきましたが、国は、①判決で違法とされなかった「ゆがみ調整」を維持し、②判決で違法とされた「デフレ調整(-4.78%)」に代えて別の理由(低所得世帯の消費との比較)での再減額(-2.49%)を行う一方、③原告にだけ②の減額分につき「特別給付金(贈与金)」で穴埋めするという対応策を示しています。この対応策について、どのように評価されるか、また、その理由についてお答えください。

①国の対応策を支持する
②国の対応策は撤回されるべきである
③その他
【国民民主党】
(回答)③
(理由)2013年から2015年の生活保護費の引き上げを違法とした最高裁判決を巡り、高市首相が「違法と判断されたことについては深く反省し、おわびを申し上げます」と述べましたが、政府として最高裁判決を真摯(しんし)に受け止めて対応することが必要です。

さらに、判断の過程および手続きに過誤・欠落があったと判示されたことからも、今後の改定においては手続き面において特に留意して行うべきです。
【日本共産党】
(回答)②
(理由)最高裁の統一判断は、厚生労働省が用いた指標や手続きに過誤・欠落があったことを違法と認定し、引き下げ処分そのものの取り消しを言い渡したものです。

ところが、政府・厚労省は、判決を受けた「対応策」として、「ゆがみ調整」を維持して被害の全額補償を拒んだうえに、「再減額」の名で補償額をさらに値切り、原告と原告以外の被害者の扱いに格差をつけるなど、幾重にも不当かつ厚顔無恥な措置をとりました。まさに、敗訴した国による「紛争の蒸し返し」です。

日本共産党は、政府に対し、最高裁の判断に従って、原告たちへの謝罪と被害の全額補償を行うことを求めています。「再減額」決定を撤回し、すべての被害者に「ゆがみ調整」の分も含めた全面的な被害回復を行うべきです。原告を含む当事者参加の検証機関をつくり、違法行為が行われた経緯・理由の徹底検証と、再発防止策をとることも必要です。
【自由民主党】
(回答)①
(理由)今般の対応策は、厚生労働省の専門委員会の報告書等を踏まえ決定したものと承知しています。追加給付の対象となる方に丁寧に説明し、早期に支給できるよう取り組んでいくことが重要であると考えます。
【れいわ新選組】
(回答)②
(理由)国は「デフレ調整」について専門家に再検討させて、改めて低所得者の消費と比較した結果、2.49%の再減額を含む対応策を公表しました。これは、判決の趣旨を軽視し、計算方法の問題にすり替えて減額ありきの方針を押し切ろうとするものであり、容認できません。
さらに、減額された保護費の補償について、再減額の2.49%については、原告のみに「特別給付金(贈与金)」として補填するという他の生活保護利用者との分断を図っています。

れいわ新選組は、2013年からの不当な生活扶助基準引き下げで長年にわたり、生活保護利用者の生活と尊厳を傷つけてきたことに対して、直接面談し謝罪する機会をもうけること、当時の生活保護利用者全員に対して、引き下げ額の全額補償を要求しています。
【社会民主党】
(回答)②
(理由)社民党は、物価高騰や賃金停滞が続く中で、国民の生活の立て直しを最重要課題に掲げています。消費税率ゼロによる強力な物価高対策や、社会保障の拡充、最低賃金の引き上げなどを通じて、暮らしの基盤を強化することを目指しています。

こうした立場からすれば、生活保護基準の引き下げや実質的な再減額は、社会保障制度の役割である「健康で文化的な最低限度の生活」の保障を損なうものです。基準が引き下げられれば、社民党が掲げる政策の効果を打ち消し、低所得者の生活保障や生活の再建に逆行することになります。

生活保護基準の引き下げに対して最高裁が違法判決を下したことは、基準引き下げが制度本来の趣旨に反していたことを示しています。したがって、事実上の再減額を含む現行の対応は撤回されるべきであり、基準の再検討と是正が必要です。

また、原告にのみ特別給付金を支給し、他の受給者との間に差を生じさせる対応は、制度の公平性や普遍性という社会保障の基本原則に反します。社民党が掲げる「利用しやすい制度の構築」の観点からも、すべての生活保護利用者に対する公平な対応が求められます。

生活保護基準は、「健康で文化的な最低限度の生活」を具体化する制度の中核です。その引き下げは単なる財政措置ではなく、憲法25条に関わる重大な人権問題です。
違法とされた引き下げによって奪われた分については、全受給者に対して差額を含めた補償を行うことこそが、立憲主義に立脚した国家の責務です。

以上から社民党は、デフレ調整に代わる再減額の維持や、原告に限った特別給付金といった措置ではなく、生活保護基準の引き下げ分を含めた実質的な補償と基準の適正化を行うべきであると考えます。それによって、誰もが安心して暮らせる社会保障の基盤を再構築することが可能になると考えます。
【中道改革連合】
(回答)③
(理由)2025年6月27日の最高裁判決は、デフレ調整部分に判断過程・手続き上の過誤があったとして違法と判断したものであり、政府は専門委員会の審議を経て新たな対応策を取りまとめました。

生活保護法第8条第2項を踏まえてゆがみ調整を維持すること、一般低所得世帯の消費水準との均衡を図る観点から、客観的データに基づく再調整(▲2.49%)を行うことは合理性があると考えられていますが、重大な問題があるとのご指摘を頂いています。

最高裁判決によって国家賠償請求は認められなかったものの、原告の方々については処分取り消しの効果を尊重し、迅速かつ適切や権利回復を図るため、減額分を特別給付金により全額補填することとされました。訴訟継続によるご負担や経緯を踏まえ原告の方への特別な配慮と迅速な対応をすることが重要である一方、原告と原告以外の被保護者の間に分断を生むことのない制度設計も不可欠です。

物価高での生活扶助費「特例加算」の評価

《質問2》
低所得世帯の消費に占める割合の高い食費・光熱費を中心とする物価高騰が続く中、厚労省は根拠なく1人1500円の特例加算をすることにとどまっています(据え置き世帯もあり)。私たちは、物価高に見合う大幅な生活扶助基準の引き上げが必要と考えますが、いかがお考えでしょうか。
①厚労省の対応策に問題はない
②大幅な生活扶助基準の引き上げが必要である
③その他
【国民民主党】
(回答)③
(理由)生活コストを安くするために、ガス、水道、灯油、重油、航空機燃料等を通年値下げするとともに、電気代を値下げ(再エネ賦課金=2万円程度/年=を廃止)します。

また、貧困が命に関わる危険な状態を招く事例も少なくありません。生活保護受給資格の要件を分かりやすく提示し、要件を満たした場合は適切に受給資格を付与するとともに、受給資格があるにもかかわらず、給付を受けない事態が放置されないように対応します。
【日本共産党】
(回答)②
(理由)ご指摘のとおり、政府が「物価高騰対策」としている生活保護基準の特別加算は、上乗せ額が1500円と少なく、据え置き世帯もあるなど、まともな対策とはなっておらず、食費や光熱費の急騰による保護世帯の窮乏は深刻です。
保護を利用するすべての世帯に、物価高騰に見あう水準の保護基準引き上げを行うべきです。

生活保護基準をめぐっては、最高裁により断罪された削減以外にも、生活扶助費、期末一時扶助、住宅扶助、各種加算などの引き下げが繰り返されてきました。それらの削減分を全面的に復元し、憲法にうたわれている生存権保障にふさわしく充実させていくことが必要と考えます。
【自由民主党】
(回答)③
(理由)生活保護が、真に必要な人に行き渡るよう取り組みを強化するとともに、制度に対する国民の信頼と安心を確保し、納税者の理解の得られる公正な制度にします。

生活困窮者の自立を促進するため、支援につながっていない生活困窮者を把握し、世帯全体への支援につなげる相談支援体制の整備を進めます。そのため、住まいに係る相談機能等の充実による居住支援の強化、就労準備支援事業・家計改善支援事業の全国的な実施の推進、こどもの学習・生活支援等に着実に取り組みます。

(理由=追加回答)生活扶助基準については、一般低所得世帯の消費実態や社会経済情勢等を総合的に勘案し、令和8年10月から1年間、現在1500円の特例加算を月額1人あたり2500円に1000円引き上げることとしたものと承知しています。
【れいわ新選組】
(回答)②
(理由)現在の物価高に対して1500円の加算ではとても追いつきません。当然生活扶助基準の大幅引き上げが必要です。

それと共に、そもそも憲法で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」とは具体的にどういった暮らしなのか。社保審生活保護基準部会のように研究者だけではなく、当事者を交えた検討会を設置し、生活保護利用者の権利や当たり前の暮らしが守られる生活保護基準を創設する必要があると考えます。
【社会民主党】
(回答)②
(理由)社民党は、長引く物価高騰と賃金の伸び悩みのもとで、国民生活の立て直しを最重要課題として掲げています。
消費税率ゼロによる物価高対策や、最低賃金の引き上げ、社会保障の拡充によって、暮らしを下支えする政策を打ち出しています。

こうした立場からすれば、低所得世帯の消費に占める割合がとりわけ高い食費や光熱費の急騰に対して、1人あたり1500円の特例加算にとどまる現在の対応は、物価上昇の実態に見あっているとは言えません。

生活保護制度は、「健康で文化的な最低限度の生活」を具体的に保障する制度であり、物価が上がれば、それに応じて生活扶助基準も引き上げられるべきものです。実質的な生活水準の切り下げを放置することは、制度の趣旨に反します。

そのため、特例加算のような一時的・限定的な措置ではなく、恒常的な基準の引き上げによって対応することこそが、受給者の生活の安定と尊厳を守る上で不可欠です。社民党は、利用しやすく、安心して暮らせる社会保障制度の実現のためにも、生活扶助基準そのものの大幅な引き上げが必要であると考えます。
【中道改革連合】
(回答)③
(理由)生活保護の生活扶助基準については、健康で文化的な最低限度の生活を保障できるよう、物価高騰を含めた社会経済情勢等の動向を踏まえ、必要な対応を検討すべきです。

原告ら追加給付等の告示後、「審査請求」検討

「いのちのとりで裁判全国アクション」事務局長を務める小久保哲郎弁護士は主要各党からの回答に対し、「1月23日にメール等で質問し、26日の締め切りという短い期間だったにもかかわらず、6党から回答をいただけました。私たちと見解が一致するのは、共産、れいわ、社民の3党でした」と語った。
また、「最高裁判決を踏まえた対応について、国は生活保護利用世帯に対する補償額を半分に値切る対応方針を示しています。私たちは再度の訴訟も視野に、集団審査請求運動に取り組む方針を決めています」としている。
■榎園哲哉
1965年鹿児島県鹿児島市生まれ。
私立大学を中退後、中央大学法学部通信教育課程を6年かけ卒業。東京タイムズ社、鹿児島新報社東京支社などでの勤務を経てフリーランスの編集記者・ライターとして独立。防衛ホーム新聞社(自衛隊専門紙発行)などで執筆、武道経験を生かし士道をテーマにした著書刊行も進めている。


編集部おすすめ