中央省庁や国の地方の出先機関等で働く国家公務員が週休等を活用して行える「自営兼業」の制度が改定され、4月1日から施行される。
民間企業で兼業の解禁が進んでいる一方、国家公務員の兼業は、不動産等賃貸、太陽光電気販売、農業等の家業継承の3事業に限り認められてきた。
なお、兼業とは継続的・定期的に行う業務をさし、講師を1回だけ務め謝礼をもらうなど、単発で行うものは含まれない。
新たな制度では、特技や趣味を生かしたハンドメイド品の販売やスポーツ教室の運営なども兼業として認められる。制度見直しの方向性や意義を人事院担当者らに取材した。(ライター・榎園哲哉)

「兼業を行いたい」3割超える職員が希望

中央省庁等で働く国家公務員は、総数約59.2万人。うち一般職(行政職など)は約29.3万人、特別職(裁判官・裁判所職員、国会議員、防衛省職員など)は約29.8万人(2025年度末時点)。
このうち、一般職の国家公務員について、週休日など職務の時間外に自営兼業を行うことを認める制度が、人事院によって見直されることになった。
人事院職員福祉局審査課の城詰卓也課長補佐によると、制度見直しの端緒の一つは職員の“声”だったという。
人事院は全国の国家公務員を対象に「兼業に関する職員アンケート」(約2000人から回答、昨年2月発表)を実施した。
その結果、現行制度下で「兼業を行ったことがある」と回答した職員は6.2%にとどまったものの、「今後兼業を行うことを希望する」と回答した職員は32.9%にのぼった。
希望する理由としては、「新しい知見やスキル・人脈を得たい」「自分の趣味や特技を活かしたい」が上位となった。
こうしたアンケート調査の結果も受け人事院は昨年12月、一般職国家公務員を対象とした「自営兼業制度の見直し」を発表し、今年4月からの施行を決めた。

インターネット動画配信事業も認められる?

新たな制度では、現行の3事業に加え、「職員の有する知識・技能をいかした事業」「社会貢献に資する事業」が加わることになった。
職員の有する知識・技能をいかした事業は「ハンドメイド品の販売」や「スポーツや芸術の教室」等の事業、社会貢献に資する事業は「地域振興イベントの主催」や「高齢者対象の買物代行」等の事業がイメージされている。
人事院では新たな事業等への疑問に答えるため、HPに「自営兼業制度の見直しに関するQ&A」(https://www.jinji.go.jp/content/000013460.pdf)も公開している。

これによれば、インターネット上のブログ投稿や動画配信で広告収入を得る事業も認められる可能性があり、幅広い事業が制度の対象になりそうだ。
ただし、事業の承認判断は各省庁に委ねられており、人事院の城詰課長補佐も「どういう事業を対象にできるか、どのくらいまで承認できるか、(省庁の)事例を積み上げながら見極めていきたい。趣味や特技を生かした事業、社会貢献につながるような要素を持った事業は、承認してあげられるように知恵をしぼりたい」と話す。

これまではどのような兼業が認められてきたのか

これまで、こうした技能の活用はどのように行われてきたのか。防衛省・自衛隊を例に見てみよう。
特別職国家公務員である自衛隊員の兼業は、一般職国家公務員を対象とした人事院の「承認基準」を今般の改定含め、基本的には準用することとしつつ、防衛省独自の「承認基準」を設けており、一つの例として、防衛医科大学校や自衛隊病院(全国に10病院設置)等に勤務する医官(医師)が、公的医療機関や救急診療所、離島やへき地に所在している医療機関等で、非常勤医師としての兼業を認めているケースが挙げられる。
また、自衛隊には剣道をはじめとする武道の有段者も多く、兼業が承認された際は、民間の武道教室などで指導している例もある。

「モチベーション向上させ、本業に好影響与える」

新たに承認される事業の件数がどこまで増えるかは、まだ未知数だ。ただ、現行制度でも不動産等賃貸、太陽光電気販売、農業等の家業継承だけで年間約300件が承認されており、今後はそれを上回る規模になる可能性がある。
一方で、事業を行うにあたっては留意すべき点も多い。
まず、人事院の承認基準をクリアした上で、各省庁で承認の判断を得る必要がある。人事院の基準は、「職務専念義務」「公務の公正な執行」「国民の公務への信頼の確保」を大きな柱としている。
事業計画書、承認申請書の提出も必須だ。
仮に承認を得ずに自営兼業を行った場合、国家公務員法103条に違反し、懲戒処分の対象にもなり得る。これは、先ほど紹介した特別職国家公務員である自衛隊員も同様であり、必要な申請をせずに太陽光発電による電気を販売し、処分された例もある。
今回の制度見直しは、留意点を踏まえて行えば、職員の働きがいや働きやすさを高める可能性があると考えられる。
人事院の城詰課長補佐は、「自己実現や社会課題の解決に資するような自営兼業を認めることは、職員のモチベーションの向上につながり、本業にも好影響を与え得る」と語っている。
■榎園哲哉
1965年鹿児島県鹿児島市生まれ。私立大学を中退後、中央大学法学部通信教育課程を6年かけ卒業。東京タイムズ社、鹿児島新報社東京支社などでの勤務を経てフリーランスの編集記者・ライターとして独立。防衛ホーム新聞社(自衛隊専門紙発行)などで執筆、武道経験を生かし士道をテーマにした著書刊行も進めている。


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