しかし、国が独自の再計算で算出した給付額は、引き下げ前の基準に基づいた全額の半分ほどにとどまっている。支給額を「値切った」形となるこの対応を不服として、原告や受給者らは全国の自治体で一斉に「審査請求(不服申し立て)」を開始。4月2日には、都内で集会を開き、「審査請求」後の再提訴も視野に入れていることを示した。(ライター・榎園哲哉)
司法軽視か? 引き下げ前の水準に回復せず
そもそも「いのちのとりで裁判」は、約13年前の政治状況に端を発する。2012年末の衆院選で自民党は、当時の生活保護バッシングを背景に、「保護費10%削減」を公約に掲げ政権に復帰。これを受け厚労省は2013年から15年にかけ、3度にわたって生活保護費のうち食費などに当たる「生活扶助費」を平均6.5%引き下げた。
この引き下げに対し、全国の受給者およそ1000人と支援する弁護士らは、「生存権を定めた憲法25条、同条に基づく生活保護法(8条等)に反する」として、2014年2月以降、全国29地裁で処分取り消しを求める訴訟を提起した。
当時も提訴の前提として、今回と同様の「審査請求」運動が行われた経緯がある。
そして昨年6月27日、最高裁第三小法廷は愛知と大阪の訴訟で、国の引き下げ処分(保護変更決定処分)を取り消す「原告勝訴」の判決を下した。
これにより、2013年からの減額は取り消され、削られた全額が遡及支給されると見込まれた。ところが、国は独自の「再計算」に基づき改めて減額した額を算出。支給額は当初の想定の約半分にとどまることとなった。
当初、国が引き下げの根拠としていた「デフレ調整(-4.78%)」(※1)が最高裁によって違法と断じられたため、厚労省はこれに代わる新たな“引き下げ”の根拠として「水準調整(-2.49%)」(※2)を持ち出し、支給額の再計算を行った。
いわば、最高裁に否定された“理由”を変えて、減額という“結論”は維持した形といえる。しかし、この「水準調整」についても、最高裁の個別意見などでその妥当性がすでに否定されている。
この独自の再計算により、国は追加給付を、1世帯あたり平均約10万円と決めた。
※1 国は4.78%の物価下落がありその分を引き下げたと主張したが、計算の歪みが司法に否定された。
※2 デフレ調整ではなく、下位10%の低所得世帯の消費実態と比較し、本来は2.49%を引き下げるべきだったと主張。しかしこの比較対象自体が、保護基準を下回る生活を強いられている層であるとの批判がある。
また厚労省は、裁判で勝訴が確定した原告らについてのみ、水準調整による削減分も贈与名目の「特別給付金」(同約10万円)として支給し、一般の受給者と差を設けることを決めた。これには、原告とそれ以外の受給者を分断し、新たな差別を生むとして批判の声が集まっている。
再提訴視野に「審査請求」を開始
独自の再計算で支給額を「値切った」形となる厚労省の対応について、原告や弁護士らは「司法軽視だ」として再び裁判で争うことも視野に入れ「審査請求」を開始した。再提訴の前提となるのが、生活保護法69条に定められた「審査請求前置(ぜんち)主義」だ。市長村長が行った支給決定(処分)の取り消しを求める裁判を起こすには、まず都道府県知事に対して不服申し立て(審査請求)を行い、その裁決を経なければならない。
原告らはこの手続きをクリアにするため、2013年当時と同様、全国で1万件の達成を目指す大規模な審査請求運動を行う。今後約1年をかけ、各地の自治体で一斉に不服申し立てを展開していくという。
三権分立守るため「第2ラウンド」の戦いへ
4月2日に都内で開かれた集会は、今後全国で展開される審査請求運動の「キックオフ」として位置づけられた。「いのちのとりでアクション」事務局長の小久保哲郎弁護士は会見で、最高裁判決を受けた厚労省の対応について、以下の4つの観点から重大な問題があると改めて指摘した。①確定判決によって生じた原告らの具体的な給付請求権を侵害していること
②一連の裁判で否定された理屈を持ち出し「再減額」を強行することは、紛争の一回的解決という司法の要請に反すること
③原告とそれ以外の受給者で給付額に差を設けることは「平等原則」に違反すること
④そもそも再減額の根拠とされた水準調整の「-2.49%」という数値自体に妥当性がないこと
最高裁判決を“無視”しているかのような措置について、小久保弁護士は「司法を軽視し、判決の意義を矮小化する行政と政治が今、私たちの前に立ちはだかっている」と述べ、「改めてこの国の三権分立を守る第2ラウンドの戦いが始まる」と語った。
「生活保護法」を「生活保障法」へ
集会では、生活保護受給者が置かれた深刻な実態として、自殺者数の増加が報告された。小久保弁護士が示した数値によれば、受給者の自殺者数は2022年の86人から年を追うごとに増え、2025年は150人に達したという。その要因として、保護費削減と物価高騰が重なったことによる経済的困窮に加え、受給者に対する社会的なバッシングの影響も指摘される。
「優生保護法裁判」にも取り組んできた新里宏二弁護士は、同裁判と比べて「いのちのとりで裁判」の解決が進まない背景を「受給者に対する差別がある」と分析。自殺者数の増加に強い危機感を示した。
会場では当事者からも、切実な痛みが語られた。精神疾患等のため就労が困難な高橋史帆さん(神奈川県在住)は、ネット上の「(生活保護を受給し)生きていて申し訳なく思わないのか」といった暴言に深く傷ついた経験を語った。
また、車いす生活を送る川西浩之さん(東京都在住)も、「(自分を)必要ないと思う人も多いのではないか」と社会の視線に対する不安を吐露した。
「いのちのとりでアクション」共同代表の尾藤廣喜弁護士は、「差別なく受給できる生活保護の原理性が確立していない」と述べ、「現在の生活保護法を、生存権を確実に保障する『生活保障法』へと根本的に変えなければならない時期だ」と訴えた。
最高裁判決を受けた追加給付の手続き等については、厚労省の相談窓口(0120-179-445/平日午前9時~午後5時・フリーダイヤル)や特設サイト(https://tsuikakyufu-sodancenter.mhlw.go.jp/)にて案内が行われている。
【相談窓口】
生活の悩みや、心身の不調に関する相談は、以下の窓口でも受け付けています。
よりそいホットライン(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター)0120-279-338(24時間対応・フリーダイヤル)
いのちの電話(一般社団法人 日本いのちの電話連盟)0120-783-556(毎日午後4時~午後9時)
■榎園哲哉
1965年鹿児島県鹿児島市生まれ。私立大学を中退後、中央大学法学部通信教育課程を6年かけ卒業。東京タイムズ社、鹿児島新報社東京支社などでの勤務を経てフリーランスの編集記者・ライターとして独立。防衛ホーム新聞社(自衛隊専門紙発行)などで執筆、武道経験を生かし士道をテーマにした著書刊行も進めている。

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