歌手で俳優の美輪明宏さん(享年91)が老衰のため6月20日に亡くなったことが明らかにされた。
葬儀は近親者のみで執り行われたというが、ここ一年は、高齢のため仕事をセーブし、静養を続けていたと伝えられている。
最期は、家人に「ありがとう」と伝え、眠るように旅立っていったという。
美輪さんは、1935年、長崎県生まれ。10歳の時、長崎で被爆。その後、上京し、丸山明宏名義でシャンソン歌手としてデビュー。代表曲のひとつに「ヨイトマケの唄」(1965年)がある。その後、舞台にも出演し、三島由紀夫や寺山修司など多くの文化人とも交流を重ねた“禁断の美少年”。自身のセクシュアリティについても早くから公言し、差別や偏見に向き合った。
一方、『国分太一・美輪明宏・江原啓之のオーラの泉』(テレビ朝日)や、朝日新聞『be』の連載「悩みのるつぼ」などで、悩める人々に自身の経験やスピリチュアルな見地から“愛の伝道師”としてアドバイスを送る存在となっていた。
そんな美輪さんは「終活」も見事なものであったようだ。(ライター・中原慶一)

資産は、公私を支えた養子Aさんへ?

美輪さんは、2019年9月、体調を崩し、軽い脳梗塞と診断された。当時すでに80代半ば。報道によれば、それから仕事をセーブし、美輪さんより17歳年下の元俳優で美輪さんの養子となっていたAさんのサポートを受けながら、療養生活を続けていたようだ。スポーツ紙芸能記者がこう続ける。

「Aさんは、美輪さんの所属事務所『オフィスミワ』の社長も務めており、美輪さんにとっては、公私共に頼りになる大切な『息子』だったのです」
ならば、美輪さんの遺産は、全額、最期まで献身的に美輪さんに寄り添ったこの最愛の“息子”にキチンと渡るのか。
「美輪明宏さんの遺産総額はもちろん公表されていませんが、1999年の長者番付では納税額5563万円を記録し、課税所得は1億円台半ばに達していたと見られる“高額納税者”でした。著書『人生ノート』(パルコ出版/1998年)は50万部のベストセラー。その後も、舞台、講演、テレビ、CM、声優業で長らく活躍していましたから、資産は少なくとも、数億円単位だと推測されています」(同前)
美輪さん自身は、5人兄弟の次男で、4歳の頃に母方の実家に養子に出されていた経緯を自叙伝などで明かしている。遺産の行方について、元の兄弟が存命だったケースなども含めて、遺産相続の対応を多く手掛ける安達里美弁護士に聞いた。
「自身に配偶者がおらず、養子縁組をされたお子さんがいる場合は、そのお子さんだけが法定相続人となります。
美輪さんは、母方の実家に養子に出ていたということですが、子(養子も含む)がいる限りは、美輪さんの父母などの直系尊属は相続人になりません。兄弟姉妹も同じです。つまり、美輪さんの場合、Aさんに全額相続の権利があるということになります。
もし、遺言があれば、それが優先されます。ただし、養子には遺留分があります。たとえば、他人のXさんに全財産を渡すという遺言があった場合、養子は2分の1についてXさんに請求できます。
これが遺留分です」(安達弁護士)
では仮に、美輪さんに他に実子がいた場合や、別れた配偶者がいた場合はどうなるか。
「配偶者は離婚すると、他人になるので相続権はありません。これに対し、実子がいた場合、その子は相続人になります。そして、養子と実子で相続分に違いはありませんから、同じ割合で相続を受けることになります」(同前)
つまり、遺言がなく、美輪さんに他に子どもがいない限りは、美輪さんの遺産は、すべてAさんの元に渡ることになりそうだ。

周到な“終活”進めていたか

「美輪さんは、Aさんへの遺産相続を見越して、周到な“終活”を進めていたフシがある」と付け加えるのは前出の記者。
「美輪さんの所属事務所兼居住地の『オフィスミワ』は、都内の閑静な高級住宅地にあります。約50坪の土地に、2020年に新築された瀟洒(しょうしゃ)な2階建ての一軒家ですが、資産価値は土地だけでも1億5000万~2億円に上ると見られます。
登記では、2019年5月より、売買により、この土地の所有者はすでにAさんになっており、新築の建物もAさんの所有物となっています。それと前後して美輪さんは晩年、新宿のマンションを売却したことや、可愛がっていた後輩歌手のために建てた墓を『墓じまい』したことが、一部で報じられています。
美輪さんは生前から、自分がいなくなった後にAさんが困らないように準備を進めていたと考えていいでしょう」
というのも、大きな遺産が残っていることが多い芸能人の相続は、親族や関係者を巻き込んだトラブルに発展し、芸能マスコミの格好のネタとなることが多いからだ。さる芸能ニュースサイト関係者はこう続ける。
「最近で印象に残っているのは、みのもんたさん(2025年没・享年80)や、女優の中山美穂さん(2024年没・享年54)のケースでしょうか。
みのもんたさんの場合、生前贈与などの身辺整理をしていたようですが、『40億円以上あるみのさんの遺産をめぐって、3人の子どもたちの間に不協和音が起き、すり合わせに時間がかかっている』と報道されました。
中山さんのケースでは、前夫であるミュージシャンの辻仁成との間にできた長男が相続放棄をしたと報道され話題になりましたね」

遺産額が大きい芸能人「相続トラブル起きやすい」

前出の安達弁護士は、「確かに、みのもんたさんのように、遺産額が大きい芸能人の場合で、さらに相続人が複数いる場合などはトラブルが起きやすいと思います」と話し、次のようにアドバイスする。
「家族間の“不幸”を生まないためには、やはり『遺言』が有効ですね。自分の財産を誰に引き継がせたいか明確に記載しておくことです。また、できれば遺留分に配慮した遺言だと争いを減らせる可能性がさらに高まります。それでも遺言に載っていない財産が後に発見されたりして、揉めるケースはあるのですが…」
さらにこう付け加えた。
「それから、法律からは少し離れますが、子らに対して全員の前で自分の財産とその分け方についてハッキリと意思表示しておくのも有効だと思います。個別に話すとそれぞれが好き勝手に解釈するおそれがあるので(笑)、『全員集めて一度に』ということが大切です。
『そんなの無理!』とおっしゃるかもしれませんが、結局、いろいろ逡巡して何もしないまま亡くなると『争族』になってしまう可能性があるのですから、自分の遺産をどうしたいかについて真剣に考え、その意思表示を明確にしておくことは残された人に無駄な時間を取らせないためにも必要だと思います。もちろんその意思を示した『公正証書遺言』は作成してください」
芸能人の場合、土地や現金などの目に見える遺産に加え、残した楽曲の印税や著作権など、目に見えない権利関係の遺産が絡んでくることも多く、問題はより複雑になるようだ。
「高倉健さん、やしきたかじんさん、小林亜星さんなどなど、芸能人の遺産相続に関係するトラブルは枚挙に暇がありません。時には法廷闘争にまで発展するケースもあります」(前出の芸能ニュースサイト関係者)
誰しも、自分の死後に残された者たちが争う姿は見たくないはず。生前、人への思いやりや「愛」の大切さを説いていた美輪さんはAさんがそうしたトラブルに巻き込まれないよう、最善の策を打っていたと見てよさそうだ。

■中原慶一
某大手ニュースサイト編集者。事件、社会、芸能、街ネタなどが守備範囲。実話誌やビジネス誌を経て現職。マスコミ関係者に幅広いネットワークを持つ。


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