「回復力」や「弾性」「しなやかさ」などを意味する「レジリエンス」。時代や労働環境の変化に対応しながら企業として成長していくため、社員のレジリエンスを高めようとする動きが進んでいます。

「レジリエンスを強化することで、どのような効果が期待できるのか」「社員のレジリエンスをどう高めていくとよいのか」などを知りたい人事担当者やビジネスパーソンもいるでしょう。今回は、レジリエンスの定義やレジリエンスの高さ・低さを決める要素、社員のレジリエンスの高め方などを紹介します。

レジリエンス(resilience)とは?

「レジリエンス」とは、「回復力」や「弾性」「しなやかさ」「ストレス跳ね返し力」などを意味する言葉です。英語では、「resilience」と表記します。もともとは「物体の弾性」を表す物理学の用語でしたが、最近ではさまざまな分野・場面において使われています。

対義語は「脆弱(ぜいじゃく)性(vulnerability)」です。「レジリエンス」が「脆弱性」を上回っていると、困難な状況でも回復できるとされています。

レジリエンスとは?なぜ必要?ビジネスの場で注目される理由や測定尺度、高め方をご紹介
レジリエンス

危険因子と防御(保護)因子

レジリエンスについて理解する際に押さえておきたいのが、「危険因子」と「防御(保護)因子」です。どちらも主に医療現場で使われる言葉ですが、「危険因子」は、ある病気を引き起こす、あるいはある病気に付加的に働く因子のことを指します。一方の「防御(保護)因子」はその逆に発病リスクを減少させるものを意味します。

2つの因子とレジリエンスの関係

(参考:厚生労働省『e-ヘルスネット』)

各分野におけるレジリエンスの定義

先に述べた通り、レジリエンスは幅広い場面で使われています。ここでは各分野における、レジリエンスの定義を紹介します。

社会科学:経営、組織、心理学など

ビジネスシーンにおけるレジリエンスでは、「組織」と「社員」双方のレジリエンスに着目します。社会科学のうち、組織経営では、災害や不測の事態に対する「企業」のBCP(事業継続計画)や、ダイバーシティー&インクルージョンへの対応などを「組織レジリエンス」として定義。ビジネスパーソンが仕事に関するストレスから立ち直る「社員のレジリエンス」も、組織のレジリエンスと同じく、重要視されています。



一方、心理学では、「個人」が幼少期のトラウマや仕事における人間関係などのストレスから心理的に回復することを、レジリエンスと定義。また、教育の分野では、子どもたちに対する「レジリエンス教育」も一部行われています。看護という観点で、患者のレジリエンスを考えていくという動きもあります。

このように、社会科学の分野におけるレジリエンスの定義は多岐にわたります。社会科学の分野におけるレジリエンスの「対象者」と「ストレスとなりうる事象」の例を、表にまとめました。

「対象者」と「ストレスになりうる事象」

自然科学:環境、気候変動など

自然科学の分野では、「気候変動レジリエンス」「生態学的レジリエンス」という言葉が使われています。気候変動レジリエンスとは、地球温暖化に起因する環境変化に対するレジリエンスのことです。一方、生態学的レジリエンスは、生物多様性の復元力・弾力性をはじめとする環境の安定性を意味しています。

工学:建築、防災など

工学の分野では、災害が起きた際にしなやかに復興できる力を意味する「災害レジリエンス」という言葉が使われています。災害時には、家屋が壊れ災害廃棄物となったり、自治体の廃棄物処理が機能しなくなったりします。災害時を想定し、「空き家対策や家屋の耐震対策」や「災害時のごみの出し方の検討・周知」などを行い、被災前の状態にいち早く戻せるように備えておくのが、災害レジリエンスの考え方です。

類義語や派生語との関係・違い

類義語・派生語との関係性や違いについて、紹介します。

ストレス耐性との関係性

ストレス耐性とは、ストレスに対する抵抗力のことで、次のような要素があります。

ストレス耐性と、レジリエンスは非常に近しい意味合いを持ち、密接な関わりがあると言えるでしょう。

・感知能力:ストレスに気付くか気付かないか
・回避能力:ストレスを作りやすい性格かどうか
・根本の処理能力:ストレッサーをなくしたり、弱めたりする
・転換能力:ストレス状態に陥ったとき、そのストレスの意味を良い方向に捉え直すことができる
・経験:ストレスそのもの
・容量:ストレスをどのくらいためていられるか

(参考:厚生労働省『働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳』)

ハーディネスとの違い

ハーディネスとは、高いストレス環境下で健康を保っている人々が持っている性格特性を指します。(hardiness:Kobasa,1979)ストレスに直面した際に対応できる点は同じですが、ストレスに傷付きながらも回復できる「レジリエンス」に対して、「ハーディネス」はストレスに直面しても傷付かない特性と言えるでしょう。

ストレスコーピングとの違い

「コーピング」は「対処する」「切り抜ける」という意味を持ちます。ストレスコーピングとは、特定のストレスフルな問題や状況に対するストレス対処方法のこと。

レジリエンスが、ストレス状況下から回復していく過程や結果を指すため、レジリエンスの方がストレスコーピングよりもより広義な意味を持つ言葉と言えるでしょう。
(参考:厚生労働省『働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳』)

ネガティブ・ケイパビリティーとの違い

ネガティブ・ケイパビリティーとは、「不確実なものや未解決のものを受容する能力」や「答えのでない事態に耐える能力」のこと。詩人ジョン・キーツが使ったことで、世に知られるようになりました。ストレスに直面した際、ストレスに「対処する」のではなく、ストレスを「受容する」ことも1つの選択肢です。そのため、ネガティブ・ケイパビリティーは、「レジリエンスに通ずるもの」「最強のレジリエンス」などと呼ばれることもあります。

レジリエントとは?

レジリエント(resilient)とは、レジリエンスの形容詞で、「回復力のある」「弾力性のある」「柔軟性がある」といった意味を持ちます。「レジリエントな社会」「レジリエントな企業」といったような使い方をするのが一般的です。

レジリエンスはいつから注目されているのか?

レジリエンスが世界的に注目されるようになったのは、2013年の「世界経済フォーラム(ダボス会議)」がきっかけです。「レジリエント・ダイナミズム(強靱(きょうじん)な活力)」をメインテーマに、各国の国力がレジリエンスで評価されました。日本については、「東日本大震災からの復興」がレジリエンスとして評価されています。

その後、2015年に国連サミットで「SGDs(持続可能な開発目標)」が採択されたことにより、レジリエンスへの注目はさらに高まりました。SDGsは「17の目標」および「169のターゲット」で構成されていますが、「169のターゲット」の中に「レジリエンス」や「レジリエント」という単語が使われているためです。また、この後紹介する「時代」や「労働環境」の変化を受け、「国家」「企業」に対してのみならず、「個人」に対しても「レジリエンス」という言葉が使われるようになってきています。

なぜ、ビジネスシーンでレジリエンスが注目されているのか?

このように、さまざまな文脈で用いられている「レジリエンス」。ここでは、ビジネスシーンにおける社員のレジリエンスの向上が注目されている背景に焦点を当て、解説をしていきたいと思います。ビジネスシーンで注目を集める背景には、「VUCAの時代の到来」と「労働者のメンタルヘルス対策」があるようです。

①VUCAの時代の到来

「VUCAの時代」とは、企業や社会などを取り巻く環境が目まぐるしく変化し、将来の予測が困難な状態が続いている時代のこと。VUCAの時代の到来により、既存の価値観やビジネスモデルなどが通用しなくなってきました。

そうした中、企業に求められているのは、「いかに変化を起こしていくか」という変革への対応力です。ビジネスパーソンには、「意思決定や迅速な対応」や「状況の変化に対応する臨機応変さ」「多様性を受け入れるコミュニケーション力」「最もよい答えを導き出す問題解決力」が必要とされています。これらの力は、後ほど紹介する「レジリエンスの要素」とも合致するため、ビジネスシーンにおいて、レジリエンスが注目されているのです。
(参考:『【3分でわかる】VUCAの時代で何が変わる?取り残されないための4つのスキルとは』)

②労働者のメンタルヘルス対策

「ストレスチェック制度の創設」や「医師による面接指導の強化」といった形で「労働安全衛生法」が改正されたものの、依然として労働者のメンタルヘルス問題は解決されていません。厚生労働省が発表した『令和2年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況』によると、メンタルヘルスの不調により連続1カ月以上休職した労働者(退職した方を含む)がいると答えた事業所は、全体の「9.2%」でした。

平成30年度(2018)調査の「10.3%」より微減しているものの、全体の約1割の企業において、連続1カ月以上休職する労働者がいるという状況が続いています。また、労働者の「54.2%」が、現在の仕事や職業生活に関して強い不安やストレスを感じている事柄があると答えました。

このような結果からも、職場におけるメンタルヘルス対策が、企業にとって急務となっています。メンタルヘルス対策を考える上で重要な「ストレス耐性」や「心身の健康」は、レジリエンスと関係が深いものであるため、レジリエンスへの関心が高まっているのです。
(参考:厚生労働省『令和2年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況』)
(参考:『【よくわかる】労働安全衛生法とは?違反しないために企業は何をするべき?重要点を解説』)

レジリエンスの高さ・低さを決める要素とは?

ところで、レジリエンスの高さ・低さは、何によって決まるのでしょうか?ここではレジリエンスの高さ・低さを決める要素を紹介します。

レジリエ研究所が提唱するレジリエンスの6つの要素

レジリエンスに関する研究はさまざまな機関で行われており、レジリエンスの要素についても、研究機関によって定義が若干異なります。ここでは、日本において長年レジリエンスの研究に取り組んでいる「レジリエ研究所」が示している「レジリエンスの6つの要素」を紹介します。

レジリエンスの6つの要素

それぞれの要素について、見ていきましょう。
(参考:レジリエ研究所『レジリエンスとは』)
(参考:『【面接質問集あり】注目の「レジリエンス」とは?「ストレス跳ね返し人材」の見抜き方』)

自分の軸

自分の軸とは、「何が自分にとって大切か」という価値観のことです。自分の軸が定まっていれば、想定外のことに直面しても、情報を事実として受け取り、自分軸に基づいた判断ができます。一方、自分の軸がないと、世間の言葉や周囲の状況に過剰に影響を受けてしまうでしょう。

しなやかな思考

しなやかな思考とは、「変化に対する柔軟性」や「多様な考え方の受容」を意味します。しなやかな思考があれば、自分の考え方を尊重した上で、自分とは異なる考え方も受容し、自分自身を変化させていくことが可能です。一方、思考がしなやかでないと、他者の意見を尊重できなかったり、周囲と対立しやすくなったり、といったことになるでしょう。

対応力

対応力とは、自身や周囲の状況を理解した上での優先順位付けや問題解決のことです。対応力があれば、「今、自分にできることは何か」「そのために、何を優先するとよいか」を理解でき、問題解決につなげていくことができます。一方、対応力がないと、状況分析や優先順位付けが不十分となり、問題解決が難しくなるでしょう。

人とのつながり

人とのつながりとは、上司や同僚といった周囲の人々との関係構築を意味します。世の中には、一人ではどうしても解決できないことも少なくありません。そうした状況において特に必要とされるのが、人とのつながりです。人とのつながりがあれば、困難な状況においても互いに助け合うことができます。一方、人とのつながりを築けていないと、いざという時に助け合うことができず、結果として問題が解決できなくなってしまうでしょう。

セルフコントロール

セルフコントロールとは、感情的になり過ぎず、冷静に自分自身をコントロールすることを意味します。普段は周囲と良好な関係であったとしても、大きな変化・困難に直面すると衝突・対立が生まれることも珍しくありません。そうした状況において求められるのが、セルフコントロールです。セルフコントロールできれば、「衝突の原因は何か」「自分は何に苛立っているのか」などを冷静に俯瞰(ふかん)することができます。

一方、セルフコントロールが不十分だと、感情的な対立や人間関係の悪化につながるでしょう。

ライフスタイル

ライフスタイルとは、食事や睡眠、運動のバランスが取れている生活のことです。いくら気力があっても、体力が追い付いていないと困難は乗り切れないでしょう。そのため、これまで紹介した5つの要素を持つために必要不可欠だとされているのが、ライフスタイルです。健全なライフスタイルを送れれば、心身を健康に保つことができます。一方、ライフスタイルが乱れていると、体の不調が心の不調につながっていってしまうでしょう。

レジリエンスが高い人・低い人の特徴

上記のようにレジリエンスの高低は、6つの要素の程度に影響していることがわかりました。このことから考えられる、レジリエンスが高い人、低い人に見られる特徴について紹介します。

レジリエンスが高い人の特徴

レジリエンスが高い人には、以下のような特徴があると推察されます

レジリエンスが高い人の特徴

●考え方や発想が柔軟
●一喜一憂せず、物事に向き合える
●自分にも人にも優しく、周囲と協力関係を築きやすい
●自分自身のよい面を認識できている
●困難なことに直面しても、すぐには諦めない など

レジリエンスが低い人の特徴

反対にレジリエンスが低い人には、以下のような特徴があると言えるでしょう。

レジリエンスが低い人の特徴

●柔軟な考え方・発想が苦手
●目の前のことに、一喜一憂しがち
●自分にも人にも厳しく、問題を一人で抱え込みがち
●自分自身の悪い面に意識が向きがち
●困難なことに直面した際、諦めが早い など

レジリエンスに測定可能な尺度はある?レジリエンスのチェック方法とは?

ここまでレジリエンスの高低の要因や、レジリエンスが高い人、低い人の特徴について解説してきましたが、自分はレジリエンスが高いのか、低いのか、気になった方も多いのではないでしょうか。レジリエンスの測り方は多種多様で、全世界共通で使われている尺度はありません。ここでは、それぞれの研究者による4つの尺度について紹介します。

それぞれの尺度について、見ていきましょう。

レジリエンススケール(Resilience Scale:RS), Wagnild&Young(1993)

Wagnild&Young氏が考案したレジリエンススケールでは、「個人的コンピテンス(Personal Competence)」と「自己と人生の受容(Acceptance of Self and Life)」という2因子25項目から、レジリエンスを測定。さまざまな年代で使用でき、内的整合性や妥当性が高い尺度として知られています。
(参考:HR Portal『The Resilience Scale™ (RS™)』)

森らのレジリエンス尺度, 森 他, 2002

森 敏昭氏らが考案した森らのレジリエンス尺度では、自分自身を受け入れる力である「 I am 因子」、問題解決力である「 I can 因子」、他者との信頼関係構築力である「 I have 因子」、成長力である「 I will/do 因子」の4下位因子を基にレジリエンスを測定。診断項目は、29項目に分かれています。
(参考:学校教育実践学研究 2002年第8巻179-187頁『大学生の自己教育力とレジリエンスの関係』)

精神的回復力尺度(Adolescent Resilience Scale; ARS)小塩 他, 2002

小塩 真司氏らが考案した精神的回復力尺度では、精神的な落ち込みからの回復を促す心理的特性を意味する「精神的回復力」を測定できます。項目は、全21項目。回答全体を「精神的回復力」とすることも、「新奇性追求」「感情調整」「肯定的な未来志向」という3つの下位尺度に焦点を当てて診断することも可能です。
(参考:早稲田大学パーソナリティ心理学研究室『ARS日本語』)

二次元レジリエンス要因尺度(Bidimensional Resilience Scale; BRS)平野 他, 2010

平野 真理氏らが考案した二次元レジリエンス要因尺度は、レジリエンス要因を持って生まれた気質と関連の強い「資質的要因」と後天的に身に付けていきやすい「獲得的要因」とに分けて捉えることができる尺度です。パーソナリティーの気質と性格を分けて捉える尺度である「Temperament Character Inventory 日本語版(TCI)」を用いて、作られました。
(参考:日本パーソナリティ心理学会『尺度使用マニュアル <尺度名>「二次元レジリエンス要因尺度」』)

社員のレジリエンスを高めることによる効果

社員のレジリエンスを高めることにより、さまざまな効果が期待できます。

レジリエンスを高めることによる効果

●社員の「ストレス耐性」や「変化への適応力」「目標達成能力」が向上する。
●社員の「心身の健康」を維持しやすくなる。
●社内の「人間関係」が良好になる。
●仕事に意欲的な社員が増え、「パフォーマンスの向上」につながる。
●「離職率の低下」が期待できる。
●市場の変化や災害の発生、感染症の流行といった困難な状況にも、企業として対応しやすくなる。
●企業の長期的な成長につながる。 など

このような効果を得るためにも、全社員のレジリエンスを高めていくことが重要であると言えるでしょう。

社員のレジリエンスの高め方や鍛える方法とは?

社員のレジリエンスの高め方や鍛える方法について、紹介します。
(参考:『【面接質問集あり】注目の「レジリエンス」とは?「ストレス跳ね返し人材」の見抜き方』)

レジリエンスとは?なぜ必要?ビジネスの場で注目される理由や測定尺度、高め方をご紹介
社員のレジリエンスの高め方や鍛える方法

①応募者のレジリエンスを見抜く採用を実施する

社員のレジリエンスを高める際、まず必要となるのが一人一人の「レジリエンス」の把握です。既存の社員については先ほど紹介した尺度で、応募者については採用時の面接や適性検査で確認するのが望ましいでしょう。面接時に応募者のレジリエンスを把握するためには、質問を工夫する必要があります。レジリエンスの要素の1つである「自分の軸」について聞く場合を例に、具体的な質問例を見ていきましょう。

レジリエンスの要素の1つ「自分の軸」を把握する質問例

「強み」という言葉を質問に使うと、英語力や専門的知識といった具体的なスキルしか把握できなくなる可能性があります。代わりに、「持ち味」という言葉を使うことで、「人より深く、物事を考えられる」「どんな状況であっても、チャレンジ精神を失わない」といった抽象度の高い回答を引き出せ、自分の軸を持っているかどうかを判断しやすくなるでしょう。

応募者のレジリエンスを把握するための面接質問集は、こちらからダウンロードできます。

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『「レジリエンス(ストレス跳ね返し力)」を見抜く面接質問集』

②社員の自己効力感を高める育成を行う

もともと、人間の意識は「できたこと」よりも「できなかったこと」に向きやすいと言われています。社員のレジリエンスを高めるには、「できたこと」にも意識を向けてもらい、社員の自己効力感を向上させていく必要があります。「フィードバック」や「日々のマネジメント」において、社員一人一人の「できたこと」を直接伝えるようにしていくと良よいでしょう。そうすることで、社員の自己効力感が高まり、レジリエンスの向上が期待できます。なお、場合によっては、業務や担当する顧客などに大幅な変化が起こらないよう調整することも有効かもしれません。
(参考:『「感覚的な人事」こそが正しい―脳神経科学から見る、採用・組織定着の第一歩』)

③社員のレジリエンスが高まる環境づくりを行う

社員のレジリエンスを高めるためには、レジリエンスの要素の1つである「人とのつながり」を意識し、レジリエンスを高めやすい環境づくりをすることも重要です。「上司から部下へ」のサポートだけでなく、「同僚同士」や「先輩社員から後輩社員へ」のサポートも十分できるよう、制度やコミュニケーションツールなどを整えましょう。「心理的安全性」や「チームビルディング」を実現するための取り組みも、レジリエンスの強化につながります。新たに入社する社員に対しては、「OJT」や「メンター制度」「ランチ交流会」といったオンボーディングプランを実施するとよいでしょう。
(参考:『心理的安全性の作り方・測り方。Google流、生産性を高める方法を取り入れるには』『チームビルディングの目的と方法をおさえ、目標達成を目指す【手法例5つ紹介】』『オンボーディングとは?有効な施策や事例・導入プロセスについて解説<調査・対策資料付き>』)

ビジネスパーソンにお薦めのレジリエンスを学べる本

レジリエンスについて学びたいビジネスパーソンにお薦めの本を紹介します。

世界のエリートがIQ・学歴よりも重視! 「レジリエンス」の鍛え方』久世浩司著(実業之日本社)

レジリエンスの「定義」や「身につけるための7つの技術」について解説しています。欧州で生み出され、イギリスやフランスで研究が進んでいる「レジリエンス・トレーニング」を、日本で初めて紹介している本です。

レジリエンスの教科書 逆境をはね返す世界最強トレーニング』カレン・ライビッチ,アンドリュー・シャテー著,宇野カオリ訳(草思社)

レジリエンスを「自己発見」と「自己変革」につながる7つのスキルに分類。チャートやテストを多用しながら、レジリエンスの高め方を紹介しています。人材育成の担当者や、自己啓発意欲の高いビジネスパーソンにおすすめの一冊です。

ハーバード・ビジネス・レビュー[EIシリーズ] レジリエンス』ハーバード・ビジネス・レビュー編集部編,DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部訳(ダイヤモンド社)

ストレスフルな環境において、いかに「折れない心を持つか」「立ち直るか」「燃え尽きないためにどうすればよいか」を説いた本です。レジリエンスの「定義」や「評価・管理・強化する方法」、「リーダーのレジリエンスを高めるための戦略」などを紹介しています。

まとめ

「VUCAの時代の到来」や「労働者のメンタルヘルス対策」という時代背景を受け、レジリエンスはビジネスシーンで注目されています。社員のレジリエンスを高めることで、「心身の健康の維持」や「離職率低下」といったさまざまな効果が期待できます。「自己効力感を高める育成」や「レジリエンスが高まる環境づくり」などによって社員のレジリエンスを強化し、企業の長期的な成長につなげてみてはいかがでしょうか。

(制作協力/株式会社はたらクリエイト、編集/ds JOURNAL編集部)

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