採用プロセスの中で、応募者に自社の採用意思を示すための書類を「採用通知書」と呼びます。
「内定通知書とはどのような違いがあるのか」「採用通知書を交付する上で注意すべき点は何か」など、知りたい人事・採用担当者もいるのではないでしょうか。
この記事で、採用通知書と比較される書類との違いや、交付に当たり注意すべきポイントをご紹介します。すぐに使えるテンプレートもダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
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採用通知書とは
採用通知書とは、企業の採用意思を書面で示し、応募者に交付するものです。まずは、採用通知書を交付する目的や、類義語・派生語との違いを見ていきましょう。
採用通知書の目的
採用通知書を交付する目的は、企業が応募者の申し込みを承諾し、採用が決定したことを、応募者に確実に伝えるためです。
労働契約締結時における「書面による労働条件の明示」については労働基準法によって企業に義務付けられていますが、採用通知については、私法上「雇用契約は当事者の意思の合致により成立する」とされており、口頭でも労働契約は成立するため、採用通知書の交付が法律上必要とされているわけではありません。
しかし、「企業としては伝えたつもりでも、応募者には伝わっていなかった」といったトラブルを防ぐためには、書面で通知することが一般的です。また、採用通知書を発行し採用意思を伝えることで、応募者の入社意思を高める効果も期待できます。
類義語や派生語との関係・違い
採用通知書と比較されることの多い用語との違いをご説明します。
内定通知書との違い「内定通知書」とは、企業が内定の意思を示した書類のこと。「内定」とは、企業と応募者の間で雇用契約の合意がなされた状態を指します。
採用通知書との違いは、通知する内容が「内定」なのか「採用」なのかです。しかし、どのような採用プロセスを踏むのかは企業によって異なるため、「採用通知書」と「内定通知書」を区別している企業もあれば、「採用内定通知書」としている企業もあるのが実情です。
なお、政府からの要請により、2022年時点では新卒採用の内定を通知できるのは「卒業・修了年度の10月1日以降」と定められています。
(参考:内閣官房『就職・採用活動に関する要請』)
雇用契約書・労働契約書との違い「雇用契約書」と「労働契約書」は、いずれも民法や労働契約法に規定されている雇用契約・労働契約に関する事項を、それぞれ書面にしたものです。ともに、企業と従業員間における労働条件が示されています。
採用通知書が雇用(労働)契約を締結する意思を示す書類であるのに対し、雇用契約書・労働契約書は、雇用(労働)契約の内容になる労働条件をより詳細に示すための書類です。
雇用契約書・労働契約書は、採用通知書や内定通知書を送付したのちに取り交わす書類と捉えるとよいでしょう。
(参考:『【弁護士監修・雛型付】雇用契約書を簡単作成!各項目の書き方と困ったときの対処法』)
労働条件通知書との違い労働条件通知書とは、企業が労働者に交付する書類で、賃金、労働時間、契約期間や就業場所など、示すべき労働条件をまとめたもの。
労働基準法第15条第1項によって定められている「労働条件の明示義務」を果たす書類です。雇用契約書・労働契約書が企業と労働者の合意内容を示しているのに対し、労働条件通知書は法律上明示しなければならないとされている事項を労働者に明示するための書面となります。
なお、労働条件通知書は、採用通知書や雇用契約書・労働契約書と兼ねることも可能です。兼用する場合は、労働条件通知書に記載すべき項目を確実に盛り込み、労働者からの署名押印をもらい、合意内容を明らかにした形式にすることが適切と言えます。
(参考:『【記入例・雛型付】労働条件通知書とは?雇用契約書との違いや書き方をサクッと解説』)
採用証明書との違いは採用証明書とは、失業者が再就職をしたことを第三者に証明するための書類です。
失業保険の受給停止や再就職手当受給のためにハローワークに提出が必要な証明書で、書類が必要な人から依頼された際に交付します。
採用通知書を作成する際に気を付けること
採用通知書を作成する際には、どのような点に注意するとよいのでしょうか。人事・採用担当者が気になることの多いポイントをまとめました。
どんな書式がよいのか

採用通知書の様式に決まりはありません。しかし、採用の決定を通知する書類として、以下の項目を記載するのが一般的です。
①日付
②応募者の氏名
③社名
④代表取締役の氏名
⑤採用試験への応募のお礼
⑥採用決定のお知らせ
⑦提出書類の内容
⑧提出期限
⑨担当者、連絡先
印鑑(押印)は必要か
法律上の解釈では雇用契約は口頭のみでも成約し、書面を作成したとしても押印までは必須ではないと考えられています。ただし、「企業が実際に発行した書類であると証明しやすい」「悪用の可能性が考えられる」などの点から、押印があった方が無難だと言えるでしょう。
(参考:経済産業省『押印に関するQ&A』)
書面ではなくメールでも問題ないか
採用決定の通知は、電話やメールでも可能です。ただし、メールの場合は、迷惑メールに埋もれてしまうリスクもあるため、書面での交付が望ましいと言えます。
メールで交付する際は、選考時に応募者に採用通知をメールで送信する旨を伝えておくとよいでしょう。
メールで送付する際の例文

件名は、「【採用に関するご案内】株式会社●●」「【株式会社●●】採用決定のご連絡」のように、簡潔でわかりやすい表現にしましょう。
郵送時の封筒の書き方について
採用通知書を郵送する際は、書類を折り曲げずに済むサイズの封筒に封入します。
A4サイズの書類を送付する際は、角形2号の封筒を使用するとよいでしょう。確実に配達されたことが確認できるよう、「簡易書留」や「特定記録郵便」など、追跡サービスに対応した郵送方法を選ぶことも重要です。

封筒の表面には、本人が開封するよう「親展」もしくは「選考結果在中」「採用通知書在中」などと封入物の内容を記載します。
採用通知書の効力はいつまで?取り消しはできる?
採用プロセスにおいて交付する書面の名称や内容は企業によって異なりますが、採用通知書は「採用プロセスにおいて企業から応募者へ採用決定を通知するための書面」と解されることが一般的です。
つまり、応募者による労働契約の申し込みに対して、企業が採用通知書を交付することにより、労働契約が成立することを意味するものと解されます。
一方で、「内定」は労働契約法第6条に定められている「労働契約の成立」に該当し、企業と応募者との間には「始期付解約権留保付労働契約」(契約の開始時期が決定しており、内定取り消し事由に基づく労働契約の解約権が企業に留保されていること)が成立すると解釈されています。
内定取消は既に成立した労働契約の解約となり、解雇に相当するため、正当な理由のない解約は解雇権の濫用に当たり、無効となります。
以上のことから、「採用通知書を交付している場合」「内定通知書を交付している場合」「採用内定通知書を交付している(採用通知書と内定通知書を兼用している)場合」などは、法的な拘束力があると判断される可能性が高く、取り消しは難しいでしょう。
ただし、具体的にいつのタイミングで労働契約が成立していると言えるかは、専門家でも評価が分かれ得る難しい判断を伴うので、労働契約の成立が問題になるようなケースでは、弁護士などの専門家に相談して対応を検討することをお勧めします。
なお、採用内定通知書や誓約書に内定取消の事由が記載されている他、企業と労働者との間で取消事由について合意があり、取消事由の内容が合理的と言える場合は、取消事由の存在を理由として内定を取り消すことが可能です。
内定取消事由として考えられる事由には、「学校を卒業できなかった場合」「履歴書や誓約書などに重大な虚偽記載がある場合」などが挙げられます。
(参考:日本労働組合総連合会『労働相談』)
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まとめ
採用通知書に法律上の発行義務はありませんが、応募者とのトラブルを防ぐためにも重要な書類です。
ただし、様式や内容、交付のタイミングは企業によって異なります。スムーズな採用活動が行えるよう、本記事で紹介した文例を参考にしたり、ダウンロード資料を活用したりしながら、採用通知書を準備されてはいかがでしょうか。
(制作協力/株式会社はたらクリエイト、監修協力/弁護士 藥師寺正典、編集/ds JOURNAL編集部)