効果的な求人募集を行うためには、自社が求める人材像を明確にして、それに合った求人広告を出すことが大切です。しかし、求人において年齢制限を設けることは、原則禁止されているので注意が必要です。

今回は、求人における年齢制限の基本的なルールと例外について解説します。また、ルールを守って効果的な求人を行うためのポイントもまとめて解説します。

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求人における年齢制限とは

求人における年齢制限とは?NGとなる理由と例外となるケースを解説

採用する企業側にとって、候補者の年齢はとても重要な条件の一つといえます。しかし、求人において直接的な年齢制限を行うことは原則禁止されています。

ここでは、求人における年齢表現の基本的なルールについて見ていきましょう。

求人での年齢制限は原則的にNG

結論からいえば、求人で年齢制限を行うことは原則的に禁止とされています。2007年10月1日に改正雇用対策法が施行されたことにより、それまで努力義務とされていた「年齢制限の禁止」が義務化されました。

それにより、求人募集において年齢制限と読み取れる書き方をした場合は、行政指導などの対象となります。行政指導そのものには法的な拘束力はありませんが、従わない場合はさらに重い行政処分などが行われる可能性もあるため、実質的には一部の例外を除いて「年齢制限はNG」と考えておく必要があります。

求人での年齢制限がNGとなる理由

求人における年齢制限が禁止された背景には、「年齢にかかわりなく就職に対して均等な機会を与えなければならない」という基本的な考え方が存在します。少子高齢化が続く日本では、経済成長を目指すうえで多様な人材の活用が課題となっています。

しかし、採用の現場では年齢による足切りが行われており、豊富な経験やスキルを持った中高年求職者の再就職が難しいという現実がありました。

そこで、企業に年齢制限の禁止を義務づけ、年齢ではなく個々の能力や適性に基づいた採用活動を促したのが2007年の雇用対策法改正です。

改正雇用対策法のポイント

改正雇用対策法は2007年8月4日に施行され、年齢制限の禁止は10月1日から行われました。これまで触れたように、企業などの事業主は労働者の募集及び採用について、「年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならないこと」とされており、実質的に年齢制限の禁止が義務化されています。

そのうえで、厚生労働省の見解では、「求人票で年齢不問としながらも、年齢を理由に応募を断ったり、選考段階で年齢を理由に採否を決定したりする行為は法の規定に反する」とされています。つまり、形式的に求人票を年齢不問にすればよいというわけではなく、採用活動全体において年齢で判断しないことが必要です。

年齢制限を行わないことの利点

年齢制限を行わない求人は、企業にもさまざまなメリットをもたらします。近年では、労働人口の減少によって人手不足を抱える企業も増えており、人材の確保は多くの業界における課題となっています。

年齢制限を設けなければ、応募数のアップが期待できるため、人材確保の機会を広げることが可能です。

多様な人材との接点が生まれることで、自社の組織運営に新たな視点が加わるなど、イノベーションの機会も創出されていくでしょう。

また、年齢制限を行わなくなれば、年功序列などの前提を見直すきっかけにもなります。なぜなら、年齢のみで待遇が決まる報酬体系のまま中高年世代の人材採用を積極的に行えば、どうしても若手の人材から不満の声が挙がってしまうリスクがあるためです。

古い体質から脱皮して、成果を通じて公平に評価するようになれば、若い人材の自発的な成長も期待できます。

求人で年齢制限が認められる例外のケース

求人における年齢制限とは?NGとなる理由と例外となるケースを解説

求人における年齢制限に関するルールには、一部の例外も設けられています。ここでは、雇用対策法施行規則をもとに、例外が認められるケースについて詳しく解説します。

(参考:『労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律』 )

例外事由1号

例外事由1号は、「定年年齢を上限として、その上限年齢未満の労働者を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合」と規定されています。これは、例えば定年を65歳までとしている企業において、65歳未満の方を募集する場合を指しています。

会社として定年を設けている以上、求人の上限年齢を定年までとするのは自然なことといえるため、上限については記載しても問題がないとされているのです。しかし、以下のようなケースは例外として認められないので注意が必要です。

例外事由1号が認められないケース
・有期労働契約を結ぶ場合
・実際の定年年齢と求人票の上限年齢が一致しない場合
・下限年齢も追加している場合
・業務の習熟に必要な期間を含めて上限年齢を下げる場合
(例)業務の習熟に2年間必要なため、定年よりも上限年齢を2年下げて募集

例外事由2号

例外事由2号とは、「労働基準法その他の法令の規定により、年齢制限が設けられている場合」を指します。例えば、警備業務では警備業法で満18歳未満の就業が禁止されているため、満18歳以上の年齢制限を記載することが認められています。

例外事由3号イ

「例外事由3号のイ」とは、「長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合」を指します。この例外は、長期雇用によるキャリア形成を前提とする日本の雇用慣行との調和を図るために設けられたものとされています。

具体的には、「対象者の職業経験を不問とすること」「新卒者以外の者も新卒者と同等の処遇にすること」を条件に、若年者(35歳未満を想定)に絞った採用が可能という仕組みです。なお、「同等の処遇」とは賃金などの条件を指しているわけではなく、育成環境や配置、訓練の用意などを示しています。

ただし、以下のようなケースでは例外が認められないので注意が必要です。

例外事由3号イが認められないケース
・有期労働契約を結ぶ場合
・職務経験を付している場合、職務経験が必要な資格を求める場合
(例)40歳未満の人を募集(ファイナンシャルプランナー1級保持者)
・下限年齢を付している場合

例外事由3号ロ

「例外事由3号のロ」とは、「技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合」を指しています。それぞれの言葉をより詳しく表現すると、次のようにまとめられます。

例外事由3号のロの内容
・特定の職種:電気通信技術者や水産技術者、ホームヘルパーなど
・特定の年齢層:30~49歳のうちの特定の5~10歳幅の年齢層
・相当程度少ない:同じ年齢幅の上下の年齢層と比べて、労働者数が2分の1以下である
場合

そのため、例えば以下のようなケースでは例外事由3号のロが認められます。

例外事由3号のロが認められる具体例
・電気通信技術者が以下の人数所属している企業で、30~39歳の人を募集する場合
・20代10人
・30代2人
・40代8人

この場合は、上下の年齢層と比較して30代の労働者が2分の1以下であるため、年齢制限と職務経験をセットで求人票に記載することも可能です。

例外事由3号ハ

「例外事由3号のハ」は、「芸術・芸能の分野における表現の真実性などの要請がある場合」を指します。例えば、モデルや役者募集などにおいて、表現の真実性を求める場合には、特定の年齢層に限定した募集・採用することも可能とされています。

具体例としては、「演劇の子役を求めるうえで〇歳以下の対象者を募集する」といったケースです。

一方、以下のようなケースでは例外が認められないので注意が必要です。

例外事由3号のハが認められないケース
・特定の年齢層を対象とした商品・サービスの提供が目的であり、芸術・芸能の分野に該当しない場合
(例)イベントコンパニオンとして30歳以下の人を募集する

例外事由3号ニ

「例外事由3号のニ」とは、「60歳以上の高年者または特定の年齢層の雇用を促進する政策(国の施策を活用しようとする場合に限る)の対象となる人に限定して募集・採用する場合」を指します。例えば、雇い入れ助成金などの施策を活用するために、対象となる年齢層を限定して募集・採用することは認められています。

求人を行うときの書き方のポイント

求人における年齢制限とは?NGとなる理由と例外となるケースを解説

年齢制限を意識して求人広告を出す際には、前述のルールを踏まえて記載内容を検討する必要があります。ここでは、いくつかのパターンに分けて書き方のコツをご紹介します。

なお、一般的な求人広告の書き方については、以下の記事で詳しく解説されているので参考にしてみてください。

(参考:『求人広告の書き方の基本|法律順守で成果を最大化するコツを解説 』)

若手を募集したいときの書き方

若手に限定して採用したい場合は、雇用対策法施行規則により定められている「例外事由3号のイ」を適用すれば、35~45歳未満を目安として年齢制限をかけることも可能です。前述のように、例外事由3号イを適用するためには、「職業経験を不問にすること」「新卒者と同等の処遇にすること」が条件とされています。

そのため、求人広告には「35歳未満の方(例外事由3号イ:長期キャリア形成のため)」のように、例外事由の種類や理由を書き添えるのがポイントです。

経験者を募集したいときの書き方

これまで見てきたように、「例外事由3号イ」を適用したとしても、年齢制限を行いながら経験者募集をかけることはできません。例外事由3号イは職務経験がない若手人材の育成を目的としたルールであるため、「経験者優遇」や「経験があれば尚可」といった記載も望ましくありません。

そのため、両方の条件を同時に求める場合は、経験者を募集する旨を明記するのではなく、経験者が求めるような職場環境をアピールするなどの方法を取り入れてみるとよいでしょう。例えば、「技術やスキルに応じた昇給制度」「最新の機器環境整備」といったポイントを添えることで、経験者に向けて効果的なアピールが行えます。

ただし、先にも述べたように「職務経験を前提とした資格の明記」などは禁止されているので注意しましょう。

定着率を高めるための書き方

採用活動を行う際には、単に人を集めるだけでなく、自社で長く活躍してもらえる人材の獲得を目指すことが大切です。定着率を高めるためには、求人情報の書き方にも十分な工夫を凝らす必要があります。

求人情報にはプラス面だけでなく、仕事の厳しさなどのマイナス面も率直に添えることで、求職者自身も適性を見極めやすくなるでしょう。また、自社で働くことでどのようなキャリアプランを描けるのかも明記すると、仕事への前向きな意識を持った人材からの募集を期待しやすくなります。

定着率は組織の戦力を安定させ、生産性の向上を目指すうえで重要な指標です。定着率を向上させる方法については、以下の記事で詳しく解説されているので参考にしてみてください。

(参考:『定着率とは?計算方法や低い企業の特徴・向上させるための方法 』)

求める人材を募集するためのコツ

求人における年齢制限とは?NGとなる理由と例外となるケースを解説

年齢制限にこだわらずに求人を行ううえでは、それ以外のポイントできちんと人材の絞り込みを行うことが大切です。ここでは、希望する人材を募集するためにおさえておきたいポイントを見ていきましょう。

自社が求める人材像を明らかにする

効果的な求人を行うためには、何よりもまず自社が求める採用ペルソナを明確化することが大切です。採用ペルソナとは、採用したい人材像を人柄やスキル、価値観といった細かな点まで具体化したイメージ像のことです。

採用ペルソナを明らかにしておくことで、採用方針にブレがなくなるとともに、関係する担当者も方向性を共有しやすくなります。その結果、雇用のミスマッチを予防でき、効果的な採用活動が行えるようになるのです。

求人広告も採用ペルソナに合わせて検討すれば、求める人材像のニーズに合った文言や表現を追求しやすくなります。採用基準の決め方については、以下の記事で詳しく触れられているので参考にしてみてください。

(参考:『採用基準の決め方|役割や作成手順をテンプレートと例で解説 』)

試用期間を設ける

ミスマッチのリスクを抑えるには、試用期間を設けるのも一つの方法です。あらかじめ試用期間を設ける旨を明記していれば、対象期間内でじっくりと人材の質を見極め、本採用するかどうかを判断できます。

ただし、試用期間を長くとりすぎると、求職者からは敬遠されやすくなってしまうので注意が必要です。適切な期間は職種や業務内容によっても異なりますが、3ヶ月程度が一般的な基準といえるでしょう。

なお、本採用を義務としない採用方法については、ほかにも「トライアル雇用」と呼ばれる手法があります。これは厚生労働省が提供する制度であり、原則3カ月の期間で雇用を行い、その後に改めて雇用継続の有無を判断するという方法です。

一定の条件を満たせば助成金を受け取ることも可能なため、試用期間を設ける場合には第二の選択肢として検討してみるのもよいでしょう。

複数の採用チャネルを取り入れる

採用活動の幅を広げるには、複数の採用チャネルを導入してみるのも有効な方法です。例えば、ピンポイントで求める人材の採用を狙うのであれば、「ダイレクトリクルーティング」を活用してみるのもよいでしょう。

ダイレクトリクルーティングとは、条件に合った人材をデータベースなどで見つけ、企業から直接的にアプローチをかける手法です。この方法であれば、年齢はもちろん経験や経歴、スキルなども細かく絞り込んで採用活動が行えるので、ミスマッチを避けて理想的な人材を獲得することが可能です。

ほかにも、自社の従業員を通じて人材を紹介してもらう「リファラル採用」やSNSを活用する「ソーシャルリクルーティング」など、さまざまな採用チャネルが存在します。具体的な方法については以下の記事で詳しく紹介されているので参考にしてみてください。

(参考:『採用チャネルとは?主な種類と選び方・注意点を紹介 』)

まとめ

雇用対策法の改正によって、求人募集では年齢制限を設けたり、年齢を理由に採用を断ったりすることが原則禁止されています。そのため、基本的には求人票に年齢の上限を付記したり、年齢を理由に選考で落としたりすることはできません。

しかし、条件によっては例外も設けられているので、年齢制限を行う場合は各例外規定の内容をチェックしておきましょう。そのうえで、年齢制限によらない求人は、企業にもさまざまなメリットをもたらすはずです。

自社の人材戦略や組織のあり方を見直すきっかけにもなり得るので、先入観にとらわれず、柔軟な採用活動を検討してみるのもよいでしょう。

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(制作協力/株式会社STSデジタル、編集/d’s JOURNAL編集部)