人材を採用する際の一般的なプロセスとしては、企業が転職希望者を評価する「採用面接」が挙げられます。しかし近年では、より確実に自社に合った人材を探すために、面接ではなく「面談」を実施している企業もあります。

本記事では、面談の概要や目的を整理した上で、実施の際に意識すべき4つのポイントを解説します。従来の採用活動に限界を感じている人事・採用担当者は、ぜひご覧ください。

面談とは

中途採用活動における面談とは、企業と転職希望者が情報を共有し合い、相互理解を深めるための場のことです。転職希望者に自社の特徴を伝えられる上に、転職希望者の人となりを深く知れるという点から、採用のミスマッチ防止に効果を発揮します。

また、採用が決まった人材や既存社員に対して面接を実施するケースも少なくありません。給与面をはじめとする待遇や、キャリアプラン・マイルストーンを検討する場として活用されます。

このように、面談は企業活動のさまざまな場面で実施されますが、本記事では、特に中途採用活動での面談にフォーカスして特徴を解説します。

面談を実施する目的

先ほど少し触れた通り、中途採用活動では企業と転職希望者の相互理解を深めるために面談を実施します。具体的には、以下に挙げる点に関して認識のすり合わせを行います。

認識のすり合わせ
●入社後の実際の業務内容
●詳細な勤務条件
●企業理念や職場の雰囲気

これらに関して企業と転職希望者が対等な立場で意見交換し、お互いにミスマッチを防ぐことが面談の主な目的です。

面談と面接は何が違う?

「採用活動で活用できる」という点で面談と面接は共通していますが、「合否に関わるかどうか」に関しては大きな違いがあります。

先に説明した通り、面談は相互理解を深めることを目的としており、あくまでも、企業と転職希望者がフラットに話し合える場として提供されます。そのため、そこでの転職希望者の言動は選考に影響しないのです。

一方で面接は、基本的に企業が転職希望者を評価するための選考プロセスです。企業が主体となって質疑応答を行い、転職希望者が自社に合っているかどうかを見極めて、最終的に合否を決定します。

以上の説明からわかる通り、面談と面接はそもそもの目的が異なります。この点を混同せず、自社の抱える課題や状況に応じて使い分けることが大切です。

面談の種類

採用活動やその他の企業活動で面談を有効活用するためには、その種類とそれぞれの特徴を把握しておく必要があります。

カジュアル面談

転職希望者との交流の場として用いられる面談が、カジュアル面談です。企業と転職希望者が対等な立場で会話を交わし、雰囲気や要件が合うかどうかをお互いに確かめます。

その性質から、カジュアル面談は本格的な選考活動に入る前のステップとして適しています。選考の前に自社の社風や業務内容を詳細に伝えておく、あるいは転職希望者の考え方
などを聞いておくことで、採用活動をより効率よく進められるようになるためです。

ただし、先述した通りカジュアル面談の内容が合否に直接影響するわけではありません。転職希望者に緊張感を与えてしまわないように、カジュアル面談を実施する際はこの点を事前に周知しておくことが大切です。

(参照:『カジュアル面談とは?採用面接との違いや実施するメリット・当日の流れを解説』)

面談とは?目的や種類、成果が出る面談のポイントなどを解説
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オファー面談

自社での採用が決まった人材を対象とする、オファー面談というものも存在します。

オファー面談では主に、入社意思の確認や、労働条件・待遇などのすり合わせを行います。ここで人材が抱えている疑問点や懸念点を払拭すれば、採用の辞退や入社後の早期離職などを防げるでしょう。

とは言え、オファー面談だけに力を入れておけば、自社での活躍が見込める人材を確実に採用できる、というわけでもありません。

選考プロセス全体を通してフォローを行った上での、最後の一押しとしてオファー面談を活用できると理想的です。

(参照;『採用決定後に口説き始めても遅い!入社承諾前辞退を防ぎ、入社意向を高める「オファー面談」ノウハウ』)

面談とは?目的や種類、成果が出る面談のポイントなどを解説
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リクルーター面談

リクルーター面談とは、「リクルーター」と呼ばれる担当者と新卒の候補者が、選考前に実施する面談のことです。

リクルーターには、主に特定の学校のOBやOGが選ばれます。そのため、同校の卒業者に対する迅速かつ効果的なアプローチが可能です。「将来有望な若手人材を多く採用したい」と考える企業にとっては、非常に有用な手法だといえるでしょう。

また、カジュアル面談と同様に、リクルーター面談も非常にフランクな雰囲気で進められます。社内ではなくカフェなどの飲食店で行われることも多く、よりリラックスした状態で候補者とやりとりできます。

なお、上記の説明からわかる通り、リクルーター面談は基本的に新卒採用で効果を発揮する手法です。中途採用で活用できるケースは少ないかもしれませんが、選択肢の一つとして把握しておきましょう。

(参照;『リクルーター面談とは?目的やメリット・実施の流れ を解説【質問例付き】』)

面談とは?目的や種類、成果が出る面談のポイントなどを解説
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人事面談

転職希望者や採用が決まった人材との面談も重要ですが、既存社員を対象とする人事面談も企業の成長のためには欠かせません。なお、人事部との面談を人事面談と呼ぶケースもありますが、本記事では、上司と部下の間で行われる人事面談に絞ってお伝えします。

人事面談では、設定された目標をメンバーが達成できたかどうかを上司が確認し、その上で結果に応じたアドバイスを行います。「この点は非常に高く評価している」「この課題をクリアできれば評価につながる」といった旨を伝えて、社員のエンゲージメントを高めることが目的です。

エンゲージメントが高まれば、社員のパフォーマンスが向上するだけではなく、離職率の低下につながる可能性もあります。全ての社員に長期にわたって活躍してもらうためにも、人事面談は定期的に実施すべきだといえるでしょう。

(参照:『人事面談とは|4つの種類と基本フロー・企業の実施事例を解説』)

面談とは?目的や種類、成果が出る面談のポイントなどを解説
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面談を実施するメリット

特に採用活動では、面談を実施することで以下の3つのメリットを享受できます。

メリット①転職希望者の本音を引き出せる

合否に直接関わる面接よりも転職希望者の本音を引き出しやすい点が、面談のメリットの一つです。

面談では、転職希望者とフラットに話し合えるため、新しい職場に求めていることや働き方に対する率直な考えなどを把握しやすい傾向にあります。これにより、採用のミスマッチ防止が実現するだけではなく、転職希望者に対してアピールすべきポイントも明らかにできます。

メリット②相互理解を深められる

繰り返しになりますが、面談では企業と転職希望者との間で相互理解を深められます。採用のミスマッチを防ぐという点では、この点も大きなメリットとなるでしょう。

また、面談の段階で互いに理解が深まり、転職希望者と信頼関係を築ければ、その後の採用面接でも本心を深掘りできるかもしれません。「採用面接で転職希望者の本心を聞けない…」とお悩みであれば、前段として面談を実施してみてはいかがでしょうか?

メリット③自社への志望度を高められる

面談に参加する転職希望者は、自社に対して少なからず興味を持っているはずです。そういった転職希望者が抱えている疑問点や懸念点を解消した上で、プラスアルファの情報を訴求できれば、入社意欲をさらに高められます。

大人数を相手に説明を行う転職イベントなどと異なり、転職希望者一人ひとりの知りたいことをピンポイントで伝えられる点が、面談の大きな強みです。採用の売り手市場が続く昨今、このように効率よく動機づけが行える手段は非常に有用だといえます。

面談を実施するデメリット

面談では、転職希望者の人となりや適性をじっくりと確かめられますが、その分かける時間や対応コストも多くなるため、人事・採用担当者の業務負担が増してしまいます。この点は、面談を実施する上で留意しておくべきデメリットだといえるでしょう。少しでも負担を抑えるためにも、面談で聞くべき質問例や、逆質問に対する回答例はある程度マニュアル化しておきたいところです。

また面談では、そのカジュアルさゆえに「話がそれて本心を探れなかった」という事態に陥ることも少なくありません。このような事態を避けるためにも、「何を目的に面談を行うのか?」という主軸を事前にきちんと整理しておきましょう。カジュアルに話ができる点が面談の強みではありますが、話が主軸から脱線しすぎないように、面談担当者が流れをコントロールすることが大切です。

採用活動の成功につながる面談のポイント

ここからは、採用活動の前段として面談を実施する際のポイントを解説します。以下の4つのポイントを意識して面談に臨めば、その後の採用活動が成功する可能性も高められるでしょう。

ポイント①アイスブレイクを取り入れて話しやすい雰囲気をつくる

最初にアイスブレイクを行うことが、面談では非常に大切です。アイスブレイクによって転職希望者の緊張をほぐし、お互いにリラックスした雰囲気で会話できれば、自然と本音を引き出せるでしょう。

なおアイスブレイクでは、採用プロセスに関係がなく、誰でも答えられるような話題を提供することが望ましいとされています。具体例としては、その日の天気や会場までの交通手段などが挙げられます。

ただし、雰囲気づくりのためだからといって、どのような話題を選んでも良いわけではありません。この点は後ほど詳しく解説するので、そちらも合わせてご覧ください。

(参照:『【面接官必見!】知らないと失敗しちゃうかも?有意義な面接のためのアイスブレイクとは~質問例付き~』、『良かれと思ったアイスブレイクが逆効果!?応募者の本音を引き出す面接テクニック』)

ポイント②自社の魅力を伝える

アイスブレイクが済み、コミュニケーションがある程度円滑になってきたタイミングで、自社の魅力も忘れずにアピールしましょう。

ここでは、企業のホームページや求人サイトに載っている情報ではなく、社員だからこそ伝えられる魅力をアピールすることが重要となります。実際の働き方や業務内容、福利厚生の詳細などを、エピソードも交えつつ伝えられると理想的です。ここで転職希望者の興味・関心を高められるかどうかが、以降の採用活動の成否にも大きく影響します。

ポイント③相手の話にも耳を傾ける

自社をアピールすることばかりに気を取られて、面談担当者が一方的に話をしてしまっては本末転倒です。相互理解を図るためにも、時折質問を投げかけながら「対話形式」で面談を進めることを心がけましょう。

また、転職希望者に前職での経験やキャリアなどを語ってもらう際は、途中で気になるポイントがあっても、遮らずに最後まで話を聞くことをおすすめします。内容をきちんと把握できるだけではなく、「この人は自分の話に興味を持ってくれている」と、好印象を与えられます。

ポイント④次のステップにつながる情報を共有する

面談を通じて「この人は自社に合いそうだ」と感じた転職希望者には、ぜひとも選考へ進んでもらいたいところです。そこで面談の最後には、選考につながる情報も共有することをおすすめします。自社に対して強い興味を抱いているうちに次のステップを案内すれば、競合他社に先を越されてしまう可能性を減らせます。

ここでもし「別の社員とも話がしてみたい」と転職希望者から申し出があれば、別途面談の機会を設けても良いでしょう。その際は、話したい内容を転職希望者に確認しておき、適切な面談担当者をアサインすることを心がけてください。転職希望者の入社意欲を維持できれば、採用活動が成功する可能性をさらに高められます。

面談を実施する際に覚えておきたいこと

転職希望者と面談する際は、上記のポイントを意識するだけではなく、以下の注意点に気をつける必要もあります。

プライベートな話を避ける

面談がいくらカジュアルだからといっても、どのような質問でも投げかけて良いわけではありません。特に、転職希望者のプライベートに踏み込むような話題は避けるべきでしょう。例えば、家庭環境やパートナーの有無といった話題がこれに該当します。

また、人によっては趣味の話などでも忌避感を覚えるかもしれません。そのため、面談の際は相手の様子をうかがいつつ、臨機応変に話題を振っていきましょう。

質問の投げかけ方を工夫する

事前に用意した質問をただ投げかけるだけでは、「採用面接と変わらないな」と転職希望者が感じてしまうかもしれません。そのような事態を避けるためにも、質問の投げかけ方にも一工夫を施したいところです。そこでおすすめしたい手法が、面談の進み具合に応じて「クローズドクエスチョン」と「オープンクエスチョン」を使い分ける、というものです。

面談が始まってすぐの段階では、まだ転職希望者の緊張が解けていないと思われます。そのため、まずはYES・NOで簡単に答えられるクローズドクエスチョンで、会話のきっかけをつくりましょう。そこから話を膨らませるようにオープンクエスチョンを問いかけて、徐々に自由な対話へと移行していけると理想的です。

一方的な質疑応答ではなく、対等な関係での対話となるように意識すれば、企業と転職希望者の双方にとって実りある面談となるはずです。

適切な面談担当者を選ぶ

自社について転職希望者により深く知ってもらうためにも、面談担当者には適切な社員を選出する必要があります。以下のポイントを網羅できているかどうかを目安に、社内で選定を行いましょう。

面談担当者の条件
●自社の業務内容を熟知している
●企業理念やビジョンを理解している
●自社の強みを魅力的に伝えられるコミュニケーション力がある
●傾聴姿勢を持てる
●転職希望者からの質問に臨機応変に答えられる対応力がある

上記のポイントを網羅できているのであれば、面談担当者は人事・採用担当者でも現場の社員でも構いません。とは言え、中途採用の面談では業務に関して一歩踏み込んだ質問が来ることも想定されるので、現場で活躍している社員を選ぶほうが望ましいでしょう。

面談を活用し転職希望者との相互理解を深めることが、採用活動の成果につながる

今回は、採用活動での面談の目的やメリット・デメリットとともに、実施に際してのポイントなどを解説しました。

面談は採用の合否に直接影響を与えないため、転職希望者の本音を効果的に引き出せる可能性があります。今回紹介した4つのポイントと3つの注意点を意識して実施すれば、採用のミスマッチが減り、高い成果の期待できる採用活動が実現するでしょう。

(制作協力/株式会社eclore、編集/d’s JOURNAL編集部)

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