身内が亡くなると、悲しむ間もなく、葬儀をはじめ、たくさんの「やらなくてはならないこと」があります。諸手続きや必要書類の入手は複雑なことも多く、いざというときに戸惑うケースも少なくありません。

相続実務士の曽根恵子氏の著書『身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本』(扶桑社)より、死亡届の提出から葬儀までの流れについて、詳しく見ていきましょう。

死亡届と死亡診断書を提出する

医師からもらった死亡診断書は、死亡届と一体になっています。あわせて窓口に提出しましょう。

〈おもな必要書類〉

●死亡届

入手先:医師から

 

●死亡診断書

入手先:医師から

死亡届と死亡診断書は「7日以内」に役所へ提出

身内が亡くなった際に、医師(もしくは歯科医)によってつくられる死亡診断書は、法律上の死亡を証明する書類です。自宅や病院で亡くなった場合は、医師が作成します。

しかし、事故などで亡くなった場合は、警察が遺体を検案して、死亡診断書ではなく死体検案書を作成します。この死体検案書を受け取ることができるのは3親等までの親族に限られていますが、委任状を用意すれば葬儀会社に代行してもらうこともできます。

死亡診断書と死体検案書は両方とも同じ効力をもつもので、その後の手続きでも使用できます。

死亡届はA3サイズで、左側が死亡届、右が死亡診断書となっています。法律では、死亡診断書の提出は身内が亡くなってから「速やかに」、死亡届は「7日以内」に提出する必要がありますが、両方がセットになっているため基本的には同時に提出します。

提出場所は、死亡地か故人の本籍地、届出人の住所地にある市区町村役所で、届出人には親族、同居人、家主、地主のほかに、後見人や家屋管理人などがなることができます。提出時には必要事項の記載とともに、押印も必要になるので、忘れないようにしましょう。

死亡届の提出は、次の段階の手続きに欠かせませんので、故人の死後、速やかに行ってください。

〈死亡保険金の請求〉にも関わる重要事項…身内が亡くなったら、...の画像はこちら >>
死亡届は毎日24時間提出可能

死亡届は、役所の業務時間内外にかかわらず、24時間年中無休で受けつけをしています。

このあともさまざまな手続きがあるので、できるだけ速やかに提出しておきましょう。

死亡届の提出は代行も可能

死亡届の提出は代理人が行うこともでき、最近はスムーズに手続きを進めるために葬儀社が代行するケースが増えています。葬儀社に提出を代行してもらう場合は、届出人と代行者の印鑑が必要になります。

コピーだけでなく原本も複数用意を

死亡診断書と死亡届は、このあとの手続きで必要になってきます。万が一、紛失したり破損すると、再発行には煩雑な手続きが必要となるので、あらかじめ5枚ほどのコピーをとっておきましょう。ただし、生命保険の支払い請求などには、コピーではなく、原本や正式な写しが必要となるので、あらかじめ必要な原本の数を確認しておき、病院で死亡診断書を複数枚作成・発行してもらうか、死亡届の正式な写しである「死亡届の記載事項証明書」の発行を請求しましょう。

なお、「死亡届の記載事項証明書」は、死亡届の提出場所と同じく、市区町村役所で請求できます。

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火葬許可申請書を提出する

遺体の火葬と納骨のためには火葬許可証が必要です。埋葬に必要な埋葬許可証とともに確認しましょう。

〈おもな必要書類〉

●死亡届

入手先:医師から

 

●死亡診断書

入手先:医師から

 

●火葬許可申請書

入手先:市区町村役所から

火葬許可証の提出は事前に受付時間を確認

火葬許可申請書は、遺体を火葬し、埋葬・納骨するために必要となる書類で、通常は死亡届とともに提出します。申請用紙は、通常、市区町村役所の窓口やウェブサイトから入手可能です。

この申請書を提出すると、その場で火葬許可証が発行されます。近年の葬儀では、告別式と同日に火葬を行うことが多いため、許可証の取得は必ず告別式までにすませておきましょう。

通常、死亡届は24時間受けつけていますが、市区町村役所によっては火葬許可申請書と許可証の交付を夜間に受けつけていない場合があります。そのため提出する際は、事前に受付時間を調べたうえで、できるだけ早めに申請するようにしましょう。

なお、何らかの理由で遺族が火葬許可証を取得することが難しい場合は、葬儀社に取得代行を依頼することもできます。

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火葬許可証は返却後に埋葬許可証になる

遺体を火葬する際には、交付された火葬許可証を火葬場の管理事務所に提出しなくてはなりません。火葬と遺骨を骨壺に納める納骨が終わったあとに、骨壺とともに火葬ずみの押印が入った火葬許可証が返却されます。この押印の入った許可証が埋葬許可証となります。火葬場によっては返却時に骨壺を納める箱の中に入れて渡されることもあるので確認しておきましょう。遺骨は、ほとんどの場合、四十九日の忌明けの法要とあわせてお墓に納められます。

葬儀の日から、四十九日までしばらく時間があくことになるので、その間、埋葬許可証を紛失することがないよう、大切に保管しておく必要があります。

万が一、紛失してしまったときは、火葬申請書を発行してもらった窓口で再発行の申請をします。

なお墓地、埋葬等に関する法律第3条で、遺体は死後24時間を経過したあとでなければ火葬してはいけないと定められています。

この規定は死者が蘇生することを考慮したものとなっています。そのため、法律上、死亡してから24時間後でなければ火葬することができません。

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通夜から初七日までの流れとすべきこと

通夜以降は、あわただしく見落としがちなことも多くあります。全体の流れやポイントをチェックしましょう。

通夜から葬儀・告別式までの流れを確認する

葬儀(葬式)を葬儀社に依頼した場合、手配や準備はスムーズに進んでいくため、全体の流れを把握したら、喪主や遺族がすべきことに注力しましょう。葬儀で最初に行われるのは弔問客を迎えて行われる通夜。

通夜は弔問客と故人の最期のお別れで、2時間ほどかけて行われます。開始前に祭壇や供花、供物などを確認したら、15分前には着席しておきましょう。そして読経と焼香のあとに、喪主があいさつをし、通夜ぶるまいの食事を供します。僧侶が通夜ぶるまいを辞退した場合は、代わりに御膳料と御車代を渡しましょう。

通夜までの準備も忙しいものですが、通夜以降もさらにあわただしくなるので、親族分の供花や供物代などは通夜後、すぐに精算しておきましょう。また多くの場合、通夜のあとに翌日の葬儀や告別式の打ち合わせが行われます。

翌日は葬儀の前に、葬儀社が一日の流れを説明してくれるので確認しましょう。その際、故人に送られてくる供花や供物の整理と記録も忘れずに。通常これらは、葬儀社のスタッフや世話役が祭壇に飾りますが、飾る位置や順番は喪主が確認します。並べる順は、近親者は故人と縁が深い順に、それ以外の方は関係が深い順に、棺に近い所から両端に向かって並べます。

初七日の法要までは簡略化され一度に行うことがほとんど

葬儀の時間は1~2時間ほどですが参列者が多いなどの理由で時間がかかってしまう場合は、弔辞や弔電の時間を調整します。また本来は、葬儀と告別式は分けて行われますが、まとめて行われることが多くなってきました。

葬儀が終わったら出棺し、遺族と近親者は火葬場へ向かいます。火葬場で、遺体を荼毘に付せたら、骨上げをして葬儀は終了します。その後、初七日まで法要が続きますが、近年では親族が何度も集まるのが難しい場合もあり、繰り上げ法要として、葬儀後に続けて初七日の法要までを一緒に行ってしまう場合がほとんどです。繰り上げ初七日法要では、多くの場合、僧侶による読経のあと、故人を偲びながら精進落としの会食が行われます。

〈死亡保険金の請求〉にも関わる重要事項…身内が亡くなったら、「死亡届」と「死亡診断書」を役所に提出する前に“必ずやるべきこと”【相続実務士の助言】
〈死亡保険金の請求〉にも関わる重要事項…身内が亡くなったら、「死亡届」と「死亡診断書」を役所に提出する前に“必ずやるべきこと”【相続実務士の助言】
〈死亡保険金の請求〉にも関わる重要事項…身内が亡くなったら、「死亡届」と「死亡診断書」を役所に提出する前に“必ずやるべきこと”【相続実務士の助言】
焼香は席次順に行う

通夜、葬儀の席次は、基本的に祭壇に向かって右側が遺族、左側が弔問客です。喪主と、葬儀委員長などの世話役代表は、僧侶に近い上座に座ります。焼香は血縁の濃い順に行うのが一般的ですが、地域によっては名前を読み上げる場合もあります。

心づけの渡し方

葬儀費用とは別に、お世話になった人に渡すお金を「心づけ」といいます。心づけは白い封筒か不祝儀袋に入れて渡すのが一般的で、表書きは「志」「心づけ」とします。なお、公営の斎場・火葬場では禁止されています。

曽根 恵子株式会社夢相続 代表取締役相続コーディネイター