
中国企業に買収された日本企業は少なくない。アパレルの名門、レナウン(東証1部上場)もそんな企業の一つだが、5月15日、東京地裁から民事再生手続き開始の決定を受け、事実上倒産した。
最後は見放されたレナウン
レナウンの経営破綻は上場企業として今年初めて。バブル崩壊後30年近く業績低迷が続いていたところに、「コロナ禍」が引導を渡した。負債総額は約138億円。中国の繊維大手、山東如意科技集団が筆頭株主となったのは2010年。2013年に山東如意の子会社となり、再建を進めてきたが、最後は見放された格好だ。
直近決算で山東如意の香港子会社に対する売掛金50億円超の回収が滞ったうえ、3月末の株主総会では山東如意の反対で会長、社長の取締役再任議案が否決され、親子間の亀裂が鮮明になっていた。レナウンは今後、新たなスポンサー企業を国内外で募るが、新型コロナの影響で経済が縮小する中、思うように事が運ぶかどうかは極めて微妙だ。
中国企業による対日M&Aが目立ち始めたのは2000年代以降。2004年に中国電機大手の上海電気集団が工作機械の老舗メーカー、池貝を子会社化したのが手始めだ。池貝はその3年前に民事再生法の適用を申請し、行き詰まっていた。
池貝の経営権は2014年、台湾の工作機械大手である友嘉実業集団に移った。友嘉実業は2016年に、池貝を通じて中堅の新日本工機を傘下に収めた。
2010年前後から対日M&Aが加速
中国がGDP(国内総生産)で日本を抜いて世界第2位になったのは2010年。この前後から業績不振に苦しむ日本企業買いが加速した。
自動車大手の比亜迪汽車は自動車ボディー用金型の世界的企業、オギハラの館林工場(群馬県)を買った。日本のお家芸とされる金型産業の技術流出の危機が叫ばれたのはこの時だ。
中国家電大手の美的集団は2016年、東芝の白物家電事業を傘下に収めた。「TOSHIBA」ブランドを2056年まで40年間使用できる契約になっている。
パソコンの世界的大手、レノボはNECに続いて2018年、富士通のパソコン事業を傘下に収めた。NEC、富士通は単独での生き残りが厳しくなっていたが、レノボとの合弁運営に移行し、息を吹き返した。
浮き沈みが激しいのがラオックスだ。2009年、中国の蘇寧電器(現蘇寧易購)の傘下に入り、家電量販店から総合免税店に業態転換し、大ブレイクした。だが、中国人観光客による爆買いブームが去り、経営が暗転。希望退職募集による人員削減や店舗閉鎖などによるリストラの真っただ中にある。

再生した本間ゴルフ、香港取引所に上場
最も成功したとされるのがゴルフ用品大手の本間ゴルフ。

欠陥エアバッグ問題で経営破綻したタカタの主要事業を2018年、約1700億円で買収したのは米自動車部品大手のKSS(現ジョイソン・セイフティ・システムズ)。KSSは中国自動車部品大手、寧波均勝電子の子会社。タカタ案件は中国企業の対日M&Aとして最大規模となる。
パイオニアは2019年3月、香港ファンドの傘下に入り(買収金額1020億円)、再スタートして1年余り。プラズマテレビ事業の失敗などでつまづき、有力事業を次々に切り売りし、しのいできた経緯があるだけに、経営立て直しのハードルは一層高いと見られている。
◎中国企業に買収された主な日本企業・事業
山水電気1991年、香港企業の傘下。2012年に民事再生法の適用申請、2014年に破産手続き 赤井電機1994年、香港企業の傘下。2000年に民事再生法の適用申請 ナカミチ1997年、香港ファンドの傘下。2002年に民事再生法の適用申請 池貝2004年、上海電気集団の傘下(2014年に台湾の友嘉実業集団傘下) ラオックス2009年、蘇寧電器(現蘇寧易購)の傘下 オギハラ2010年、館林工場(群馬県、自動車ボディー用金型)→比亜迪汽車が買収 本間ゴルフ2010年、中国投資家グループが買収し上海奔騰企業の傘下に。2016年に香港取引所上場 レナウン2010年、山東如意科技集団の傘下。文:M&A Online編集部