6月は株主総会シーズン。株主提案を受けた上場企業は113社(三菱UFJ信託銀行調べ)と過去最多を更新し、アクティビスト(物言う株主)の存在感の高まりを示す形となった。
米ダルトン、センコーなど2社を新規保有
元タレントの性暴力問題に触れるフジテレビを傘下に置くフジ・メディア・ホールディングス(HD)が6月末に開いた株主総会は一般にも大きな関心を集めた。フジHDに対抗し、米投資ファンドのダルトン・インベストメンツが株主提案していた独自の取締役人事案は否決され、会社側が勝利した。
ダルトンは英投資ファンドのニッポン・アクティブ・バリュー・ファンド(NAVF)と共同でフジHDを7.51%保有している。
そのダルトンによる5%を超える株式の新規取得が大量保有報告書で明らかになったのが陸運大手のセンコーグループホールディングス、不動産再生事業を手がけるトーセイの2社だ。
センコー、トーセイのいずれに対しても「株価が過小評価されており、魅力的な投資機会だ」としたうえで、独立取締役の選任や配当方針の変更、自社株買いなどを例示しつつ、「状況に応じて、株主価値向上につながると考える重要提案行為を行う可能性がある」としている。
NAVFは液晶製造関連装置事業などのヘリオステクノホールディングスの株式を1.19%買い増して保有割合を27.39%に高めたが、このうち共同保有者として12.95%を持つのがダルトン。
ヘリオスをめぐってはウエハー再生加工のRS Technologiesが昨年6月、完全子会社化を目的にTOB(株式公開買い付け)を始めたが、ダルトンがヘリオス株式を買い進めてTOBを阻んだ経緯がある。
オアシス、社長再任否決の太陽HD株を買い増し
香港投資ファンドのオアシス・マネジメントは化学品メーカーの太陽ホールディングスについて、株式を買い増したとする変更報告書を2度提出し、保有割合を14.89%に高めた。
太陽HDの株主総会では在任14年となる佐藤英志社長の取締役再任議案が否決される異例の事態となった。筆頭株主のDIC、創業家、オアシスの大株主3者が反対に回ったことが引き金となったが、オアシスも独自に佐藤社長の取締役解任を株主提案し、賛成票を可決寸前の49.9%まで集めた。
米投資ファンドのタイヨウ・パシフィック・パートナーズは工作機械中堅のスター精密の株式35.69%を取得したとする大量保有報告書を提出した。タイヨウは273億円で増資を引き受けた。
スター精密は工場の新増設や医療機器事業への参入に向けた成長戦略の一環として4月にタイヨウと資本提携し、出資を受け入れる計画を発表していた。
旧村上系、クレハ株の大半を売却
旧村上ファンド系投資会社の動きはどうか。その1つ、エスグラントコーポレーションによるクレハ株の保有割合が14.95%低下し、1.85%となった。
クレハは6月初め、350億円を上限とする自社株買い(発行済み株式総数の20.66%)を発表しており、エスグラントはこれに応じて大半の株式を売却したとみられる。
また旧村上系の別の投資会社、シティインデックスイレブンスはコネクターメーカーのイリソ電子工業株5.04%を新規保有した。
ありあけキャピタル(東京都中央区)は4月に5%超の株式を新規取得した池田泉州ホールディングスついて買い増しを進め、保有比率を7.52%とした。池田泉州HDは傘下に池田泉州銀行を置く。
ありあけキャピタルは地銀など金融セクターに特化した投資会社。今年3月には19.93%を保有していた千葉興業銀行の株式を約237億円で千葉銀行に売却した。これをきっかけに千葉銀行と千葉興業銀行の経営統合が取りざたされている。

文:M&A Online
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