【ALSOK】警備業を基軸に総合セキュリティー企業へ、国内外でM&Aを加速

ALSOKは国内第2位の警備会社。売上高は5000億円を目前にする。

業界最大手のセコムとは2倍以上の開きがあるが、事業分野は建物の設備管理・防災、介護に広がり、日本を代表するセキュリティー産業の担い手に成長を遂げた。その原動力の一つが積極的なM&A戦略にほかならない。

インドネシアで上場警備会社を買収

ALSOKが近年、力を入れているのがアジア展開だ。2022年11月、バングラデシュに子会社「ALSOKバングラデシュ・セキュリティーサービス」を設立し、首都ダッカや日系企業が多数進出する工業団地を中心に常駐警備や機械警備、治安情勢に合わせた警備コンサルティングなどに乗り出した。

海外事業をめぐっては2007年にタイに子会社を設立したのを手始めに、ベトナム、中国、インドネシア、インド、ミャンマーが続き、バングラデシュが7カ国目となる。日本企業のアジア進出が加速する中、現地での旺盛なセキュリティー需要を取り込むのが狙いだ。

今年6月には海外事業として初の本格的なM&Aを決めた。インドネシアの警備大手、シールドオン・サービス(SOS、ジャカルタ)の株式51.23%を取得し、子会社化すると発表した。SOSの2022年12月期売上高は142億円。SOSは2004年設立で、警備会社としてインドネシア証券取引所に唯一上場する企業という。取得金額は非公表。今年8月までの買収完了を見込む。

ALSOKは2013年にインドネシアに子会社を設け、警備コンサルティングに着手。

2016年には現地企業に出資し、合弁で日系企業を中心に常駐警備サービスなどを提供してきた。

今回、SOSを傘下に収めることで、これまでの日系向けにとどまらず、金融機関などを含めた現地企業に幅広く警備事業を展開する。SOSはインドネシアの有力財閥シナルマス・グループを大口顧客に持つ。

M&A関連に500億円を配分

ALSOKは2022年3月期を初年度とする5カ年の中期経営計画「グランドデザイン(GD)2025」を推進中。最終年度の2026年3月期に売上高6500億円、経常利益650億円を目標に掲げる。5年間の投資計画額は1200億円で、研究開発・デジタル関連に700億円、M&A関連に500億円を配分している。

中期計画の始動後、最初のM&Aは2022年6月。関西電力傘下で有料老人ホーム運営、訪問介護など介護事業を手がける、かんでんジョイライフ(現ALSOKジョイライフ、大阪市)、かんでんライフサポート(現ALSOKライフサポート、大阪府枚方市)の2社の全株式を取得し、子会社化した。取得金額は明らかにしていない。

この両社は有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などを1200室を超える規模で展開し、京都、大阪、兵庫、奈良の関西4府県でトップクラスのブランド力を確立している。

中期計画は現在、中盤の3年目に入っている。投資枠をどう有効活用するのか。後半戦に向けてM&Aにアクセルを踏み込むことになりそうだ。

前期は6期ぶり営業・経常減益に

ALSOKの足元の業績はどうか。2023年3月期は売上高0.6%増の4922億円、営業利益13.7%減の369億円、経常利益12.4%減の392億円、最終利益17.3%減の239億円。

13期連続の増収を辛うじて確保したが、6期ぶりに営業・経常減益となり、最終減益も11期ぶりだった。東京五輪(2021年開催)関連の売上高減少や、システム関連費用の増加などが響いた。2024年3月期予想は売上高4.1%増の5125億円。各利益項目もそろって増益を見込む。

売上構成をみると、セキュリティー事業が75%と全体の4分の3を占める。総合管理・防災事業15%、介護事業9%、その他1%と続く。

大黒柱のセキュリティー事業は機械警備、常駐警備、警備輸送に大別される。ホームセキュリティーや高齢者向け見守りサービスは機械警備に含まれる。地場警備会社や、大手企業グループの警備会社を対象とする買収もコンスタントに手がけてきた。

総合管理・防災事業は建物の省エネ・スマート化、火災センサーや自動火災報知盤の施工・保守、点検サービスなどからなる。

◎ALSOKの業績推移(単位は億円)

2021/3期22/3期23/3期24/3期予想売上高4699489049225125営業利益371428369386経常利益392447392410最終利益250289239255

介護事業の育成へ買収相次ぐ

ALSOKは警備業を起点に周辺分野に事業を広げてきた。介護事業に参入したのは2012年。

基幹事業に育成するため、首都圏で介護事業者の買収を積極的に進めてきた。

2014年にあんていけあ(訪問介護)、HCM(同)、2015年にアズビルあんしんケアサポート(ACS、緊急通報サービス)、2016年にウイズネット(有料老人ホームなど運営)、2018年にケアプラス(訪問マッサージ)を矢継ぎ早に傘下に収めた。2020年に有料老人ホームなど運営のらいふホールディングスを子会社化した。

そして2020年にはグループの介護会社のうち、ウイズネット、HCM、あんていけあ、ACSの4社を統合し、ALSOK介護(さいたま市)を発足。見守りをはじめとしたセキュリティー事業との連携を強化し、在宅介護から施設介護までのトータルケアを統一ブランド「ALSOKの介護」のもとで提供するのが狙い。

「1兆円企業」を見据える

ALSOKは1965年に「綜合警備保障」として誕生した。創業者で初代社長の村井順は元警察官僚。前年に開かれた東京五輪で組織委員会事務次長として運営を担当した経験から、民間警備会社の立ち上げを決意したという。

ALSOKは2003年に制定したコーポレートブランドで、「ALWAYS‐SECURITY‐OK(いつでもセキュリティーOK)」の略。正式な社名は綜合警備保障で変わりないが、通常の社名表記ではALSOKが使われている。

同社は現行の中期計画の期間中に設立60年の節目を迎える。時期は明示していないが、長期目標として売上高1兆円を見据えている。

既存事業の深化と新規事業の探索、グローバル展開が必須となる中で、その手立てとして巧みなM&A戦略が問われることになる。

◎ALSOK:主な沿革

年主な出来事1965綜合警備保障を設立1970大阪万博で常駐警備を実施1983東京都公安委員会による警備業認定証(第1号)を取得1998一般家庭向けに「SOKホームセキュリティ」を開発・発売2002東証1部に上場(2022年、東証プライム上場に移行)2003コーポレートブランド「ALSOK」を制定2008警備業のアーバンセキュリティ(東京都中央区)を子会社化2011設備工事の日本ファシリオ(東京都港区)を子会社化2012火災防災メーカー最大手のホーチキを持ち分法適用関連会社化2014警備・総合管理の日産クリエイティブサービス(横浜市、現ALSOK双栄)を子会社化〃総合管理業務の日本ビル・メンテナンス(東京都中央区、現ALSOKファシリティーズ)を子会社化〃訪問介護のあんていけあ(東京都目黒区、現ALSOK介護)を子会社化〃訪問介護のHCM(東京都港区、現ALSOK介護)を子会社化2015緊急通報関連のアズビルあんしんケアサポート(東京都大田区、現ALSOK介護)を子会社化2016有料老人ホームなど運営のウイズネット(さいたま市、現ALSOK介護)を子会社化〃NTTグループのテルウェル東日本(東京都渋谷区)から警備事業を取得2017警備業の日立セキュリティサービス(東京都千代田区、現ALSOK昇日セキュリティサービス)を子会社化〃警備業の東武デリバリー(東京都都足立区、現ALSOK関東デリバリー)を子会社化〃訪問マッサージのケアプラス(東京都港区)を子会社化2019ビル管理の総合管財(山口県下関市)を子会社化〃警備業の京阪神セキュリティサービス(大阪府池田市)を子会社化2020有料老人ホームなど運営のらいふホールディングス(東京都品川区)を子会社化〃グループの介護会社を統合してALSOK介護(さいたま市)を発足2022関西電力傘下で介護事業のかんでんジョイライフ(大阪市、現ALSOKジョイライフ)など2社を子会社化
2023
6月、インドネシア警備大手シールドオン・サービスの子会社化を発表

文:M&A Online

編集部おすすめ