【サンドラッグ】8年ぶりにM&Aを再起動「1兆円」企業を見据える

ドラッグストア大手のサンドラッグがM&Aを再起動した。今年に入り、8年ぶりとなるM&Aを2件手がけた。

同社は2026年3月期に「売上高1兆円」を目標に掲げている。その実現に向けて、M&Aの号砲が鳴った形だ。

大手勢の中で“埋没感”も

ドラッグストア業界は全国規模でチェーン展開する大手6社がトップグループを形成する。ウエルシアホールディングスを首位とし、ツルハホールディングス、コスモス薬品、マツキヨココカラ&カンパニーが続き、現在、サンドラッグは5番手につける。そしてスギホールディングスがサンドラッグを追っている。

この10年で業界順位も入れ替わっている。2010年代半ば、首位を争うマツモトキヨシホールディングス、ウエルシア、ツルハの3社がほぼ横一線で並んでいたが、積極的なM&Aをテコにウエルシアとツルハが抜け脱し、ウエルシアは業界で初めて売上高1兆円に到達した。

一方、マツモトキヨシは後退し、5位まで順位を落とした。2021年10月にココカラファインと経営統合し、マツキヨココカラを発足し、トップ返り咲きを狙っている。

サンドラッグは定位置だった4位の座をコスモス薬品に明け渡した。コスモス薬品は九州を地盤とするが、M&Aに頼らない拡大戦略で関東にも出店エリアを広げ、順位を上げた。スギはココカラファインを巡り、一時、マツモトキヨシと争奪戦を構えたこともある。

こうした中、埋没感が否めなかったのがサンドラッグだった。

拡大路線の要として直営店による新規出店に加え、M&Aにも積極的な姿勢を示していたものの、結果的に買収の動きにつながったわけではない。

2014年に北海道でフランチャイジー(地域加盟店)としてドラッグストア約50店舗(当時)を展開するサンドラッグプラス(札幌市)を子会社化したのを最後に、M&Aから遠ざかっていたのが実情だ。

【サンドラッグ】8年ぶりにM&Aを再起動「1兆円」企業を見据える
サンドラッグの本社(東京都府中市)

8年ぶりにM&Aを再開

8年ぶりのM&A再開の手始めは今年3月。化粧品・美容雑貨販売の子会社を通じて、I-ne(大阪市)からスキンケアブランド「skinvill」を買収した。スキンケア分野でオリジナルブランドを強化するのが狙い。取得金額は非公表。

続いて9月初め、四国4県でドラッグストア「mac」を56店舗に展開する大屋(愛媛県西条市)の全株式を取得し、10月3日付で子会社化すると発表した。こちらも取得金額は非公表。大屋は2008年にサンドラッグのフランチャイズ契約を結び、以来、商品仕入れを通じて緊密な関係を築いている。

大屋の2022年2月期業績は売上高265億円、営業利益2億1600万円。大屋は1937年に伊藤洋服店として創業したのが始まり。1973年には西条市内に百貨店「大屋デパート」を開店した地元の名門企業。大屋デパートは2009年に閉店したが、ひと頃、地域一番店としてにぎわったという。

サンドラッグは四国に直営店を展開していない。今回傘下入りする大屋をエリア子会社と位置づけ、四国での攻勢を強めるとみられる。

コロナ反動減で3年ぶり営業減益

コロナ禍が長引く中、ドラッグストア業界は感染予防対策商品(マスク、消毒液など)や食料品・日用品の巣ごもり需要の反動減が出ているうえ、インバウンド需要の消失で一般医薬品・化粧品需要の回復も見通せず、厳しい局面に置かれている。その一方で、出店競争は衰えておらず、各社とも利益確保に一層難しいかじ取りを求められている。

サンドラッグの2022年3月期業績は売上高2.3%増の6487億円、営業利益8.8%減の340億円、最終利益5.8%減の238億円。このうち、本業のもうけを示す営業利益は3年ぶりに減益となった。

◎サンドラッグの業績推移(単位億円。2023/3期は予想、26/3期は計画)

2021/3期22/3期23/3期26/3期売上高6343648769301兆円営業利益373340354600最終利益253238242ー

買収でディスカウントストアに参入

実は、サンドラッグはドラッグストア事業だけの会社ではない。東日本地区ではあまり知られていないが、ディスカウントストア事業をもう一つの顔とする。サンドラッグの総店舗数1286(2022年6月末)のうち、ドラッグストア事業946店舗(うち直営店749)に対し、ディスカウントストア事業は335店舗を数える。

サンドラッグが九州・中四国を地盤とするダイレックス(佐賀市)を95億円で買収し、ディスカウントストア事業に参入したのは2009年。当時、ダイレックス店舗数は136だったが、現在では2.5倍に拡大している。

2022年3月期の売上高を部門別にみると、ドラッグストア事業4248億円(前期比0.6%増)、ディスカウントストア事業2698億円(同5.5%増)。ドラッグストア事業が65%、ディスカウントストア事業が35%で、経営の両輪をなしている。

ドラッグストア事業でもM&Aが一役買っている。ダイレックスを子会社化した2009年に星光堂薬局(新潟市)、2011年にサンドラッグ東海(名古屋市)を傘下に収めた。この2社は今回子会社化する大屋と同じく各エリアのフランチャイジーとして店舗展開していた。そして2014年に札幌市のサンドラッグプラスを子会社化した。

2026年3月期に「1兆円」目指す

サンドラッグは中期経営計画で2026年3月期に売上高1兆円、営業利益600億円、1750店舗を数値目標として掲げる。出店、M&A、EC(ネット販売)事業強化、調剤事業強化の4つを重点戦略として推進する。

ドラッグストア事業では引き続き全国ベースで出店拡大を進める。一方、ディスカウントストア事業では約30店舗にとどまる東日本地区への出店加速を課題としている。

計画によると、M&Aによって売上高ベースで1000億円規模の積み上げを想定している。ドラッグストア事業に加え、ディスカウントストア事業で新たなM&Aに着手するのか。それとも第3の柱を見据えたアプローチになるのか。

◎サンドラッグ:主な沿革

年出来事1957年東京都世田谷区で創業1965年サンドラッグを設立1987年東京都府中市に本社を移転1994年株式を店頭登録1996年千葉県で調剤薬局を展開するタイセーホームエイドを子会社化1997年東証2部に上場1998年栃木県で調剤薬局を展開するコミネを子会社化2002年東証1部に上場2007年神奈川県でホームセンターを展開するアクトを子会社化・吸収合併2008年化粧品・美容雑貨販売のビーアンドエイチアメミヤ(現ピュマージ)を子会社化2009年フランチャイジーの星光堂薬局(新潟市)を子会社化〃九州・中四国でディスカウントストアを展開するダイレックス(佐賀市)を子会社化2011年フランチャイジーのサンドラック東海(名古屋市)を子会社化(2013年に吸収合併)2014年フランチャイジーのサンドラッグプラス(札幌市)を子会社化2022年3月、スキンケアブランド「Skinvill」をI-ne(大阪市)から取得〃4月、東証プライム市場に移行〃10月、フランチャイジーの大屋(愛媛県西条市)を子会社化

文:M&A Online編集部

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