
総合化学企業の旭化成<3407>は、M&Aを活用して医薬事業と海外住宅事業を拡大する。
両事業ともに市場の成長が見込めることから重点成長事業に位置付け、企業買収に積極投資することにした。
医薬事業は免疫や移植の周辺疾患領域に絞った世界的な製薬会社への成長を目指し、事業基盤やパイプライン(新薬の候補物質)強化のためのM&Aを推進し、海外住宅事業では米国とオーストラリアで事業エリアの拡大やシェアアップなどを目標に企業買収を検討する。
投資については今後3年間(2026年3月期~2028年3月期)で1兆円を想定しており、このうちM&Aを含む拡大関連投資として6700億円を見込む。
新薬開発につながる候補物質を増強
医療事業では免疫、移植、腎臓疾患、重症感染症(免疫力低下患者)などのニッチな疾患領域に的を絞り、大手製薬企業との直接的な競争を避け、小規模でコストの低い臨床開発に取り組む。
これまでに腎移植手術患者向けの免疫抑制剤を手がける米国の製薬会社ベロキシス・ファーマシューティカルズ(ノースカロライナ州)を2020年に子会社化したほか、2024年には腎疾患向け治療薬を展開しているスウェーデンの製薬企業カリディタス・セラピューティクス(ストックホルム)を子会社化するなど、積極的にM&Aを活用してきた。
今後も新薬の開発につながる候補物質を増強するためにM&Aをはじめライセンスの導入などを進めることにしており、これら取り組みに2028年3月期までの3年間に300億円を投じる。

米テキサス州で企業を買収
住宅領域では堅調な住宅需要が見込める米国やオーストラリアで事業を拡大する。
米国では、配管、基礎、躯体、電気、空調を統合した工業化建築であるSynergosモデルの強化やエリア拡大を狙ったM&Aを積極的に推進する。
すでに建築部材を手がけるErickson(アリゾナ州)や、戸建て住宅の住宅用電気設備工事などのAustin(アリゾナ州)、戸建て住宅などの配管工事のBrewer(アリゾナ州)、住宅建築工事のFocus(ネバダ州)、住宅の建築工事を請負うODC Construction(フロリダ州)などを子会社化しており、今後は2026年をめどにテキサス州で同様の企業を買収する。
オーストラリアでも戸建て住宅や分譲住宅建設のMcDonald Jones(ニューサウスウェールズ州)や、戸建て住宅建設のArden(ビクトリア州)などを傘下に収め、工事プロセスの合理化や効率化ノウハウの展開などで利益を確保している。
オーストラリアでも企業買収などによる拡販を通じて、各エリアのシェアアップを目指す。海外住宅事業でのM&A投資額は示していない。
2028年3月期に売上高を3兆1700億円に
旭化成は医薬事業などを含むヘルスケア領域、海外、国内の住宅事業の住宅領域、エレクトロニクスやカーインテリア、ケミカルなどからなるマテリアル領域の三つの分野で事業を展開している。
2028年3月期にはヘルスケア領域で売上高7600億円(2025年3月期の売上高見込みは6200億円)、住宅領域で1兆2500億円(同1兆430億円)、マテリアル領域で1兆1600億円(同1兆3650億円)の合計3兆1700億円(同3兆440億円)の売上高を見込む。
今後3年間のM&A関連の総投資額は示していないが、M&Aを含む拡大関連投資枠として6700億円を設定しており、この中で医薬や海外住宅と並んで、マテリアル領域の電子材料や電子部品などのエレクトロニクス事業も重点成長事業に位置付け、投資を行う姿勢を見せている。
文:M&A Online記者 松本亮一
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