
「こどもちゃれんじ」や「進研ゼミ」などを運営するベネッセホールディングス(岡山市)は2025年1月末に、コンピューターグラフィックやウェブなどのクリエイター養成スクールを運営するデジタルハリウッド(東京都千代田区)を子会社化する。
新たな成長領域に積極的に投資することを決めた「変革事業計画」(2023年5月策定)の一環で、ベネッセの大学生や社会人向けのオンライン動画学習システムと、デジタルハリウッドのカリキュラム(学習内容)を相互に連携することなどで相乗効果を生み出し、両社の成長促進を目指す。
変革事業計画では、新たな成長に挑戦するテーマとして、今回の大学、社会人を対象にした事業と並んで、介護人材マッチングや介護食提供などの介護周辺事業も候補に挙げており、今後は、こうした分野でのM&Aの可能性もありそうだ。
いつでもどこでも学べる環境に
デジタルハリウッドの株式は、音楽や映画、ゲーム、コミック、文具などのレンタルや販売をはじめ、ポイント事業などを手がけるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(東京都渋谷区)から取得する。
カルチュア・コンビニエンス・クラブは2005年にデジタルハリウッドを子会社化しており、今回の株式売却については「ベネッセホールディングスは大学・社会人教育領域に力を入れており、デジタルハリウッドのさらなる事業成長を実現できる最適なパートナーであると判断した」としている。
またデジタルハリウッドは「ベネッセホールディングスが新たに当社の全株式を保有する株主となる」としたうえで、「デジタルハリウッド大学をはじめとした当社の各事業に影響を与えることはない」とのコメントを発表している。
ベネッセは、就学前の子供向けの「こどもちゃれんじ」や、小中高生向けの「進研ゼミ」の国内教育事業が売上高の半分ほど(セグメント利益は全体の約60%)を占めており、このほかに売上高の約3分の1を占める介護・保育事業(セグメント利益は全体の約35%)や、売上高の約5%の大学・社会人事業(同約4%)などを展開している。
変革事業計画では2029年3月期に「国内教育」「介護・保育」と、大学・社会人や介護周辺などからなる「新領域」の3分野で均等に利益を稼ぎ出す計画で、この方針に沿って今回のM&Aを決断した。
ベネッセは今後、デジタルハリウッドの教育サービスを、大学や専門学校、企業に紹介していくとともに、デジタルハリウッドの培ってきた開発力を活かし、新たな教育コンテンツを開発する。
また、ベネッセのオンライン動画学習プラットフォーム「Udemy」と、デジタルハリウッドのカリキュラムを連携させ、学びたい時にいつでもどこでも学べる環境を作る。
こうしたデジタル人材の育成に注力することで、ITエンジニアやクリエイターが不足している日本の課題解決に貢献するとしている。
介護周辺事業にも注力
ベネッセは1955年に福武書店として発足し、中学校向けの図書や生徒手帳などの発行を始めた。その後高校生向け模擬試験事業や、中学生向け通信教育講座「進研ゼミ」などに業容を拡大。1990年に介護事業を、2022年に大学・社会人事業をスタートした。
2024年5月には、少子化をはじめ、通信教育や模擬試験の需要低下などによって経営環境が厳しさを増す中、中長期的な視点で事業構造改革に取り組むことを狙いに、MBO(経営陣による買収)で株式を非公開化した。
この大学・社会人事業と並んで、成長分野として注力している介護周辺事業では、介護人材のマッチング事業の推進や、介護食の事業拡大などを計画している。
2024年3月期の売上高は4108億1500万円(前年度比0.3%減)、営業利益は202億3200万円(同1.9%減)の減収営業減益決算だった。今後M&Aの影響はどのように現れるだろうか。
文:M&A Online記者 松本亮一
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