大型合併や経営統合で問題になる「企業結合規制」とは

企業結合規制とは

企業結合規制とは、一般的に耳にする言葉ではありませんが、「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」に企業結合(株式取得、合併、事業譲受等)を規制することを言います。

法律で言うと、独占禁止法のいくつかの条文に企業結合規制が記載されており、公正取引委員会の管轄になります。

詳細を知りたい方は、公正取引委員会のホームページをご覧下さい。


https://www.jftc.go.jp/

原則として、企業が他の企業の経営に関与する(株式取得)、他の企業と共に規模を拡大する(合併)、他の企業から事業を譲り受ける等のM&A取引は、自由競争のもと、適法な行為です。しかし、このような行為すべてを適法とした場合、何か問題が生じないでしょうか?

ここでは、最近、何かとニュースに取り上げられる通信業界について考えてみます。

通信大手3社が合併したらどうなる?

携帯電話会社大手3社と言えば、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクです。もし、これら3社すべてが合併すると、何が起きるでしょうか。

合併した会社の事業基盤はさらに強固になると共に、携帯電話のシェアをほとんど奪ってしまう結果になることが予想されます。そのため、新規参入した楽天モバイルやMVNO(格安携帯電話会社)が壊滅的な打撃を受けるでしょうし、携帯電話ユーザーは、合併した会社が提示する高止まりした料金に従わざるを得ないでしょう。

そこで、独占禁止法では、先に述べた「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」のいくつかの企業結合を規制しているのです。

企業結合を全く規制しないとしたら、新規参入が少なく産業が停滞する、国民に価格決定権がなくなってしまう等の弊害が起き、健全なマーケットの機能が失われることになります。

なお、審査の基準は、企業結合後のハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)*がどのくらい増えるか、という点で判断します。
*HHIとは、市場の集中度を測る指数で、市場占有率を二乗した合計で求めます。

GAFAに対する規制

近年、世界各地でGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)に対する規制(競合会社を買収する行為等)が声高に叫ばれるようになってきました。

この規制の背景にも上記で述べたことがある程度当てはまります。ただし、GAFAに対する規制の考え方で難しいのは、ユーザーは不利益を受けるというよりは、むしろ利益を得ている部分が多いところです。

例えば、以前はお金をかけて調査しなければならなかったことをグーグルでは無料で検索できる、連絡先を知らなかった旧友とフェイスブックで再会することができる等です。

今後、各国でGAFAに対する規制の結末がどうなるのか、注視したいと思います。

文:弁理士 原田 正純(Office IP Edge 代表)