上場企業による3月のM&A件数(適時開示ベース)は前年比13件増の131件と、初めて2カ月連続で130件台を超え、活況に沸いた。では、将来的にM&Aの端緒になることも少なくない資本・業務提携の動きはどうだったのか。
日揮HD、高田工業所に20%強出資
日揮ホールディングスは事業子会社の日揮を通じて、プラント建設中堅の高田工業所に20.31%を出資した。第三者割当増資の引き受けと既存株主との相対取引で株式を取得し、筆頭株主となった。両社は2023年11月から各種プラントのEPC(設計・調達・建設)に関する協業を進めているが、資本提携で一層の連携強化につなげる。
高田工業所は2003年に経営危機に陥った際、福岡銀行が50億円の優先株を引き受ける金融支援を講じたが、昨年2月に、この優先株の買い戻しを終え、20年がかりの経営再建を完了した経緯がある。新たな成長段階を迎え、経営の自主性・独立性を損なわないことを前提に、日揮との資本関係に踏み切った。
製造派遣・請負のワールドホールディングスは、同業のnmsホールディングスに19.38%を出資した。nmsが実施した第三者割り当てによる自己株式処分を引き受けた。西日本を地盤とするワールドと、東日本に強みを持つnmsとの相互補完によって国内を網羅する営業体制づくりに寄与すると判断した。
nmsをめぐっては昨年、一部役員の不適切な経費使用問題が表面化。今回の資本提携は同社の信用補完・回復への狙いもある。
不動産業のアンサーホールディングスはリロケーション(転勤者の留守宅賃貸)大手のリログループから20%の出資を受け入れた。アンサーは北九州市に本社を置き、都市圏から九州圏など地方への移住促進などに力を入れている。
伊藤忠、アイチコーポの筆頭株主に
信販大手のジャックスは三菱UFJ銀行から追加出資を受け入れ、資本・業務提携の内容を拡充した。三菱UFJ銀は第三者割当増を引き受けて持ち株比率を20.20%から38.01%に引き上げる。
ジャックスは海外事業に関してASEAN(東南アジア諸国連合)で自動車ローンの展開を注力しているが、今後はASEAN以外の新たな地域への進出も検討する。
高所作業車大手のアイチコーポレーションは伊藤忠商事から27.28%の出資を受け入れる。伊藤忠はアイチコーポの親会社である豊田自動織機から保有株の一部を5月半ばに236億円で取得し、筆頭株主となる。アイチは伊藤忠の世界的なネットワークを生かし、海外展開を加速する。
豊田自動織機はアイチコーポが実施する自己株買いに応じる形でも株式を売却することになっており、現在の持ち株比率を54.35%から約20%に引き下げ、親子上場を解消する。
キムラタン、ウェアラブル事業で提携
ベビー服・子供服のキムラタンは、生体情報を活用したウェアラブル製品の開発を手がけるミツフジ(京都府精華町)と資本業務提携した。
キムラタンは2019年に子供向けウェアラブル市場に参入し、ミツフジと共同で園児の昼寝の見守りや体調変化のチェックなどのサービスを始めた。これに続いて、新たに高齢者向けサービスの提供に乗り出すのに伴い、中長期的なパートナーシップの構築を目的として出資を決めた。
医薬品卸のアルフレッサホールディングスが資本業務提携した先はAI(人工知能)開発のアセントロボティクス(東京都渋谷区)。デジタルツインを呼ばれるAIの先端技術を用いて、医薬品情報のデータベース整備や、医薬品の識別・検品ソフトウエアの開発などにつなげるという。
アセントロボティクスは2016年に設立したAIベンチャー。
フリーペーパー発行の地域新聞社は、「事後型」弁護士保険を取り扱うブレイブ少額短期保険(東京都中央区)に出資した。事後型はトラブル発生後でも加入できるタイプの弁護士保険で、ブレイブが初めて商品化し、2024年5月から販売を始めた。地域新聞社は自社媒体を通じて商品の意義や仕組みを分かりやすく伝えるなど、普及促進を目指す。
◎2025年3月発表:主な資本業務提携、HDはホールディングスの略

文:M&A Online
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