人気タピオカ店「comma tea」の運営会社が倒産、ブーム終焉にゴンチャは?

パルコなどのファッションビルに「comma tea」を出店して人気を博していたタピオカ店運営のティーカンパニー(東京都千代田区)が、9月29日付で東京地方裁判所より破産手続きの開始決定を受けました。東京都や神奈川県、大阪府などに複数店舗を展開していました。


タピオカ店はかつての大ブームの勢いを失い、閉店が相次いでいました。運営会社の倒産も目立つようになっています。ブームが終焉する中、本場台湾の「ゴンチャ」は投資ファンドのTAアソシエイツ(マサチューセッツ州)の支援のもと、出店を強化しています。

この記事では以下の情報が得られます。

・タピオカの消費量の推移
・倒産したタピオカ店の運営会社
・ゴンチャ拡大の背景

2019年のタピオカの輸入量は前年比5.7倍に急増

日本ではタピオカブームが3度起こりました。1度目は1990年代にココナッツミルクに混ぜて食べるもので、エスニック料理のブームと共に日本で親しまれるようになりました。2度目は2000年代前半。甘いミルクティーに黒いタピオカが沈むスタイルで、太いストローで飲むのが主流となりました。

3度目が2019年にかけて大ブームを巻き起こしたものです。2015年9月に「ゴンチャ」の1号店が原宿、「ジ アレイ」の1号店が2017年8月表参道にオープンしました。特に「ジ アレイ」の人気は凄まじく、行列を作る女性客が絶えませんでした。

3次ブームの背景にはInstagramなどのSNSがあると言われており、「ジ アレイ」のシカをモチーフとしたロゴデザインは写真映えしやすく、ドリンクの見た目も相まって瞬く間に人気を獲得しました。

タピオカドリンクは、スターバックスが展開する主力商品フラペチーノと競合するようにも見えますが、店内で落ち着いて飲むフラペチーノとテイクアウトのドリンクを食べ歩き感覚で口にするタピオカでは利用シーンが異なります。

タピオカの競合はクレープでした。第3次タピオカブームはクレープ店が大打撃を受けます。

2020年5月に「クレージークレープス」を運営するクラフトフーズが破産しました。最盛期の2005年には売上高が26億円以上あったものの、2019年には6億円程度まで縮小していたと言われています。

タピオカブームは2019年に最盛期を迎えます。

■タピオカの輸入数量推移

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※大阪税関「タピオカの輸入 その後」より

大阪税関にょると、2019年のタピオカの輸入数量は全国で1万6772トン。前年の5.7倍に膨れ上がりました。翌年にはコロナ禍も重なって熱が収まり、1/3の5155トンまで縮小しました。更に2021年は前年の半分ほどとなる2641トンまで下がっています。

キーワードの検索トレンドの変化を調査するGoogleトレンドにおいても、「タピオカ」は2019年6月にピークを迎え、急速に縮小している様子が分かります。Googleトレンドの変化は、タピオカの輸入量とほぼ重なっていると言えるでしょう。

■Googleトレンド「タピオカ」の調査結果

人気タピオカ店「comma tea」の運営会社が倒産、ブーム終焉にゴンチャは?
※Googleトレンドで独自に調査

一大ムーブメントは終焉を迎えました。

タピオカ店からティーカフェへと転換したゴンチャ

消費拡大から縮小までの勢いが短期間で激しく、一部の事業者は経営環境が悪化しました。第3次ブームの終焉とともに破産したタピオカ店の運営会社に以下のようなものがあります。

■破産したタピオカ店運営会社

ブランド 運営会社 負債総額 破産日 HEERETEA東喜茶 ファーストZT 2000万円 2020年8月26日 Chatime プレディクト 6億円 2022年11月21日 comma tea ティーカンパニー 調査中 2023年9月29日

タピオカ店は過大な設備投資が必要ないことから、個人事業主などの小規模事業者が出店するケースも多く見られました。こうした店舗はもともと資金力がないため、コロナ禍のような事業環境の激変に耐える体力がありません。数多くのタピオカ店が閉店へと追い込まれます。

しかし、タピオカの輸入量を見ると分かる通り、需要が消失しているわけではありません。

存在感を発揮しているのが「ゴンチャ」です。日本法人であるゴンチャ ジャパンは2015年3月設立。韓国のゴンチャ コリアの100%子会社で、店舗の運営は飲食店の経営支援などを行うリヴァンプ(東京都港区)が担いました。

投資ファンドのユニゾン・キャピタル(東京都千代田区)が2014年9月にゴンチャ コリアの経営権を取得。ゴンチャ コリアは2017年1月にグローバル本社を買収しました。ユニゾン・キャピタルは、日本で一大ブームが巻き起こっていた2019年11月に米国のTAアソシエイツにゴンチャを売却しました。

TAアソシエイツ買収後、日本マクドナルドホールディングス<2702>の社長などを務めた原田泳幸氏が日本法人のCEOに就任しました。原田氏はゴンチャのコアバリューをタピオカから高クオリティな茶葉へとブランド転換。フランチャイズ加盟店のサポート体制を強化するなど、出店に向けた土壌を整備しました。

国内の店舗数は2021年7月に100店舗を突破。2023年5月末時点で122店舗を展開しています。ゴンチャはタピオカ店からティーカフェへと華麗にピボットし、店舗数を拡大しています。

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