【ゴーン前会長再逮捕】大手新聞6紙を読み比べ

保釈の観測が流れていた日産自動車のカルロス・ゴーン前会長が12月21日、東京地検特捜部に再逮捕された。容疑は会社法違反(特別背任)。

私的な金融取引で発生した損失を会社に付け替えていた疑いが持たれている。ゴーン前会長の逮捕は最初の11月19日から3回目だが、前回の12月10日の再逮捕までは金融商品取引法違反(役員報酬を巡る有価証券報告書の虚偽記載)容疑だった。

勾留が長期化することについて国際社会には批判的な見方も広がっているが、国内の大手新聞各紙は今回の再逮捕劇をどう伝えているのだろうか、読み比べてみた。

5紙が1面トップ

金融商品取引法違反の容疑で2度逮捕されたゴーン前会長らの拘留延長については東京地裁が却下したことから、近く保釈される見通しだった。それが一転、拘留がさらに続くことになったのだ。

【ゴーン前会長再逮捕】大手新聞6紙を読み比べ
前会長再逮捕を報じる22日の各紙朝刊

朝日、毎日、読売、日本経済、産経、東京の6紙の22日付朝刊(いずれも東京本社発行)をみると、産経以外の5紙が1面トップでゴーン前会長の再逮捕を報じた。産経のトップは海上自衛隊機が韓国艦からレーダー照射を受けた問題を取り上げ、ゴーン前会長の再逮捕については2番手(準トップ)で扱った。 さらに各紙とも総合面、経済面、社会面との連動紙面とし、大きなスペースを割いた。

朝日は総合2面の名物コーナー「時時刻刻」で、特捜部が特別背任に急転換した顛末に切り込んだ。「虚偽記載は形式犯」との批判が高まる中、「特別背任」カードを切るまでの経緯を詳しく伝えた。そのうえで、特別背任罪の立件には高いハードルがあると指摘している。

読売は総合3面・ニュースの深層を探る「スキャナー」で、保釈の可能性から急転直下の再逮捕となった舞台裏を追った。特捜部の当初の想定では、年明け前後に「私物化」を示す事件で3回目の逮捕に踏み切る青写真を描いていた、と伝えている。

日経は、ゴーン後の体制をめぐる仏ルノーと日産の主導権争いに影響を与えそうだとの見方を伝えているが、6紙の中では関連記事の扱いがもっとも控え目に映った。

毎日、産経、東京の3紙は社説でゴーン前会長の再逮捕を取り上げた。

毎日、産経、東京が社説で再逮捕を取り上げ

毎日の社説は「拘留延長請求が裁判所に却下された直後の再逮捕で、検察への風当たりはさらに強まるかもしれない」などと特捜部の捜査のあり方を注視する姿勢を示した。ただ、一般論に終始している感があり、歯切れが今一つ。

東京は、「『私物化』の言葉があてはまる。検察には徹底捜査を望む」としながらも、自白しないと拘留が長くなる傾向に海外から批判が出ていることを踏まえ、「真実の発見と人権擁護の両立が今、捜査に求められる」と結んでいる。

産経 「海外メディアの批判にひるむ必要はない」

毎日、東京に比べ、主張が明解なのが産経だ。主張欄(社説に相当)で、「法律違反の疑いがあれば、捜査に全力を尽くすのは当然である。海外メディアの批判などにひるむ必要はない」と特捜部を支持する。その一方で、「日産が真に再生を目指すなら、自ら調査結果の全容を公表する責務があるのではないか」と日産に問うている。

読売、日経の社説は、ゴーン前会長逮捕と同じ日に決定した2019年度政府予算案にフォーカスした。朝日の社説は政府予算案のほか、「米シリア撤退」を取り上げた。この政府予算案については毎日、産経も社説で取り上げたが、東京は扱いを見送り、将棋の竜王戦で敗れて無冠となった羽生善治棋士をテーマに選んだ。

世界的に注目されるゴーン前会長への捜査は年越しがほぼ確実になった。ルノー・日産連合の行方をも左右する事件だけに、早期の全容解明が望まれる。

文:M&A Online編集部

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