
ザ・ノース・フェイスやヘリーハンセンなどを取り扱うアウトドア、スポーツウエア大手のゴールドウイン<8111>は、ハイキングやトレッキング、登山を中心とする旅行のアクティビティ・ツアーを企画運営するアルパインツアーサービス(千葉県四街道市)を子会社化した。
今後、自然や文化を体験しながら旅行を楽しむ需要は拡大すると見ており、子会社化を機に、両社の連携を深めて双方の強みを活かした、より良質なツアーの展開を目指す。
今回の企業買収は、ゴルフウエア「Black&White」を手がけるブラックアンドホワイトスポーツウェアを子会社化した2011年以来およそ13年ぶりで、「戦略的な一歩」と位置付けている。
同社では2029年3月期に1885億円の売上高を目指しており、2025年3月期の売り上げ予想の1320億円からは565億円の増収が必要となる。
「戦略的な一歩」からは、どのようなシナジーが生まれるだろうか。
企業研修の受託事業なども展開
ゴールドウインは運営するブランド事業の一環として、ブランド名を冠するツアーの展開で、アルパインツアーサービスと長年連携してきた。
旅行業界はコロナ禍の影響が薄れるとともに、インバウンド(訪日観光客)が増加し、国内需要は回復傾向にある。
大手旅行代理店のJTBが2025年1月に公表した2025年の旅行動向見通しによると、日本人の総旅行人数は前年に比べ2.9%増加し、インバウンドも同8.9%増加する見通し。
そうした状況を踏まえ、ゴールドウインではアドベンチャーツーリズム市場(アクティビティ体験、自然体験、文化体験の三つの要素のうち、二つ以上の要素で構成される旅行)は拡大すると見ており、この流れを新たな商機と捉え、アルパインツアーサービスを子会社化し、国内外でのアクティビティ・ツアーを強化することにした。
今後、ゴールドウインのブランド事業と連携したアクティビティ・ツアーの拡充や、自然体験、環境教育をコンテンツとする企業研修の受託事業などを展開する。
さらに、直営店舗と連携し、製品販売とアクティビティ・ツアーのサービスの両面で顧客との接点を広げ顧客体験価値の向上に取り組むほか、インバウンド向けアドベンチャーツアーを中心に、インバウンド事業の確立を目指す。
ノース・フェイスに次ぐ柱に育つか
ゴールドウインは1951年に富山県小矢部市で、津沢メリヤス製造所を設立。翌1952年にはメリヤスから野球ストッキングを中心とするスポーツウエアに転換した。
1978年に米国のアウトドア用品メーカーであるザ・ノース・フェイスの製品の輸入販売を始め、1983年にはノルウェーのセーリングやトレッキングなどのウエアを製造するヘリーハンセンの製品の輸入販売を開始した。
現在は、登山用ウエア、マリンウエア、アウトドア用品、フィットネスウエア、スイムウエア、ラグビーウエア、ゴルフウエア、スキーウエア、スノーボードウエアなど幅広い商品を取り扱っており、ノース・フェイス、ヘリーハンセンのほかにもスキー用品のフィッシャーや、ラグビージャージ(ラグビー選手が着用するユニフォーム)などのカンタベリー、スイミング用品のスピードなどの海外有名ブランドを多く取り扱っている。

2024年3月期は旺盛なインバウンド需要とコロナ禍後の経済活動の再開に支えられて、売上高は2期連続で過去最高を更新し、1269億700万円(前年度比10.3%増)となった。
ノース・フェイスが事業の大きな柱となっており、2024年3月期の全売上高の76.8%に当たる975億円を同事業が占めた。2029年3月期には、売上高1885億円を目指しており、このうちノース・フェイスは1280億円(構成比67.9%)を見込む。
今後はこれにアルパインツアーサービスの事業が加わることになり、計画に変動が生じる可能性がある。ハイキングやトレッキング、登山などのアクティビティ・ツアーはノース・フェイスに次ぐ柱に育つだろうか。

文:M&A Online記者 松本亮一
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