「お~いお茶」の伊藤園、5年で300億円のM&A計画の中身は?

緑茶飲料「お~いお茶」を手がける伊藤園<2593>にM&Aが近づいているようだ。

同社は2015年にコーヒーの栽培、焙煎、販売などを手がける米国のDISTANT LANDS TRADING CO.を子会社化して以来、M&Aから遠ざかっているが、今後およそ5年間でM&Aなどに300億円を投じる計画を持つ。

他企業と連携し、お茶や健康分野の事業を拡大するのが目的で、重点投資先として「海外」「EC・D2C」「原料卸」「農業」「環境」の5分野を上げる。

伊藤園のM&A戦略とはどのようなものだろうか。

シナジーが期待できる企業とのM&Aを推進

伊藤園は1966年に静岡市でフロンティア製茶を設立し、日本茶の製造を開始。その後ウーロン茶や紅茶、野菜ジュース、コーヒーなどの飲料に事業領域を拡大していった。

M&Aについては、2006年にコーヒーチェーン「タリーズ」を運営するフードエックス・グローブと、サプリメントを手がける米国のMason Distributors,Inc.を子会社化。

その後は2010年代に、米国のDistant Lands Trading Company,Inc.のほかに、乳飲料やヨーグルトを製造するチチヤス、飲料販売や自動販売機保守管理のネオス、日本茶製造の土倉の合計4社を子会社化し業容を拡大した。

この10年ほどはM&Aの実績はないが、2024年6月に茶・健康を軸に自社のEC(電子商取引)事業と、原料卸事業を拡大するとともに「シナジーが期待できる企業との資本提携、M&Aを推進し事業領域を拡大する」との方針を打ち出した。

投資については、経営権を握るM&Aだけでなく、緩やかに結びつく資本提携も含まれているが、総額300億円のうち日本国内で100億円、海外で200億円を投じる計画だ。

直近の出資先としては抹茶の販売を手がけているTHE MATCHA TOKYO( 東京都渋谷区)と、農業や食に関する情報を収集し、農業生産、加工、流通のための情報プラットフォーム(基盤)を構築しているウォーターセル(新潟市)がある。

THE MATCHA TOKYOとは、両社で国内外の抹茶拡販で協業しており、ウォーターセルとは茶農業のデジタル化による持続可能な茶農業の実現に取り組んでいる。

M&Aに関しても、こうしたお茶に関わる事業が対象となることが予想される。さらに、過去のM&Aを見てもコーヒーやヨーグルト、日本茶などが対象となっており、今後の方針として「シナジーが期待できる企業」を投資先に上げていることから、飲料を中心とした分野が対象になりそう。

また計画している投資額は国内よりも海外の方が多く、海外企業とのM&Aの実現の可能性は高いと言える。

伊藤園では、お~いお茶の世界展開を重点戦略の一つに掲げており、海外での現地生産の加速や、茶産地育成事業の強化などに取り組む計画で、こうした分野もM&Aの候補になりそうだ。

「お~いお茶」の伊藤園、5年で300億円のM&A計画の中身は?
伊藤園の主なM&A

3期連続の増収営業増益に

伊藤園の業績は、主力の「お~いお茶」が堅調に推移していることもあり、2025年4月期は3期連続の増収営業増益を見込む。

ただ、同社の想定を超えて原材料費が高騰するなど、経営環境が大きく変化しており、さらなる成長と収益性向上のためには、新規事業の開拓や、海外の現地企業とのネットワークの構築などが必要と判断。

この計画の実現のためにM&Aなどの手法を活用するもので、これら取り組みで今後5年間は年平均2%の増収を目指し、営業利益率も現在の5.5%から8%以上に引き上げるという。

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文:M&A Online記者 松本亮一

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