
2025年は巳年。ヘビは古来、神の使いとして大切にされ、神話や民話に数多く登場する。
巳年の一端を体感できる、おススメの神社を3回シリーズで紹介してきた。最終回は山口県岩国市の神社だ。
伝説の「シロヘビ」は実在する!
東京都品川区の蛇窪神社、栃木県沼田市の老神温泉と並んで、「白蛇の日本三大聖地」の一つに数えられる山口県岩国市の「岩國白蛇神社」。
蛇窪神社や老神温泉と違いのは、唯一本物のシロヘビに会えることだ。老神温泉の「大蛇まつり」では、岩国のシロヘビが出張することもある。
シロヘビはアオダイショウが白化した個体だ。遺伝的な突然変異なので、全国どこでも産まれている。目にする機会がないのは、体色が白いと目立つため成長の過程で天敵に捕食されやすいからだ。
ところが岩国では、自然環境下でも多くのシロヘビが生存する。地域で昔からシロヘビを「神の使い」として大切に扱った、人為淘汰の結果だと見られている。
実は平成後半に創建された新しい神社
1738年、藩主・吉川邸の城門付近で門番が捕獲したと『岩邑(がんゆう)年代記』にあるのが、現時点で判明しているシロヘビについての最古の記録だ。
1862年には、錦川下流の今津川に架かる寿橋付近にあった岩国藩の米倉に2匹のシロヘビがすみつき、よく見かけるとの記述が『錦川志』にある。
シロヘビは米倉を荒らすネズミを捕食する益獣。人間によって手厚く保護されたのに加えて、米倉などの建築物内で生息していたため天敵に襲われることなく多数が生存できたと考えられそうだ。
その寿橋の近くに岩國白蛇神社がある。神社の創建は2012年12月16日と、今年でようやく干支が一回りしたばかりの新しい神社だ。
保護団体の「岩国白蛇保存会」が中心となり、広島県の宮島に鎮座する嚴島神社の御祭神を勧請して鎮座祭を斎行した。いわば地元の「シロヘビ愛」が生んだ神社だ。
住宅地のちょっとした高台にある。ほんの数分ばかり坂道を登れば、白蛇神社が目の前に見える。手水舎(ちょうずしゃ)にはシロヘビの像があり、その「蛇口」から出る水で手と口を清めよう。
本殿の前の石灯籠にもシロヘビが彫られており、至る所でシロヘビの意匠が見える。

本物のシロヘビを展示
参拝を済ませたら、本殿向かって右側の道を奥に進もう。そこで本物のシロヘビに会える屋外観覧所がある。
さらに奥には暖房設備を備えた有料の屋内観覧所もあるが、初詣は運試しを兼ねて屋外観覧所でシロヘビを探そう。晴天で風の弱い正午から午後2時ぐらいの参拝がチャンスだ。
祭神は宇賀弁財天(うがべんざいてん)と宇賀御魂神(うがみたまのかみ)。宇賀弁財天はインドの女神で頭上に宝冠と鳥居を載き、その中央に白蛇(宇賀神)を巻いている。宇賀御魂神は穀神で、人頭蛇身の女神だ。神社の御利益は金運、福徳、開運、厄除、学問、音楽と幅広い。
ヘビは金運の神様であり、シロヘビの脱皮した皮が入った金運守りや宝くじ入れなどお金に関する記念品が多い。金運をアップしたい人は、ぜひ手に入れたい。本殿向かって左側の社務所で入手できる。
天満宮も隣接、実はこちらの方が古い
ほぼ真横に「今津天満宮」もある。菅原道真公が大宰府に流される途中に休息のため立ち寄ったとされる地で、古くから天満宮があったとされる。
ちなみに道真公がシロヘビを目撃したとの記録はない。これは太宰府へ左遷された時期が冬眠期だったことも大きいが、当時の岩国に大規模な米倉はなく、天敵を追い払ってくれる人間の近くでシロヘビが生息できる環境がなかったため、成長や繁殖がほとんどできなかったと考えられる。つまり平安時代には、岩国でもシロヘビのコロニーが存在しなかった可能性が高い。
現在の天満宮は2011年に再建されており、現存する社殿も岩國白蛇神社より1年先輩だ。岩國白蛇神社で金運を祈った後に、今津天満宮で学問成就や合格を祈願すれば一挙両得。ぜひ、ご家族で参拝してほしい。
白蛇神社へは、タクシーだとJR岩国駅(山陽新幹線の新岩国駅は別の駅)から約5分、観光名所の錦帯橋から約10分。
バスだと岩国駅から、いわくにバスの「今津」あるいは「天神町」で下車、徒歩2分。錦帯橋から、いわくにバスの「長山公園」で下車。ファミリーマートが目印で、その裏に神社がある。
ちなみに岩国市には岩國白蛇神社だけではなく、岩国城へ登るロープウェー駅の前に、暖房完備で真冬でもシロヘビを鑑賞できる有料屋内観覧施設「シロヘビの館」もあり、こちらの方が有名。
来年の干支「巳」にちなんだ初詣3選をお送りした。いよいよ明日は元旦、是非お近くの「ヘビ」を由来とする神社に参拝し、人生最高の金運をつかんでほしい。幸運を祈る!
文・写真:糸永正行編集委員
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