2025年上期の上場企業による子会社・事業の売却 件数、金額とも過去10年で最多

M&A OnlineがM&Aデータベースで、2025年上期(1-6月)の上場企業による子会社・事業の売却案件(適時開示ベース)を集計したところ、取引金額が2兆335億円となり、コロナ禍の2021年上期の1兆8446億円を上回り、過去10年間で最高額となったことが分かった。

米投資ファンドのベインキャピタルが、総取引金額の65%に当たる1兆3247億円に達する取引金額上位2件の大型案件にかかわったことから金額が大きく膨らんだ。

件数は190件で、2021年上期の168件を上回り、こちらも過去10年で最多となった。件数が増加するのは2023年上期、2024年上期に続き3年連続となる。

流れに変化の兆し

上場企業による子会社・事業の売却はコロナ禍の2021年、2022年に、中核事業に集中する動きが広まり、件数、金額ともに拡大した。

その後も中核事業に集中する動きが続き件数は高水準を維持していたが、主な子会社や事業の売却が一段落したことなどから案件は小型化していた。

2025年上期は外資ファンドによる1000億円を超える案件の増加に加え、取引金額が100億円を超える案件が13件(2023年は6件、2024年は8件)に達するなど、案件が大型化しており、流れに変化の兆しが見られる。

中核事業に経営資源を集中

取引金額上位の案件を見ると、売却理由の多くが中核事業への経営資源の集中で、次いで多いのが他企業の傘下に入ることで当該子会社や事業の発展を目指すというものだ。

中核事業への経営資源の集中の代表格はセブン&アイ・ホールディングス<3382>。同社はスーパー事業などを譲渡するほか、子会社のセブン銀行を持分法適用会社にする。いずれもコンビニエンスストア事業に経営資源を集中させるのが狙いだ。

スーパー事業では業績不振が続くイトーヨーカ堂などを傘下に置く中間持ち株会社のヨーク・ホールディングス(東京都千代田区)を米投資ファンドのベインキャピタルに売却し、銀行事業では子会社のセブン‐イレブン・ジャパンなどが保有するセブン銀行株を一部譲渡して子会社から外す。

譲渡価格はスーパー事業が2025年上期最高額の8147億円、セブン銀行が同8位となる524億円となる見込み。

セブン&アイ・ホールディングスはカナダの小売大手アリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けており、コンビニ事業に専念し単独での成長路線を目指す方針だ。

三菱ケミカルグループ<4188>も経営資源を本業の化学事業に集中させることを理由に、子会社の田辺三菱製薬を米投資ファンドのベインキャピタルに譲渡(譲渡価格は約5100億円)する。

譲渡先との関係緊密化の狙いも

他社の傘下で成長を目指すケースでは、ENEOSホールディングス<5020>が、同社子会社が手がける海運事業のうち、原油タンカーを除くLPG(液化石油ガス)船、ケミカルタンカー、貨物船などによる海運事業を、日本郵船に譲渡(譲渡価格は760億円)した案件があった。

船価の高騰や環境規制への対応などの課題に対応するためには、グローバルな成長戦略を描くことができる日本郵船グループに海運事業を譲渡することが最適と判断したという。

このほかにSBIホールディングス<8473>は、譲渡先との関係の緊密化を狙いに、韓国子会社のSBI貯蓄銀行を同国の教保生命保険に譲渡(譲渡価額は約900億円)した。

2025年上期に譲渡した子会社や事業の業種は「IT・ソフトウエア」(30件)が最も多く、「その他サービス」(29件)、「電気機器」(12件)の順となった。

「IT・ソフトウエ」と「その他サービス」は前年同期と順位は入れ替わったが1位、2位を占め、前年同期3位で16件だった「その他金融」は6件に留まった。

2025年上期の上場企業による子会社・事業の売却 件数、金額とも過去10年で最多

文:M&A Online記者 松本亮一

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